再び泥まみれのグラストンバリーに15万人!
- part2 -

26日よりは若干天気の良くなった翌27日の昼頃に出会ったのが、会場に到着したばかりのホットハウス・フラワーズ。ギターを演奏しているフィアクナだ。彼と顔を合わせるのは久しぶりで、確か前回会ったのもこの会場だったように記憶している。おそらく、93年ぐらいじゃないかと思うのだが、だとすれば5年ぶりとなる。確か、彼らの5年ぶりぐらいのアルバムがすでに発表されているはずで、これがまたいい。ちょっとデジタルっぽい部分があったのは驚きだが、それでも彼ら独特のアーシーな音楽の味は変わることはない。できれば、彼らのアルバムをぜひチェックしてもらいたいものだ。
その5年間の間にドラマーのジェリィ、サックス&キーボードのレオが抜け、バンド結成以来の3人に立ち戻ったということなのだが、フィアクナによるとドラマーとベースが加わり、再び5人編成となったとのこと。といっても、それがパーマネントなメンバーなのかどうかは確認していない。いずれにせよ、デビュー以来彼らを愛し続けてきた人間として、彼らの復活は実に嬉しい。
さて、この2日目、楽しみにしていたのが11時頃から演奏することになっていたJools Holland。というのも、敬愛するトロンボーン奏者、Rico Rodriguezが来ているんじゃないかと気になったからだ。が、結局、フィアクナと話し込んでいるうちに見逃すことになってしまった。あとで友人に聞いたところによると、会場でばったりとリコにあったとのこと。残念。きっとジュールズ・ホランドと一緒に演奏したに違いない。悔しい!
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ということで、この日の一発目のライヴとなったのが13時過ぎに始めたHothouse Flowers。面白いのはステージのセッティングをしているときに、フォト・ピットにいる私に気がついてリード・ヴォーカルのリアムがわざわざステージからおりて来たこと。そして、握手... 実は、3年ほど前にマイアミの空港でトランジットのためにフライトを持っていて、偶然彼と会っている。また、前回の来日の時に、ちょうど彼の父親が亡くなったとかいうので、いろんなことを話し込んだといういきさつもある。そんなこともあって、こうなったのだろうが、あいかわらずハートの暖かい連中だ。それが如実に出ていたのがその演奏だった。
ステージを見ると、以前、ベースを演奏していたピーターはギターに専念。リアムが時にキーボードを演奏しながら歌うこともあるのだが、キーボードを離れると、楽器を手にしないでヴォーカルだけで勝負していたというのが印象に残っている。その分、のびのびと歌えるんだろう、歌のパワーがストレートに突き刺さってくる。このバンド構成になったのは大正解といったところ。
ライヴでも新しいアルバム同様、ちょっとデジタルっぽいニュアンスを加えているけど、やっぱりフラワーズはフラワーズ。アーシーでハートウォーミングな演奏はいつもの通りだ。演奏した曲は新しいアルバムからが中心で、最後に 演奏したのが前作「Songs From the Rain」に収録されていた「This is it...(Your Soul)」。この曲をアルバムとは全く違ったちょっとカリビアンっぽいタッチで演奏していたのが面白い。マイアミ空港で偶然リアムに再会したとき、結婚式を挙げるのに、コスタリカのおじさんのところに行くと言っていたのを思い出した。そこでカリブの音楽にはまったのか... そんなことを思ったものだ。
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彼らの演奏中、激しい雨が降ったりやんだり... あとで聞いたら、なんでもこの頃だろうか、大きな虹が空を飾ったというのだ。さすがにホットハウス・フラワーズ。しかも、最後の曲を演奏する頃にはすっかりと空が晴れ上がって、彼らの演奏を演出していたというから驚かされる。しかも、そのステージが終わると聞こえてきたのが、「いつでもグラストンバリーはホットハウス・フラワーズを歓迎するよ」という会場のアナウンス。フラワーズはグラストンバリーにぴったりなバンドだと痛感したものだ。できたら、また日本に戻ってきて、ライヴをやってくれないものだろうか...
