怒髪天 & イースタン・ユース at 渋谷クアトロ(2001年2月17日)
極東最前線33〜新世紀上等!〜
怒髪天

怒髪天

怒髪天

怒髪天

怒髪天

 

 

Eastern Youth

Eastern Youth

Eastern Youth

Eastern Youth

Eastern Youth

Eastern Youth

Eastern Youth

 

極東最前線33〜新世紀上等!〜

 

 会場に入ると珍しく小さい音でクラシックが流れていた。ライヴは10分押しで始まる。まずは寄席の出囃子をテクノ風に味付けしたのをオープニングSEとして怒髪天が登場する。ボーカルの増子は江戸家子猫と新沼謙治とミッシェルガン・エレファントのチバを足して3で割った感じのルックス。アクションが面白く、何回かステージダイヴをする。そんな彼らの出している音は、始まる前に友人が「ウルフルズみたいだよ」と教えてくれたけど、まさにウルフルズをちょっとハードにした感じ。自らR&E(リズム&演歌)と称していたが、なるほど古風なメロディと曲の展開が特徴である。バックの演奏がファンクに影響されたリズムを刻んでいるので、余計にウルフルズに近い感触がある。

 

 ヴォーカルの増子のテンションは高く、客席に乱入してクアトロの両サイドのテーブルの上を歩き、かなり奥深いことろで歌っていたりする。そのとき筆者も頭を掴まれた。楽しげにやっている姿は好感持てるのだけど、やっぱり曲調が古臭く感じるのと(例えば、クレイジー・ケン・バンドのような批評意識があれば、むしろ新鮮なんだけど、怒髪天は対象を冷静に観察することなく、マジなんである)、ヴィジュアル・イメージとバンド名でもっとハードコアな音を出すのかと思っていたので(例:山嵐&宇頭巻)、実際出している音とのギャップに戸惑った。これじゃ、「ポルノグラフティ」とか「ペニシリン」とか名乗りながらエロティックでもなく、フニャフニャな音を出す連中とあんまり変わらないんじゃないかな、とか書くとファンが怒髪天を突くかもしれないが。いや、面白いバンドだと思う。もっと速くて激しい演奏に古風な歌メロが乗ったらどうだろうかと思った。

 

---セットリスト---

 

1.美学
2.情熱のストレート
3.五月の雨
4.サムライ・ブルー
5.愛の嵐
6.夕暮れ男道
7.俺流

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   さて、この日のイースタンユースは明らかにおかしかった。一曲目の「男子畢竟危機一髪」で鉄壁のアンサンブルを誇るバンドに綻びを生じさせたし、吉野は風邪で不調なところをカバーしようとして、いつもよりも激しく吼えるのが痛々しい。ついにはMCで吉野自ら不調を認める始末。この日のMCはいつものように長くなく、痛々しさを感じさせるものが多かった「吉野さーん」という声援には「掛け声は大スターにするもんだ。掛け声あっても何も答えず」と応じて、「深読みするな、ただ馬鹿をやっているだけ」と煙幕を張り、「自分も雪と共に溶けて消えればいい」「ハナが一杯出るんで脳が溶けたかと思った。その方が何も考えなくていい」「21世紀にはおれの居場所がない」というようなMCを連発。普段から「オレ達の兄貴」に祭り上げられることに違和感を述べ、シーンを引っ張る責任なんかないと言い張っていた人である。自分を取り巻く物事に対しての孤独感、違和感を表現の出発点にしているので、そんな「兄貴的」に祭り上げられるのがぬるくて仕方がないのだろう。つくづく難儀な人である。

 いつもならば、そうした違和感もユーモアにくるんだMCで上手に笑いに昇華していたのだけれども、この日は笑う所がいくつもあったものの、悲痛な印象の方が勝っていた。つまり、今回の不調が単なる吉野の風邪でそれ以上の意味はないにしても、そのおかげでいつもはユーモアでくるまれた吉野の孤独が悲痛な形で露呈してしまったのだ。そしてそれを乗り越えようとして、一層激しくなり、曲が終わると息が切れてしばらく喋れないくらい叫びまくった歌、必要以上にかきむしられ凄まじい轟音が鳴っていたギターは心に突き刺さるものだったのである。今、『旅路二季節ガ燃エ落チル』と『雲射抜ケ声』を聴き返しているのだけど、このCDで聴ける歌声が大人しく思えるほどだ。だからバンドには失礼かも知れないが、このライヴは非常に素晴らしかったのである。

 神様がどうしたとか21世紀がどうとか大きな概念の言葉を出しながら深読みするなという吉野、掛け声なんかするなといいながらアンコールの時にはメンバーの名前の大合唱が起こりそれに応えて登場してしまう吉野、脳が溶けて何も考えなくなった方がいいといいながら孤独感と違和感の中で思索してしまう吉野、シーンがどうとか言われてもおれにはわからねぇといいながらさまざまなバンドと交流してイベントを主催してしまい結果的にシーンを作ってしまう吉野。そんな矛盾して混乱した吉野が「やるしかねぇ」と進んでいく姿に心が動かされるのである。そして、そんな吉野を支えるベースの二宮とドラムの田森。

 アンコールは「吐きそうです。楽屋に戻ったら吉村秀樹(ブラッド・サースティー・ブッチャーズに飲まされました」というようなMCのあとに「夏の日の午後」。満員のお客さんはいつものように盛り上がり、サビは大合唱である。それは不調なんかお構いなく観客が勝手に盛り上がって、ステージと客席では別々のことが行なわれている陰惨な光景のようにも見えるし、不調の吉野を観客が助けている心温まる光景のようにも見えた。もしかしたら、しばらく言葉の通じない外国でライヴをやった方が、お約束的な盛り上がりもなく余計なことを考えずに演奏できるためリハビリになるのかなあと思った。行ってきたばかりだが。

 

---セットリスト---

 

1.男子畢竟危機一髪
2.裸足で行かざるをえない
3.鉛の塊
4.青すぎる空
5.浮き雲
6.たとえばぼくが死んだら
7.今日
8.雨曝しなら濡れるがいいさ
9.夜の追憶
10.いづこへ

---アンコール

 

夏の日の午後

感謝します:真人、マーブルリヴァー


Reported by Nobuyuki.

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