特集 : 朝霧ジャム - It's a beautiful day

Sound Tribe Sector Nine - 流れるものは留められない -
 サン・パウロを途中で抜けてきたよ。タイムテーブルが時間どおりに進んでいなかったためステージ間の移動含めサウンド・トライブ・セクター・ナイン(以下STS9)はちょっと遅れるくらいでいいか! と、後ろ髪引かれつつ急ぎ足でメイン・ステージへ向かった。すると演奏はまだ始まっていないではないか。そわそわする気持ち、心があっちにいってしまっている。しかし、こんな落ち着かない気持ちになってまでSTS9を観なくちゃいけないと思っていたのだから、ボクの胸の内にある彼らへの期待はとてつもなく大きかったのだろう。
 STS9との出会いは2年遡る。多くのひとがこの日の評判を耳にしただろう、フジロック03のライヴがボクと彼らのファースト・コンタクトだ。彼らのことを何も知らなかったのだから、出演が決まったことも当然知らない。なにげなく出演アーティストをチェックしていたとき、ふと目に入った幾何学模様、STS9という名前。調べていくたび沸き上がる興味は必然性をまとった一目惚れのようなもので、これだけは外せないと思っていた。
 そしてフジのライヴ。はじまりが雨のなか比較的少ない観客数だったせいか、みるみる増えていくオーディエンスの輪が今でも脳裏に焼きついている。もの凄いライヴだった。後の情報によると熱演は80分にも及んでいたという。
 この体験があるのだ、朝霧も見逃す手はない。気持ちを再確認したとほぼ同時にライヴは始まった。それもゆっくり足並みをそろえるような形で。
 スロー・スターターなのは当然だ。彼らはステージ上で空気を感じ取っていたのではないか? 決して煽らず決して急がず。音を汲み取るように、どんどんかさを増していく器。彼らがジャム・バンドと言われるのは、その徹底したエゴレスな姿勢と、あらゆる音楽を詰め込んだその知性にあると思う。彼らがやっている共同体としてのスタイルはなにもジャム・バンドだけのものではない。そう考えると、この器の中身がどんな色をしているかが問題で、ボクにはドラムン・ベースやファンク、テクノが浮かんで見えた。それは他のひとには別のものに映るかもしれないけど、それはそれでいい。重要なのはどんな音楽も美しく紡いでいるという点。そしてどの曲でもエネルギーが爆発しているという点。
 目を引くドラムの演奏はやはりスゴい。とんでもなくカッコイイ。でも、ベースの磁力であったりキーボードの浮遊感であったり、STS9流のスペース感覚って彼ら全員で生み出しているもの。たまに前に出てはしゃいじゃうドラムの彼がいても結局は音楽で仲直り、みたいな。そんな一体感が気持ちいい。いつ始まっていつ終わったのかはっきり思い出せないけど、これほど気持ち良くカラダが動いたライヴはなかなかないよ。
 期待の分とサン・パウロの分、両方を満たしてくれる素晴らしいライヴだった。だけどそれ以上にボクが彼らから感じた「心に強く一点を残さないライヴ」「瞬間を切り取らない音楽」という感覚、これには舌を巻いたですよ。全体でしか捉えるこのできない大きな存在感は、パンク・バンドの真逆をいってる。「Time is money」ではない、彼らが言う「Time is art」というコンセプト、今回は身をもって知らされた感じだなぁ。
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