そのフラワーズが前回か、前々回、グラストンバリー・フェスティヴァルに出たときに、リアムと一緒にフォト・ピットで見たのがワールド・パーティ。昔から大好きなバンドで、あのときなんて、演奏後の彼らを追いかけてリーダーのカール・ウォリンジャーに握手しにいったほど。というので、なんとか彼らを見ようとピラミッドを離れて、アクースティック・テントに向かう。前回はピラミッドで演奏したのだが、今回はアクースティック・テントということで、人気にかげりが見えているんだろうけど、2枚目のアルバム「グッドバイ・ジャンボ」や3枚目の「Bang」があまりに傑作で、それを越える作品を彼が作れていないのが原因に違いない。が、この会場だって軽く数千人は収容できる。そこが人で埋まっているのだから、そんなことを気にする必要はない。
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ピラミッドからアクースティック・テントまでは... 実に遠い。まるでいくつもの泥の海をまたいで、隣の町に出かけるようなもの。実際、移動するのにやはり20〜30分ぐらいの時間を要する。途中、サーカス・エリアや子供たちの遊園地を抜けるのだが、そのエリアだけでも... おそらく、今回のフジ・ロック・フェスティヴァルの会場分ぐらいの敷地面積はあるはずだ。実は、今年初めてグラストンバリーを体験した日本人の友人が、「なんか、記憶に残っているのって、歩いていたことばっかッスよ」なんて口にしていたのだが、まさにその通り。こうやって移動を繰り返しているとそれだけで体力を消耗してしまう。
おかげでライヴに間に合わないんじゃないだろうかと不安を感じながらテントにたどり着いたのだが、幸か不幸か、機材にトラブルがあったようで、まだ演奏は始まっていなかった。熱狂的なファンは「まだかようぉ!」とか「早くやれよ!」とか叫んでいるんだが、緞帳の向こうからはそれに応えるカールの声が聞こえてくる。「俺たちもやりたいんだよ!」まぁ、これほどいっぱいバンドが集まって演奏を続けていれば、トラブルのひとつやふたつはあるだろう。気長に行くのが一番だ。
とはいいながら、若干いらいらしていたんだけど... 始まったら、そんなこと、ころりと忘れてしまうほど素晴らしかったのが彼らの演奏。ド頭の1曲ですんなりと彼らの世界に入ってしまうのだ。演奏曲目で一番多かったのは... というより、演奏のほとんどは2枚目「グッドバイ・ジャンボ」と続く「Bang」から。セッティングの時に問題があって、アコースティック・ギターを中心に演奏しなければいけないなんて言葉が漏れ聞こえてきたのが原因なんだろう。が、あのアルバムをめちゃくちゃ気に入っているものだから、それで大満足。逆に、だからこそよかったのかもしれない。「Way Down Now」や「Put The Message In The Box」に「Is It Like Today」や「Is It Too Late」など、グリーンでオルタナティヴな曲が次々と演奏され、オーディエンスの大合唱がそこに続いていた。
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Part1でも書いたのだが、グラストンバリーというのは、実に多くの友人に出会う場所だ。実をいえば、このアクースティック・テントで舞台監督をしていたのが、2年前に企画したあるコンサート・ツアーで来日していたエンジニア。そういえば、あの時も「俺はグラストンバリーで舞台監督をしているんだ」と自慢していたものだ。思うに、彼らにとって、グラストンバリーというのはステイタスになるんだろう。
さらに、久しぶりに再会したのが、おそらく、UKロック・ファンなら知っていて当然のジョン・ピール。60年代から活躍するラジオのDJで、ジミ・ヘンドリックスを、おそらく、世界で初めてラジオで流したのがこの人だろう。また、Tレックスを世に紹介したのも彼だ。さらには、パンクからニューウェーヴ、ゴシック、レゲエやスカからダブ、あるいは、正体不明の音楽まで、誰よりも早くオリジナルでユニークなアーティストを取り上げることで知られている。その中には日本では全然無名のスラッシュ系のバンドから、なぜか英国で大受けしたフランク・チキンズも含まれている。しかも、きちんとしたアルバムではなくとも、デモ・テープだって放送してしまうのがジョン。きわめてユニークなサウンドに対してめちゃくちゃ弱いところがあるので、もし、自信のある人があれば、BBC気付けで彼に作品を送って見たらどうだろう。ひょっとしたら、放送してくれるかもしれない。実際、そんなのが蓄積されたのが有名な「ピール・セッション」という一連のアルバムなのだ。
「最近じゃ、グラストンバリーの顔のようになっているけど、実は、これで... まだ5〜6回目なんだよ」
と、語っていたのがこの時。グラストンバリーのテレビ中継からラジオなどで必ず彼が登場しているからこんなイメージを持ってしまうのだが、それは知らなかった。ただ、彼がグラストンバリーと縁が深いのは次の一言で理解できる。
「でも、Tレックスがやったときには来ているんだ」
これには驚かされたのだが、それは70年のことに違いない。確か、グラストンバリー・フェスティヴァルの第1回目にTレックスが登場しているはずだ。そんな意味で言えば、彼はこのフェスティヴァルの歴史に関わる重要人物だと言ってもいいのかもしれない。
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その他にもいるわいるわ... 昔なじみの友人やミュージシャンと再会することが多くて、まるで同窓会のようなものだった。実際、英国どころかヨーロッパ最大規模となったこのフェスティヴァルには今や... ハッキリ言ってバンドやアートの見本市のような色彩もある。というので、そんな人たちに会わざるを得ないのだ。が、それにしても今年はビックリするほど昔の仲間にあっている。
まずは、かつて男性版のシャーデーとも呼ばれたトーマス・ラングというバンド(リード・ヴォーカルの名前でもある)でドラムスを叩いていたアンディ・レッドヘッド。日本にも3回ぐらい来たことがあって、素晴らしいドラマーなんだが、なんと、今はマンチェスターのプロモーターの下でプロダクションの仕事をしているとか。このところ急速に有名になっているV98というフェスティヴァルを企画制作しているところで、今年の夏休みにここに向かう日本のロック・ファンも多いことだろう。
ちなみに、トーマス・ラングのファンにとって気になる他のメンバーの動向だが、ギターのジョンとキーボードのデイヴは映画音楽の仕事をしていて、トーマスは今もヴォーカルをやっているとか。実に懐かしい...
