フジ・ロック前哨戦 其の二 クーラ・シェイカーの巻
クーラ・シェイカー再結成に対する、ここ英国での反応は相当に薄いものだった。実際、現在のロック・シーンにおいては新たな若芽達がその活況を担い、友人の英国人にライブを観に行くと言っても、「え、再結成したの?何で今さら」、と白けたコメントしか返って来ない始末。かくいう私も、彼らが隆盛を極めていた頃にライブを生で観た事が無かったので、10年越しの思いが叶うという喜びの反面、再結成というその意義がいまいち掴めなかったのもまた事実である。今夜はそれを自分の目と耳で確かめるため、いざ北ロンドンに位置するスカラへと向かった。
開場後待つ事2時間、クーラ・シェイカーがやっと現われる。イントロに続く"サウンズ・オヴ・ドラムズ"から観客は合唱の嵐。赤いライトに照らされたバンドが奏でるサイケデリックな音が雷鳴のように轟き、どんどん高まってゆく会場のテンション。クリスピアンの、ややオクターヴ高めの半ダミ声な歌がその怒濤の如き演奏に負けじと闇に広がる。"ビッグ・バッド・ウルフ"、"リヴェンジ・オヴ・ザ・キング"と、itunes限定リリースの新曲にも周囲の反応はすこぶる良い。特に、"ディクテーター・オヴ・ザ・フリー・ワールド"では呪文の様な怪しいイントロから、彼らの持ち味である、ヒステリカルなギター・リフ、効果的に取り込まれる装飾的なキーボード、グルーヴの根幹をしっかり支える、控え目ながらも堅実なリズム隊が、長年のブランクをものとも言わせぬ新鮮な響きの結晶として、空間をそのまばゆい音で染め上げ、新旧入り交じったファンと共に、演奏する彼ら自身もまた、クーラ・シェイカーの世界で陶酔し、それを堪能しきっているのが手に取るように感じられる。クリスピアンの卓抜したギター・テクニックとアンドロイドの如し美しい外見は、不気味なほど昔と何ら変わりないが、彼が天才肌のミュージシャンであれど、なぜソロとしては機能しないのか、今夜彼らの演奏を間近に観てわかった。これは彼の独壇場ではない。この4人が奏でて初めて生まれる、クーラ・シェイカー節なのである。もちろん、"タットバ"、"ハッシュ"、"ヘイ・デュード"に対する、観客の興奮は凄まじく、その自発的熱気も相当なもので、サウンド全体を見ても、色褪せないどころか、"今"の音としても相当主張があり、気負いが無いだけに非常に強力だ。
「何を今さら」、とすげない態度をとっていた、かつてのクーラ・シェイカーに酔いしれた人達へ。10年前のその熱い思いををどうか紐解き、彼らの新曲に耳を傾けて欲しい。長い年月の間、奇跡を信じていた人達へ。その希望に50%の期待値を上乗せして、是非、今年のフジ・ロックへ赴いて欲しい。彼らの意図する復讐が、「昔は良かったね」、と単なる懐古趣味を満たすだけの気休めに終わるか、全く新たな望みをもたらすか、答えはあなた自身にしか、わからない。
-- Set-list --
Intro / Sounds Of Drums / Big Bad Wolf / Revenge Of The King / Die A Love / 303 / Super CB Operator / Shower Your Love / Craving Heart / 108 Battles / Diktator Of The Free World / Last Farewell / Tattva / Organ Intro 6ft. Down / Hush ancore Hey Dude / Hollowman(Part1&2) / Govinda