Doctor and the Medics @ Alice In Wonderland (Oct. '98)
15周年記念イヴェントで復活!
日本で初めてスタンディング・スタイルのライヴを始めたり、工場の廃屋を使ってノイバウンテンのライヴを企画したりと、常に音楽を最も好ましいスタイルで楽しめる状況を目指してきたのがスマッシュ。もちろん、フジ・ロック・フェスティヴァルもそのひとつなのだが、その歴史のなかで最も奇妙な、そして、ユニークなライヴとなったのが80年代半ばにぶちあげた「Magical Mystery Trip」だった。基本的に観客に知らせるのは集合場所と主な出演者の名前だけ。しかも、そのチケット代にはバスでの移動に伴う経費も含まれているので、通常の2倍ぐらいの値段になるというとんでもないイヴェントだ。今でこそいろんなイヴェントが増えたとはいうものの、そんなことをまともに実行するイヴェンターなんていないだろう。
ともかく、あの時には、まだまだオルタナティヴなカルチャー・マガジン的な色彩を放っていた宝島をメイン・スポンサーに、鈴木慶一氏など、日本人のミュージシャンたちも参加した破天荒なイヴェントとして大成功することになるのだ。なんと会場となったのは松戸のキャバレー。会場に着くと、メディックスのメンバーで奇妙なダンスを披露していたアナディン・シスターズが観客を出迎え、その中ではサイケデリックな音楽がドクターと、彼の相棒、クリスチャン・パリスによって大音響で流されていた。あの時の前座が誰だったかは、調べないとわからないが、当時のインディ・シーンでかなり盛り上がっていたバンドだったと思う。ともかく、経済的には成功だとは言えなかったが、このトリップに参加した人たちはこのサイケデリック・パーティを大いに楽しんだものだ。
その原型を作ったのがロンドンのクラブ「Alice In Wnderland」だった。今でこそ、クラブというと、決まったタイプの音楽しか頭に浮かばないようだが、当時も今も、ロンドンには様々なタイプの音楽を楽しむことができるクラブが星の数ほども存在する。そんなクラブ・シーンが最も活性化していた80年代半ば、カルト的なDJとして脚光を浴びていたひとりがドクターこと、クライヴ・ジャクソンだった。
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ここで流していたのは、新しい音楽を完全に無視したサイケデリック・ロック。天井からはまるでひだのようにトイレットペーパーが飾られて、典型的なサイケデリック色を象徴するライティングがクラブを包み込んでいた。しかも、ドクターがDJするときに彼が使っていたのは、エフェクターの数々。それも音楽に対してではなく、彼のトースティングに使っていたのが面白かった。彼の声自体がサイケデリックに響いて、それにワープ感いっぱいの音楽が大音響で響くというもの。実は、このクラブからサイケデリックや60年代後半の音楽が再評価を受け、その影響を持ったバンドがシーンに浮上してくるのだ。そんな流れを受けてXTCのアンディ・パートリッジが発表したのが変名で作ったアルバム「25 O'clock Rock」。確か、バンドの名前はデュークス・オヴ・ストラスフィアじゃなかったかと思うのだが、そのアンディがドクターのバンド、メディックスに惚れ込んで12インチを1枚プロデュースしている。
その「Alice In Wonderland」が不定期的にやっていたイヴェントが「Magical Mystery Trip」というイヴェントだった。なんでも始まりはただの冗談。「洞窟でライヴをやったら面白いんじゃない?」と考えたのがドクターとクリスチャン。というので、「内緒の場所でライヴ・パーティをやるんだけど、遊びに来ない?」って感じでレギュラーの客に呼びかけたところ、集まってきたのが600人。彼らが指定された場所に集合して、その時はクラブのスタッフに誘導されて電車で移動したらしい。思うに、一般の乗客はこのサイケデリックな人々の群にびっくり仰天したに違いない... が、それを楽しんでいたのが集まってきたクラブ仲間だった。
そして、たどり着いたのが洞窟。そこにはクラブと同じような装飾が施され、お馴染みのサイケデリックな音楽がぎんぎんの大音響で流されていたとか。もちろん、みんなが盛り上がってくると始まるのがドクター&ザ・メディックスのライヴ。そんな騒ぎがオールナイトで続くのだが、途中でおきたのがアクシデント。発電器が故障して洞窟のなかが真っ暗闇になったというのだが、それさえもが演出だと思ったのが観客。大した騒ぎにもならず、彼らはそれをも楽しんでしまったという。
残念ながら、その第1回目には参加していないのだが、ちょうどドクター&ザ・メディックスが「スピリット・イン・ザ・スカイ」で全英チャートのNo.1を獲得した頃、その「Magical Mystery Trip」に加わったことがある。この時、集合場所のハイド・パークはスピーカーズ・コーナーに集まってきたのは約3000人の人々。その彼らが数十台のバスに乗って向かったのは東海岸のリゾート地だ。もちろん、観客はどこに向かうかは知らされてはいない。現地について、自分の住んでいる町に戻ってきたという人もいたというのだが、それがこの「Magical Mystery Trip」の面白いところだ。
