前作からわずか半年でニールヤングの新作が届けられた。レコーディング期間はわずか9日間というから気合が入りまくっている。当初はウェブ上で配信し、生産され次第CDが店頭に並ぶという。それだけ強く伝えたいことを歌にしたのだろうと推測される。
でも、そんな前フリがあろうとなかろうとこの作品は凄く強いメッセージを打ち出している。タイトルからして「Living With The War」。ブッシュの戦争をに対して「反戦」というコンセプトがあることは明白だ。ニールがかき鳴らすギターの音は重たくディストーションがかかっている。だけど、その音に耳を澄ましてみても怒りや悲しみといった気分は全く聞こえてこない。むしろそのコンセプトの激しさとは裏腹にアルバムの音は全く刺々しい印象を受けない。
それは、この作品の主人公をバンドの音ではなく常に歌に置いているからだろう。基本的にニールは全編を通してコーラス隊とともに歩んでいる。ブックレットに“100voices"とクレジットされているコーラス隊とニールの歩み方に凄く特別なことを感じる。それは決して飾りにはなっていないという意味で。ニールの歌うメロディーに厚くユニゾンで重ねられたコーラス。それは、決して前だけに突き進めばいいというわけではなく横の繋がりが大切なんだということを実感させてくれる。まるでその素晴しさ見せつけているかのようだ。それは世界中の願いなんだと言わんばかりに重ねられた声だ。イラクの奇襲攻撃を歌おうと、死んでいったアメリカ兵のことを歌おうと、たどり着く先は異なってはいない。表題曲にある一説が雄弁に物語っている。" Try to remember peace"(平和を忘れるな)
前作は自己の内面と思いきり向き合ってきたニールがたったが、これだけの期間で思いきり外側を向いた作品を歌ってるんだからたまらない。何も皮肉らず、投げやりにもならず、諦めもないこの作品から「次はお前らが声をあげる番だぞ。」とニールから強烈なボール投げられ気がする。音楽で何かが変わるなんて世迷い言だと一体誰が言える。歌声が伝えることは確実に存在している。ニールからそんなボールを受け止めた僕らが何をするのか。そんな「次を」考えさせられる傑作だ。