と、思っていたら、80年代中期のマンチェスターを代表するバンド、Jazz Defektorsのドラムスのマイキーにも遭遇。当時、ファクトリー・レーベルを中心に勢力を強めていたのがマンチェスター勢。その他にも、ジャズやファンクに影響を受けたユニークなバンドが数々登場しているのだが、ユニークなダンス・スタイルとコーラスを武器にした4人の黒人が中心となったこのバンドは日本でかなりの人気を獲得したものだ。
さらに、同じ頃、ロンドンのクラブ・シーンからサイケデリックなサウンドをリヴァイヴァルさせた張本人、ドクター&ザ・メディックスの面々とも出会ってしまった。Tレックスタシーというトリビュート・バンドとの仕事の関係で幾度も彼らとはあっているのだが、グラストンバリーで会うとは思ってもみなかった。この時、顔を合わせて話をしたのはスティーヴだけだったのだが、ドクターこと、クライヴ・ジャクソンも会場にいたとか。加えて、2年ほど前までスマッシュで働いていた英国人のコリンにも再会。いやぁ、ビックリだ。
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さて、アクースティック・テントからピラミッドに戻って(あるいは、その前だったかもしれないが)見たのは、元気いっぱいにロックするStereophonics。シャープでパワフル、タイトで無駄のないストレートなロックを満喫できたといった感じか。
その他に、Tori Amosを見ているのだが... どうも、この人の魅力はわからない。なんでもイギリス人にとって彼女の歌、音楽、そして、ルックスからスタイルに至るまでめちゃくちゃセクシーだというのだが... 彼女のライヴを聞いていて、どうもそんな感覚にはおそわれないのだ。おそらく、それは歌の言葉のせいなんだろうけど、もうひとつ納得できない。
が、この日、ピラミッドで圧倒されたのはTricky。マイクにしがみついて、なにかにとりつかれたように歌う... あるいは、叫ぶあの姿にはとんでもないインパクトを感じる。その衝撃は... 身体の奥底からゾクゾクと電気が走るような感覚に近い。その存在感そのものにKOされたといってもいいだろう。
その他、この日、演奏したのはThe Jesus & Mary Chain、Roni Size、The Rootsといったあたり。超メジャーどころではBlurというのもあったのだが、見てはいない。友人のトロンボーン奏者、デニス・ロリンズがBlurで演奏しているという話も聞いていたので、顔を覗かせようとも思っていたのだが、Trickyの後にマーケットをチェックしにいったのがこたえたのだろう。疲れ切って、動けなかったというのが実状だ。
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マーケットで、今年も大人気なのが、雨のグラストンバリーに絶対に必要なゴム長。それに実用的なスリーピング・バックの下に敷くマット、あるいは、カンテラ... 他にも、雨から身を守るための服関係で、そのあたりが大繁盛していたものだ。といっても、ちょっと晴れ間が覗くようになった2日目からは(着替えるための)Tシャツなども売れていたんだろうが、天候と泥の海をお客さんが移動しているおかげで泥まみれになっている商品も少なくない。もちろん、その分、値段は安くしているのだが... 彼らが儲けをあげたとは思えない。
思うに、最も収益をあげていたのはレストラン関係だろう。世界中の音楽がここに集まってくるというのもあるんだろうが、いろんな料理が楽しめるのだ。おそらく、フェスティヴァルを中心に展開しているチェーン店なんだろう、Japanese Noodleとかなんとかいうのがやたら目に付くのだが... はっきりって、これ、全然おいしくなかった。東洋系の人が中心にやっていて、RAMENなんて言葉が見えるのだが、これはラーメンじゃなくて、そばかうどん。焼きそばだってまずいし... 為替レートが大きく変わった今となっては、やたら値段が高く感じるのだ。が、いずれにせよ、本当の日本食が高くて食えないという一般客にはこれでいいのかもしれない。
なぜかそれほど中華料理は目に付かないのだが、基本的にはなんでもそろっているというのが嬉しい。特においしいのはジャマイカ料理やインド料理。その他、イギリス人が大好きなフィッシュ&チップスやバーガー屋にホットドッグといった、かなりジャンク・フードっぽいものもある。が、ヴェジタリアンの多いこの国のこと、(それに、オルタナティヴ運動の影響もあると思うのだが)ヴェジバーガーを売っているところも多い。
もちろん、有機野菜などを使ったレストランもあれば、出来立てドーナツ屋にトウモロコシの焼いたのやボイルしたのや... オルタナティヴ系が目立つのを除けば、ノリは日本の出店と変わらない。このあたり、フェスティヴァルのルーツがフェア(村祭りのようなもの)に起源を持っていることからも想像できる。それもフェスティヴァルの大きな魅力なのだ。 |
report and photos by hanasan on 10th Jul
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