THE 3PEACE @ 下北沢SHELTER (25th may. '01)
音で語る..."I talk on the music"
--- setlist ---
01. Great Spirits
02. 3879
03. ZOMBIE DANCE
04. LOVE SONGS
05. GO! GO! FREEDOM
06. 七番目の雨
07. 星の群れ
08. 昨日から今日、そして明日へ
09. 終わらない旅の始まり
10. I Fought The Law
11. 新しい世界
12. 輝く未来
--- encore ---
01. テキーラ
02. 天国まであと三歩
03. フリーダムファイター
04. 真夜中の予感
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先日、Ben Harperのライブを見に行った際に、BenがMCで「もっと話したいんだけど、自分は日本語が話せないし、通じない英語で話するのも失礼だし…、だから代わりに"I talk on the music"」(もしかすると言葉尻が違うかもしれない。"I speak with music"とかだったかもしれないが…)
"I talk on the music"
これを読んでいる人の中で翻訳家の人がいたら聞いてみたい。 何て訳します?
"I talk on the music"
「音楽という手法で言いたいことを表現します」? ん? もっと短く? 「音楽で話す」? 分かるような分からないような? この"アイトーコンザミューズィッ"っといった具合に少しの単語だけで、それも2秒で表すには日本語では難しいのかなあ? 上手く日本語に出来ないんだが、Benの口からその言葉を聞いたとき、思わずボソッと「ァー…」っと声が出てしまった瞬間であった。微感動したなぁ。
言葉も分からない音楽を素直に聴き入れることに慣れている日本人の僕らにとって(特に普段洋楽メインで聴いている人たちにとって)日本語の曲をたまに聴くとそれはそれで感動するものがある。でもそれも限られた曲でだけど…。普段街で流れる歌謡曲ってのからは本当同じ日本語を使っているとは思えないものがよくある。全然耳に入ってこない、意識的に聴いたとしても何を言いたいのかさっぱり分からない。それならいっそ、言葉が分からない言葉で歌われているがサウンドが格好良いとか、きれいな声色だから気持ち良い、といった具合に聴ける洋楽のほうが良い楽曲がたくさんあるような気がする。
それなら反対に外国人が日本語の歌詞で歌われている日本の曲を聴いたらどう感じるんだろうか? これって結構昔からの個人的疑問だった。
エンターテイメント大国の日本では毎日どこかでいろんなコンサートが行われているだろう。小さなライブハウスでギター片手に歌っている所や、はるかかなたの国からその国の民族音楽を聴かせている所、何十人ものメンバーで演奏して客は片手で数えれるようなコンサートもあれば、何万人の観衆を座席に縛り付けてカラオケ大会をするお姉さんや…5月22日も日本中でどんな音楽が演奏されていただろうか?
下北沢にあるライブハウス、Shelterでは、先日までイタリア&バスク・ツアーを決行してきた日本のバンドスリーピースの帰国後初の東京でのライブがあった。
実は僕にとってスリーピースを観るのは今回が始めて。 知合いからの噂でかなり前から気にはなっていたのだが、99年のFuji Rockも観逃していたので、僕の中での情報源はアルバム『Revolucion De La Mente』のみ。 このアルバムを聴いた時から「生でライブを観たいなぁ」とかなり楽しみにしていたものだ。
それはまず、この音(と歌/声)を3人というバンドとして最小の人数でどう出しているのかということ。演奏技術に関しては僕はあまり詳しくないのでよく分からない(そもそも、そんな善し悪しに何かと言うつもりはないし)んだけれどCDを聴くだけでも関心してしまうほどのこの音のバリエションとでも言えばいいんだろか(?) ある意味いろんな音を出せるというのはそんなに驚く事ではないのかもしれないが、これが果してライブ時になると3人の人間がどうコミュニケーションを取りあっているんだろうと考えても予想がつかない。あと聴く者に強く訴えかけるような歌詞がライブの時にどう歌われるのか。じっと観客の目を見つめたまま歌われるのだろうか? それとも客の顔すら見ずに自分に語りかけるよに歌いあげられるのだろうか。
ライブを観る前からこんなにいろいろな想像をするのも久しぶりのことだ。 それだけこの日のライブは僕にとって待ちに待ったものだったのだ。
ところでこの日は最初 「Shelterでライブ」と聞いた時も一瞬 えっ?と疑問に思った。 もっと大きいな場所でやるのかと思った。 噂だけが先行して僕の中でスリーピースはかなり大きな存在になっている。 イタリア・バスクツアー中もホームページにアップされる現地レポートを見ているだけでもそういう印象が付いていたから。 なんといっても1万人の観客を前にライブしたりしたとかいう話も聞いていたし。
さて、この日のライブはスリーピースのワンマンだ。 演奏するメンバーも聞き手のファンの方も当然イタリアツアーでの経験を観せる、観るという感じで期待が掛かっているはずだ。自分達がどれだけ大きくなって帰ってきたかを見せ付けてやるといったメンバー。何がどう変わって、どれだけ大きくなってきたのか見届けたいというファン。