会場は海辺の建物で、「Quadrophenia」の舞台になったブライトンにあるピア(桟橋のようなもの)に似たもの。その中にはいると、瞑想用の部屋があったり、サイケデリックなライティングを施したダンス・ルームがあったり.... ライヴもメインのステージの他にサブ・ステージもあるといった、いわば、音楽を楽しむための全てが用意されていたものだ。この日、出演したのはメイン・アクトのドクター&ザ・メディックスに加え、当時噂になっていたゾディアック・マインドワープ・アンド・ラヴ・リアクションといったハードコア風サイケデリック・バンドに、ジミ・ヘンドリックスが現代に蘇ったようなVoodoo Childなどなどと、最初から最後までトリップ状態で遊ぶことができる。
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残念ながら、このクラブも小さくなって、消えてしまったと思っていたのが、突然入ってきたのがFAX。10月23日に15周年記念イヴェントをやるので遊びに来ないかという招待状。というので、取材に出かけてみたのだ。その会場となったのはこのクラブが始まったソーホーのゴシップス。ここはかつてギャズ・メイオールの「Gaz's Rockin' Blues」やデイヴ・ロディガンのレゲエ・ナイトなどが開かれていた場所で、ここで始まったのが「Alice In Wonderland」。というので、同じ場所での開催となったのだろう。
クラブに入ったのは深夜の0時頃。クラブのなかはもうめいっぱいの人を詰め込んだという感じで山の手線のラッシュアワー並の混雑だ。そのイモ洗い状態の人混みの向こうでタイミング良く始まったのがドクター&ザ・メディックスのライヴだ。ヴォーカルはドクター、そして、オリジナルのアナディン・シスターズが隣に控えている。ギターもオリジナルのメンバーだが、ベースとドラムスはここ数年活動を共にしているメンバーだという。(驚くべきことなんだけど、ドクター&ザ・メディックスはイタリアで人気があって、今もツアーをしているとのこと)いずれにせよ、ドクターとアナディン・シスターズだけで充分に全盛期の雰囲気が楽しめる。
クラブのなかで偶然見かけたのがブームブーム・サテライツのメンバー。おそらく、彼らが今年のグラストンバリーに出たときにメディックスの連中(クライヴとギタリストのスティーヴ)が彼らの面倒を見ていたことが理由だろう。ともかく、そういった新しい人たちと共に、昔からのAliceファンもいっぱい遊びに来ていたようで、とんでもない盛り上がりを見せている。去年10月から3ヶ月にわたってロングランを続けたロックンロール・サーカスの「Circus Of Horors」の中心人物、(今じゃ、テレビ番組も持っているスターみたいですが)Hazeも遊びに来ていたし... 懐かしい顔がいっぱいみえる。
そんなりラックした雰囲気のなかで昔通りのばかばかしくもおかしい、そして、とってもロックなライヴを繰り広げているのがメディックスの連中。途中でオリジナル・メンバーのドラマーやベース・プレイヤーが加わって、お祭り騒ぎのような盛り上がりだ。「Ride」という曲では観客全員が床にねっ転がって、自転車のペダルをこぐという... そんな遊びもやって、その中にドクターが参加。こんなイギリス的な冗談を本気でやってしまうところがこのバンドの面白さであり、そんな冗談やユーモアの感覚を持っていたのが「Alice In Wonderland」というクラブだったのだ。
ライヴのあとは、ドクターとクリスチャン・パリスによるDJタイム。昔と同じく、あの奇妙なエフェクターを使ってのトースティングを始め、まるでアナクロな選曲で踊り狂う一群がフロアを占拠するといった流れだった。すでに音楽業界から足を洗って、堅気(?)になったのがクリスチャンこと、クリス。昔のように髪をブロンドに染め、ピアスだらけじゃないけど、それでもこの夜を楽しんでいるのがよくわかる。昔を振り返るだけじゃネガティヴだが、ときにはこんな夜もいい。また、こんなことをきっかけにサイケデリックなロックが最前線で復活してくれればいいのだが....
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report and photos by hanasan on the 27th Oct.
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mag files :
15周年記念イヴェントで復活! (98/10 @ Alice in Wonderland, @ Gossips, London) : revirew and photos by hanasan
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