Fanfare Ciocarlia @ Barbican Centre (14th May'00)

超弩級の重低音波状攻撃に昇天!
 

 

 

Fanfare Ciocarlia  

 

 

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Fanfare Ciocarlia

 
 思うに、結局のところ、僕らが知っている音楽なんて、ごくわずかの限られたものでしかない... どれほどアルバムを持っていても、どんなにたくさんの音楽雑誌を読み、ラジオを聞いて、テレビを見ても、そこで取り上げられている音楽なんてずいぶんとちっぽけな世界のものにしかすぎない... ということだろう。

 ところが、 この世の中にはとんでもなく素晴らしく、興奮させてくれる音楽が、そんなメディアに紹介されることもなく、どこかで待ち受けている。と、そんな思いを感じさせたのが、この5月14日、ロンドンはバービカン・センターで開かれた「ジプシー・ミュージック・フェスティヴァル」で体験することになったモルドヴァのバンド、Fanfare Ciocarliaだった。おそらく、ファンファーレ・チオカーリアとでも発音するのだろう。最後から2番目のaの上に^が逆になったのが付いているんだが、どうやってこれをタイプすればいいのか、全然わからない。この表記についても、ただの想像の産物。それは追って調べては見るけど、そんな表記なんて、どうでもいいっちゃ、どうでもいい。

 ともかく、英国のBritish Councilという、国のお役所が主催して、(これだけでも信じられない!)バービカン・センターという、日本でいうならば、国際フォーラムのような場所で、完全に無料で開かれたのがこのフェスティヴァル。4月30日、5月1、6、13、14日と5日間に渡って開催され、ホール入り口のロビーや室内で数々のバンドが出演していたのだが、無料で配られていたプログラムを見ても知っているバンドはひとつもいない。実をいえば、この14日も、古くからの友人が「これ、絶対にいいから、見逃したら損するよ」なんて言われて出かけていったにすぎない。ところが、これがとんでもない代物だったというわけだ。

 なにせステージに並んでいるのはほぼ管楽器ばかり。簡単にいえば、ブラス・バンドなのだ。正確には数えてはいないけど、チューバが3本ぐらいで、トランペットやトロンボーンといったタイプが4人ほどいて、サックスにクラリネットが2本ぐらいだっけ。それにドラムが二人。といっても、いわゆる「ドラムス」ではなく、太鼓がふたつ。曲によって誰かがヴォーカルを取るって感じなんだけど、普通ブラス・バンドって、けっこう退屈なわけです。演奏する曲のタイプが決まっていて、なんにも期待できないってのか... もちろん、それも僕らが一般的にはこういったタイプの音楽をそれほど知らないってところから来るんだろうけど。まぁ、それでも、ニュー・オリンズが世界に誇るダーティ・ダズン・ブラス・バンドぐらいは聞いたこともあるし、ライヴも体験している。が、このバンドから聞こえてきてのは彼らを遙かに越えた「とんでもない」音楽だったわけだ。

 例えば、3本のチューバから、文字通り、「音圧」を感じるほどに飛び出してくるベースの音。これなんてまるで両面をびんたで殴られるような迫力で、しかも、リズムがけっして「かったるい」ブラス・バンドのそれになっていないのだ。それが怒濤のように押し寄せてくる。その感覚は... 笑われるかもしれないけど、初めてトーキング・ヘッズの「リメイン・イン・ライト」をオン・タイムで聞いたときの衝撃にも似ている。もちろん、一般的にいえば、全然ロックじゃないのだが、その衝撃度は陳腐なロックを遙かに超えてロック的な響きを持っているのだ。

 管楽器とふたつの太鼓が加わった波状攻撃のようなリズムにのって、それぞれのミュージシャンがソロを繰り広げる。「僕、ジャズを勉強しているんです」というようなプロセスを経てジャズ屋になった人たちとはひと味もふた味も違った有機的でとんでもないフレーズが飛び出し、聞くものは自然に身体が動き出す。特に驚異的なのはクラリネットか? 友人にいわせると、コロンビアのクンビア(というタイプの音楽)にも似たフリーキーでホットなソロのようでソロではない音が縦横無尽にホールを覆い尽くすのだ。

 しかも、彼らが演奏する曲の素晴らしいこと。どこか哀愁を帯びながらもたくましく、遙か昔からの人の流れを有機的に融合したかのようなメロディが聞くものの心を鷲掴みにしてしまうのだ。かなりこぶしの利いたヴォーカルは、時にフラメンコや、日本でも大ヒットを記録したジプシー・キングスに通じるものを感じさせるし、怒濤のようなホーンのタッチはクラシックで、なおかつダイナミックなオリジナル・スカにも通じる。ジプシーのルーツがどこにあるのか定かではないが、彼らの音楽にはアジアからヨーロッパに流れ、そして、そこからさらにカリブ海やアメリカにつながる「脈々と生きた人間の」血を感じさせずにいられないのだ。

 当然ながら、集まっていたオーディエンスは1曲目から踊り始め、ステージの最後に彼らが外にでて演奏し出すと、まるで広場がインスタントな盆踊り大会になったかのような大騒ぎ。しかも、観客の年齢層は子供からお年寄りまで千差万別。おそらく、ライヴで踊るなんてことをそれほど体験したことがない、ごくごく通風の人たちが大部分だろう。そんな人たちをストームに巻き込んだのがこの日のライヴだった。

 このバンドがどんな流れで生まれ、彼らの音楽がどんな経緯で完成されていったのか... 彼らへの興味は尽きないが、月並みなロックに食傷気味の人に、何はともあれおすすめしたいのがすでに2枚発表されている彼らのアルバム。しかも、聞けば、彼らの来日が決定しているとか。今年の8月に東京で3回、京都で1回のライヴをすることになっているのだが、これを見逃せば後悔すること間違いなし。騙されたと思って、出かけていってくださいな。

 詳細はプランクトンで確認してくださいませ。
report and photos by hanasan
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