さて、そんな大きな期待を持って目の前にスリーピースが現れた。観る前の疑問は1曲で全て取り払われた。ボーカルの原さんは観客に投げつけるかのように言葉を発射する。3人のメンバーはそれぞれ違う熱気をかもし出すのだが、一瞬のタイミングを見付けて目でコミュニケーションしているようで、音が一つとなる。CDどうりどころかCDの音以上のパワーでひとつの太い音が作り上げられみるみる上空に舞いあがるような…。スリーピースはファンの期待に応える以上に大きく超えて日本に帰ってきたのだ。
初のライブ経験の僕が言うのもおかしいものだが、それはCDと比べてみても分かることだし、周りの観客を見ていてもそういう空気が伝わってくる。ひとつひとつの言葉を強烈に発する原さんの声にロック、ファンク、ノイズなんでもござれのギター。まるでKeith Moonの生まれ変わりか? と思わせるほど激しくたたきつけられる梶さんのドラム。そのドラムに圧し掛かるようで、そうかと思うとまるでリードベースかのようにきれいなメロディーを出すカオリさんのベース。いやっ、参りました! イタリア、スペイン、アメリカでのツアーでも客を引き付けた理由がすべて今日のこの3人を観て理解できた。
ロックだけでは収まらず、次はラップに、次はファンクと繰り広げられるスリーピースワールド。これこそ各メンバーがいろんな場所をツアーしたことによって体に流れこました雑多性なのか。時に自分もまるで今まで一緒に旅をしてきたと思ってしまうほど。それは旅だけではなく、メンバーそれぞれがいろんなバンドで経験してきた体験がこうして一つの物になる。 何人かの芸術家がコボレートして作り上げられた芸術品というか、いろんな薬草が調合されて出来上がった特効薬ともいえるか。うまく表現できない自分の貧弱な文章力がもどかしくる。
ライブのほうは途中3曲ほど、リアルタイムというバンドのイケちゃんという人がゲストギターとして参加したのだが、これはスリーピースメンバーもすごく楽しそうに演奏しているという気持ちが、観ている僕らからでも分かるほど。
そして、次は僕がCDでもかなり気に入った曲でもあった「終わらない旅の始まり」。この曲の何が素晴らしいかというのは楽曲はもちろんのこと、そこに歌われる言葉であった。
「僕らのこの愛は一体永遠に続くものか? それとも夢のようにまたいつか覚めてしまうのか? きつく抱きしめる程にこの想いは強くなる。 そしてこれまでもこれからも1人でいることに気付く…」
この曲をはじめて聴いたときから、これは「直球のラブソング」だと思った。嫌でも毎日のように歌謡曲などのラブ“誰が誰を好きになって惚れて腫れてさぁ大変”ソングに囲まれているなかで本当のラブソングに出会えた安心を感じた。原さんの語り掛けるように歌い上げる声、そしてそんな言葉をひとつひとつ聞き入って、この「最高のラブソング」の美しさに惚れてしまった。誰に訴えるわけでもなくこのやさしさに包まれた言葉群をこのメロディーにのせて歌い上げる原さんの姿は本当の詩人なんだと思った。
この後はスリーピースのご愛嬌(?) 短いMCをはさんで「では、次は新曲を」と言って始まったのが… ん…? イントロなんてCLASHそっくり!? えっ!? CLASHやん! "I fought the low"やん! いいね!いいね!スリーピースが演奏するこのカバーは! ところで昔アメリカのパンクバンドDead KennedysのボーカルのJello Biafraって人がこのカバーで "I faught the law and I WON!"(オリジナルは最後"LAW WON"となっているのだが)と歌っていたものだ。スリーピースがこの曲をJello Biafraバージョンで歌うのはいつのことだろうか、なんて想像してしまったのは僕だけだったろうか?
そしてライブはアンコールの"テキーラ"カバーや"天国まであと3歩"(このタイトルからして詩人だよなぁ)を含んだ4曲を演奏して今日のライブは終わった。
ライブが終わりいろんな人からイタリア/スペインツアーの話を聞く機会があったのだが、皆言う事が「言葉が通じない国で日本語を歌い上げて、あれだけ客が熱狂する。その光景は感動以上のものがあった。」とか。今日のスリーピースを見て、その理由がなんとなく納得できた気がする。確かに素晴らしい言葉が使われていて、それが通じないのは残念なことかもしれない。(ちなみに、彼らのCDの歌詞カードには英語の対訳とスペイン語の対訳がついている)しかし、激しい内容の曲を演奏するときは「何か革命を起こしてやれ!」とまで感じさせるほど激しい音をぶちまけるし、やさしい内容の曲は原さんの語り掛けるようにやさしさを包むような歌い方からでも感じ取れることだろう。それはそれぞれ演奏するメンバーの表情を見れば分かることだ。
難しい事はやめにしよう。Let's talk on the music!! 何語だってえじゃないか。ねぇ? 洋楽だろうが邦楽だろうが… 音で語ろうよ。 僕達オーディエンスは声援で語り返すからさぁ。ねっ。
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report by nishioka and photos by hanasan
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