数マイルもドライヴすれば国境線。そこから先はメキシコ。見渡す限りのアリゾナ
砂漠。転がっていくタンブル・ウィード。サボテン。そこに射す濃い陰影。アリゾナ
州ツーソンの街。そこに足を踏み入れたことのないぼくにとっては、そんな書き割り
のようなイメージを列挙することしかできない。けれど、そうして妄想の中にズブズ
ブと浸かってみるのも、それはそれで楽しいこと。そして、そこにはいつでもハウ・
ゲルブの深く低い歌声が寄り添っている。
ハウ・ゲルブ。彼はペンシルヴァニアから一転、アリゾナ州ツーソンにやってきた。
それは1970年代中頃のこと。そこで彼はバンドを組む。どう猛なパンク性と荒々しい
ガレージ・サウンド。そこに、メランコリックなルーツ・ミュージックを忍ばせたそ
のバンドは当初、ジャイアント・サンドウォームズと名乗り、その後、ジャイアント・
サンドに改名。もうすでに彼は20年以上も、このバンドを率いていることになる。彼
らがリリースしたアルバムの数も、両手両足の指で追いつくか追いつかないかという
ところ。いくつかのアルバムのカバーには、茫洋としたアメリカの風景が広がってい
る。となると、冒頭のようなイメージ連鎖についついはまり込んでしまうのも、仕方
のないことだろう。その長いキャリアの中、彼が交流を結んだアーティスト・リスト、
そこにジュリアナ・ハットフィールドからヴィクトリア・ウィリアムス、レモン・ヘッ
ズのエヴァン・ダンドゥ、PJハーヴェイ、キャットパワーらの名前を見つけることは、
そう難しいことではない。日本では残念ながら「未知の」アーティストと言えるハウ・
ゲルブだが、手を伸ばせばすぐに指が届く場所に彼はずっと佇んでいたわけだ。また、
ジャイアント・サンドのリズム・セクションから独立したユニット、キャレキシコの
ことをお気に入りグループのひとつに加えている方は多いと思うし、ともかく「デザー
ト・ロック」「アメリカン・ゴシック」といったタームが誌面を彩るとき、ハウ・ゲ
ルブの存在は欠かせないものとなってきた。
part2
report by 福田教雄
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