中川敬 (Soul Flower Union)
極東戦線異状あり
- イントロ -
--今年3月のソウル・フラワー・ユニオンのライヴを大阪で見たときに、一番印象に残った歌が《この戦争をやめさろ、この戦争を》と歌われた『極東戦線異状なし!?』。時期としては、アメリカ軍の侵攻から1年が経ったイラクがすぐに思い浮かぶし、シングル『極東戦線異状なし!?』のジャケットには、パレスチナのラマ検問所でイスラエル兵に対して抗議のピースサインを掲げる女性の写真が使われている。
けれども、この歌を聞いたときの最初の印象は、イラクを歌った歌とも、パレスチナに対して歌われた歌という訳ではなく、今の歌、今歌われるべき歌、だった。
タイトルは、第一次大戦の戦場を舞台にしたE.M.レマルクの小説で、映画化もされ、第3回アカデミー賞作品賞に輝いた名作『西部戦線異状なし』(1930年)をもじったものだ。主人公ポールが戦死した日、部隊からドイツ軍司令部への報告は「西部戦線異状なし」の一行だった。イラクからもパレスチナからも、そしてチェチェンからも遠く離れ、戦争や戦闘を日常として感じることのない僕らの生活を《極東戦線異状なしって感じやね》と捉えたのは、政治が人を殺しているという事実がなんの重みも持たない社会への的確なアイロニーだろう。
持つ者と持たざる者。世界はますます分断し、そのどうしようもない亀裂を埋めるのは、娯楽性を増したニュースと繊細な感受性だけなのだろうか。
9月11日にそのシングル『極東戦線異状なし!?』をリリースし(ちょうど9・11から丸3年だ)、24日の福岡を皮切りに全国ツアーをスタートさせるソウル・フラワー・ユニオンの中川敬が、歌詞をそのまま出すことについて、このインタヴューでしきりに「悩んだ」と吐露していたのは、自分が歌うこの歌が果たしてリアリティを持つのだろうか、という疑問の念だったのだろう。極東戦線異状なしって感じの日本で。
interview by ken and photo by hanasan
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*E.M.レマルクと西部戦線異状なし
本名はErich Paul Remark。ドイツ人で第一次世界大戦に従軍した後、様々な職を経でベルリンでジャーナリスト活動に入っている。1929年に小説『西部戦線異状なし』(原題 : Im Westen nichts Neues)を発表するのだが、すでに勢力を大きくしていたナチスによる弾圧でスイスへ亡命。ヒットラー政権樹立後の33年、宣伝相ゲッペルスの指揮の下、ベルリンのオペラハウスの前で『西部戦線異状なし』は焚書処分となっている。38年にドイツ政府は彼の国籍を剥奪し、それを受けて彼はアメリカに亡命しているとのこと。この小説 (日本語版はこちら) がルイス・マイルストン監督によって映画化され、30年のアカデミー作品賞、監督賞を獲得。反戦を真正面から打ち出していることから軍国主義化し始めていた日本では大幅にカットされた短縮版しか公開されなかった。オリジナルを見ることができたのはそれから35年後の1965年だったという。すべての人に見てほしい傑作です。 |
mag files :
Soul Flower Power : (04/06/12 @ Shisaibashi Quattro) : review by jab, photo by yegg
photo report : (04/06/12 @ Shisaibashi Quattro) : photo by yegg
photo report : (04/06/11 @ Shibuya 251) : photo by hanasan
photo report : (04/06/09 @ Shimokitazawa 251) : photo by hanasan
僕たちはみんな同じ血の色をしている : (04/03/09 @ Osaka Banana Hall) : review by ken, photo by yegg
photo report : (04/03/09 @ Osaka Banana Hall) : photo by yegg
photo report : (01/09/27 @ Shinjuku Liquid Room) : photo by hanasan
interview
極東戦線異状あり : (04/09/20) : interview by ken, photo by hanasan
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