特集 : South by Southwest Music Festival

Guitar Wolf 「本物」-
 日本のロッケンロールが世界を制する。こんな素敵なことが現実になりつつある。実際、SXSW期間中に行われたジャパニーズ・バンドのみが出演する『JAPAN NITE』というイベントもかなりの盛り上がりみせてくれたし、もちろんSXSW以外にも単独で海外ツアーをするアーティストが様々なところで熱狂を作り出している。
 その中でも別格の知名度と人気を誇るGuitar Wolfのベースウルフことビリーが突然いなくなってしまった。それは一年で唯一、どんな嘘でも許される日の前日の出来事だった。どこを探してもいない。見つかるのはオフィシャル・ホームページの、モノクロームで酒とベースと革ジャンと一緒にいるビリーだけだった。そして下にビリーとの再開場所とその日時だけが記されていた。「臨海斎場」?どこだよそれ。「4月6日」?いやいやちょっと待ってくれ。次に会うのは4月2日の渋谷AXだったろう?親友のTHE D4も一緒にさ。そこでビールを飲むはずだったじゃないか。
 SXSWの3日目、Beerlandという新宿ロフトの半分ほどの大きさしかないライヴハウスに、この日のトリとして出演したGuitar Wolf。彼らがそんなライヴハウスに出演したもんだから入り口付近は溢れる人で騒然となり、プレスでさえ入れないといった状況になってしまった。ようやく中に入るともう2曲目の"フジヤマアタック"が始まっていた。セイジはもうもみくちゃで、トオルはすでに裸、ビリーは唇の端をキュッと上げ、乱れたリーゼントもお構いなしで白黒のプレシジョン・ベースのネックとボディーの辺りを掻き毟っていた。
 彼らはそんなステージを演った。いつも通りに真剣に汗とかビールとか唾液でグシャグシャになって、いつも通りにオーディエンスにギターを弾かせて、いつも通りに最っ高のロッケンロール・ショウを演って……。アメリカのロッケンロール・ジャンキーを圧倒してきたばかりだった。だから本当に信じられなかった。もうそれしかなかった。あのステージが鮮明に焼きついて、人に会う度にその話をしていて、絶対にもう一度海外であの3人をを観るって決めていたのに。もうあの3人のステージは観ることができない。
 この革臭い狼たちは常にお互いのロッケンロールでぶつかり合っている。だから「爆音」と称される。本能むき出しでぶつかるからテクニックなんてものは二の次だ。大事なのはハート。どこまで出し切れるか。どこまで宇宙にいけるか。日本でもヨーロッパでもアメリカでも南米でもどこでもそうだ。そんな宇宙スケールのロッケンロールが狭いライヴハウスで鳴り響くからみんなやられてしまう。言葉の壁なんてものはとうの昔に置いてきた。日本語で宇宙までいっちゃうんだから世界なんて小っちゃいこと言うなよ。宇宙人が英語喋るかってんだ。
 4月6日、涙とか黒いネクタイとかお別れの言葉なんてものは必要ない。宇宙にいくビリーを送るんだぜ?黒いライダースにビールでも持って、タバコ燻らせて、空に向かって「乾杯」しようぜ。本物のロッケンローラーにはそれがお似合いだよ。
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report by taisukecounter
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