G.LOVE&Special Sauce at 赤坂ブリッツ(2001年6月7日)
 

G.LOVE&Special Sauce

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 「ゴージャスなステージ。」

 G.LOVE&Special Sauceのライヴ中、ずっと頭の中で浮かんでいた言葉だ。別にセットや衣装や照明にお金がかかっているわけではない。どれも簡素なものであるし、楽器の編成はギター、ウッドベース、ドラムスだけの最小限のものである。だけども漂ってくる高級感はなんだろう。

 始まる直前の赤坂ブリッツのF1フロアは結構余裕があって、何だか不安になる。客層は落ち着いた感じの人が多く、女の人の比率も高いし、外国人も結構いる。19時を少し過ぎるとあっけなく場内は暗くなり、メンバーが登場する。

 G.LOVEは頭にバンダナを巻き、首にハーモニカホルダーを下げ、ラフな格好である。ステージ中央に置かれた木製の折り畳み椅子に座り、ギターを弾きながら歌う。特にライブの前半ではエフェクターの使用を抑えたナチュラルなトーンのギターを弾いていた。

 ウッドベースのジミー・プレスコット (Jimi "Jazz"Prescott)は顔がオーソン・ウエルズに似ている、というか「誰かに似ている顔」である。髪型はそうとうヤバイものがあるけど、実に良い音の骨太なベースを弾いてバンドを支える。時には弓を使った演奏もする。

 ドラムのジェフリー・クレメンス ("The Houseman")は押したり引いたりの臨機応変なプレイが出来る。ヴォーカルを取ってG.LOVEと掛け合いをする場面もあった。

 演奏が始まると、ブルースをベースに様々な要素を感じさせる世界が展開し、横揺れのマッタリとしたグルーヴを感じさせる。やはり会社帰り組が多いのか、時間が進むとフロアもいい感じで埋まり、抱き合って踊るカップルや子供を抱えて観ている父親がいたりする、なんともリラックスしたいい雰囲気になる。お客さんのノリは、同じ時期に出てきて近い音楽性だと思われたジョン・スペンサー・ブルースエクスプローションと比べると違う。ジョンスペのライブはモッシュが発生し、ダイバー続出の激しいものだけど、こちらの方は落ち着いて、おしゃれな感じの人が来ている印象がある。もちろん、両方のファンはいるわけで、会場で知人に会い「G.LOVEとジョンスペのどっちが好きですか?」と訊いたら「そんなもん、比べらんネーヨ!どっちを選ぶとか好きじゃないし。オレにとってはクラッシュとピストルズどっちを選ぶのかっつーのと同じ」と言ってたけど。

 G.LOVEは時々立ち上がってお客さんを煽って、フロアを沸かせたり、ヴォコーダー(声をロボットが喋るように変える機械。クラフトワークやザップのロジャーがヴォコーダー使いとして有名。今ではJ-POPでもよく使われている)を使ったりとサービス精神を発揮していた。ライムの中でデ・ラ・ソウルやビースティ・ボーイズを取り上げるように、G.LOVEのルーツのひとつであるヒップホップもよく消化され、ラップも上手い。それ以上に驚いたことは、G.LOVEに歌心があることで、歌声が実にいい!声を張り上げたときはU2のボノに似ている。

 アンコールというよりも、第二部という感じで、まずはG.LOVEが一人でアコースティックギターを持って登場する。一曲弾き語りをした後、ベースとドラムの二人が加わって演奏されたカントリーというかフォーク調の曲は、なんだかデヴィッド・リンチ監督の『ストレート・ストーリー』に出てきそうなアメリカの農村風景が良く似合う。このユッタリとした曲が、かなり気持ちいい。

 このライヴがゴージャスな感じがするのは、アメリカのいろんな音楽が彼らに注ぎ込んでいるのを聴き取ることが出来るからで、ゴージャスというのは、お金を持っているのでもなく、飾りをいっぱいつけることでもない、演奏する人がいかに豊かな背景を持っているかでないだろうか。ブルース、ヒップホップ、フォーク、カントリー、ジャズと様々なジャンルを料理してG.LOVE流に仕立てる、シンプルだけど感じのいいレストランといった趣のライヴであった。

Reported by ノブユキ.


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