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夕方、自宅で一人で近くの牛丼屋で買ってきた牛丼・並を食っているとH氏からの電話が鳴った「今日空いてる?What's Loveのライヴがあるけど来ません?」ということで、急遽新宿へ。歌舞伎町を歩くと、例によってフー俗店のポン引きの兄ちゃんが大勢いて、兄ちゃんたちののアタックをかわしつつ(1000円しかもってねーし)、ロフトにようやくたどり着く。 自分がフロアに入ったときクレイジー・ケン・バンドが始まるところで、いいタイミングで間に合ってよかった。このクレイジー・ケン・バンドは加山雄三が青大将と湘南でしのぎを削り、植木等が無責任社員で、フランキー堺が車掌で、森繁久弥がインチキっぽい社長で、赤木圭一郎がレーサーを演じ、小林旭がギターを持って、石原裕次郎が夜霧にむせび泣く世界、てな感じである。高度成長期である昭和30年代の映画に見られる無国籍でスチャラカないかがわしい感じを再現している。ちょうど横浜にあるラーメン博物館に再現された街並みのようだ。 このバンドのヴォーカル横山剣はピチカート・ファイヴのラストアルバムにも参加している(しかも「スキヤキ・ソング」というタイトルで)。思えば、このアルバムも雪村いづみとかデュークエイセスとかの参加で昭和30年代の色が濃かったな。とは言え、昭和30年代って、もはや若者とも言えない自分ですらまだ生まれてない時代なんでテレビや映画でしか知らないけど。 あと気づくのは、横浜という街の匂いを強烈に感じさせるバンドだということ。よくイギリスのバンドでニューオーダーのマンチェスターとかティーンエイジ・ファンクラブのグラスゴーとかキンクスのロンドンとか街の匂いのするバンドって一杯いるけど、善し悪しは別として日本には少ないと思う。ライヴに行っただけでその街を体感することができるのは凄く楽しいことである。 音楽的には「肉体関係」でアシッドジャズ。「ベレット1600GT」ではファンク。オリジナルラヴっぽい曲もあったりと、幅広く消化してのクレイジー・ケン・バンドの色にしているのは見事。「筒美京平先生のコーナー」と題して平山みきの「真夏の出来事」をカヴァーすると原曲と違ってめちゃくちゃ男臭い世界になるのが面白い。突然、氷川きよしの「箱根八里の半次郎」を歌ったりする。それとギタリストのロックンロールにドライヴィングするギターを弾いたりしてかっこいい。なんか外見は長髪に山高帽でリッチー・ブラックモアを意識してますね。
終わるとDJが横浜銀蝿やストレイ・キャッツ、ルースターズ、ポーグスなどを回す。このロケンローな選曲も面白い。
そしてWhat's Love?が登場。今日はこのバンドが主催するイベント「スカ帝国」の番外編と題されたもので、歌謡曲の色が濃いものであった。初体験のWhat's Love?で、最初マッタリしたイメージを勝手に持っていたけれども、初っ端からリズムがビシビシと躍動するのにはいい意味で予想が裏切られた。そして5本のホーンが繰り出す音は迫力。特に自分は女の子のホーン奏者が好きなので嬉しい。それは決してヤラシイ意味で言っているのだけど。スカには不可欠の低音もよく感じ取れるし、キーボードの音色も良い。 そして、今日も出た!「みちのくひとり旅」。小学生の頃、原曲を聴いていた身としては懐かしい。「ザ・ベストテン」だか「トップテン」で原曲を歌っていた山本譲二が昔、高校球児だったからというので甲子園のマウンドでこの歌を歌っていたのを思い出したりした。が、この歌が彼らのリズムに驚くほど違和感なく調和しているのを聴くとWhat's Love?のヴァージョンはかつて聴いたことのない、完全にオリジナルなものなのだ。 中盤の数曲にゲストの小島麻由美が参加する。まずは由紀さおりの「夜明けのスキャット」(イエローモンキーもカヴァーしてましたね)。歌いだした瞬間、音程が不安定なところもあったけど、昔のアイドルのようなキュートな歌声で、この歓楽街の薄暗い地下でみんなに守り立てられている姫のように異彩を放っている感じだ。和田アキ子の「あの鐘を鳴らすのはあなた」もカヴァーしていた。 アンコールで自分の前にスペースが出来たので前の方に出てみると、さっきと音の感じが違う。もっと音がシャープに聞こえてくるのだ。だったら初めから前で観てたらなあと、ちょっと後悔した。これでヴォーカルの押しがもう少し強ければ最高なんだけどなあと思う。 ---SET LIST(What's Love?)---
1.泣ける程
---Encore---
13.アメリカ
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