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@ オースティン、 テキサス (18th - 22nd Mar. '09)

SXSW 2009特集

- アウトロ - へんてこりんでいてよ、オースティン!
SXSW 2009
 と、いきなり奇妙なタイトルを書いても意味がわからないかもしれないが、今年、会場となった町、オースティンで目立ったのがシンプルな文字で構成されたTシャツ。そこにはこう書かれてあった。

"Keep Austin Weird"

 それを日本語風にしてみたら、そんな感じかなぁと思う。Weird(ウェアード)という言葉は、「風変わりな」とか「異様な」、あるいは、関西弁で言うところの「けったいな」といった意味で使われるもので、辞書をひっくり返してみるとアメリでの俗語では「素晴らしい」という意味もあるんだそうな。確かにそうだろう、オースティンはきわめてユニークで、風変わりで、同時に素晴らしい。このフェスティヴァルに絡んでオースティンへ足を運んだのは4度目なんだが、来る度に、そのWeird(ウェアード)な魅力を発見し、このキャッチ・コピーと同じような思いを強くするのだ。

SXSW 2009 例えば、まだまだジョージ・ブッシュが大統領だった2年前も、テキサスでよくもこんなことをやるよなぁと思わせたのがオゾマトリ。メンバーのひとり、ラッパーでパーカッションのジャスティンが着ていたシャツの背中に貼り付けられていたパッチワークにはあの大統領の親父と本人の写真が顔を覗かせ、前者には「間抜け」そして、後者には「もっと間抜け」という文字が書かれていた。しかも、それをわざわざオーディエンスに見せつけて拍手喝采を受けているあたり、彼ららしいといえば、それまでなんだが、それを熱狂的に受け入れるオーディエンスに多いに驚かされたものだ。なにせ、テキサスといえば、ジョージ・ブッシュのお膝元。こんな反応ありか? と、頭をかしげたくなるのだ。さらに、昨年は反戦集会のようなライヴもあった。イラク帰還兵を核に反戦を訴えた映画を記念して開かれたボディ・オヴ・ウォーがそれなんだが、あの異様な盛り上がりは、国外の我々がイメージするテキサスとは遙かにかけ離れている。

SXSW 2009 ところが、いろいろな人と話をすると、保守的だとされるテキサス州でこの町だけが異様にリベラルで反ブッシュの人が多いんだとか。ゲイのコミュニティも大きいらしいし、オルタナティヴな運動も盛んで、なにやらかつてのニューヨークやロス、あるいはサンフランシスコのニュアンスを持つ町がテキサスに存在するといってもいいかもしれない。しかも、リーマン・ショック以降、アメリカの多くの町が廃墟のようになっているという報道がなだれ込んでくるというのに、どうやらここでは人口が増加し、他の都市に比較して産業の落ち込みも比較的マシらしい。と、実にユニークなのだ。

 だからこそ、街中がひっくり返って踊り出すような、こんなフェスティヴァルを形にできるんだろう。どう考えても、日本じゃ、あり得ないのだ。深夜のある時間を過ぎると、さすがに周囲に響き渡るほどの大音響は少なくなるんだが、真っ昼間から音の洪水に襲われ、多くの人々が繰り出してくる夕暮れ時ともなると、まさしく爆音だらけのお祭り騒ぎとなる。それはこれまでも幾度となく書いていた通りだ。

 まるでお祭り騒ぎのようなこのフェスティヴァルを「商業主義」だいう人もいるらしいが、さて、そうなんだろうか? 確かに、チケットの値段はかなり高い。どこにでも入ることが可能とされる、いわゆる通し券が600ドルほど。1日単価にすれば15000円前後とはいうものの、簡単には買うことができるものではないだろう。特に、通常のライヴ・チケットの値段が日本とは比較にならないほど安いアメリカでは遙かに割高に感じるはずだ。しかも、公式に記されているライヴはショーケースということで、言葉を換えれば、これは音楽の見本市のようなもの。だからこそ、長いものでも演奏は1時間ほどで、タイムテーブルに従って、とんでもない数のアーティストが演奏することになる。おそらく、「音楽を売る」、「自分たちをプロモーションする」という意味で言えば、まさしく「商業主義」といって間違いはないだろう。が、全米どころか、世界中のメディアが集まってくるここをきっかけに、名を売ったミュージシャンも数多い。それよりなにより、今、最も必要とされているのは、音楽そのものから、生で音楽を楽しむことの素晴らしさを伝えるということ。それがベストな形で提示されているフェスティヴァルのひとつがSXSWではないかと思うのだ。

SXSW 2009  実を言えば、ライヴが終わって、それを口にしたのが、この直後に来日することになったルーシー・フォスターだった。

「ライヴ・ミュージックをサポートしてくれてありがとう」

 と、その言葉にこのフェスティヴァルの重要性が表れているように思うのだ。このフェスティヴァル開催期間中のみならず、生で音楽を楽しむことのできる場で溢れているのがオースティン。音楽とは、本来、生活の場にあり、その結果として生まれたのがやCDだったはずだ。ところが、いつの頃からか、それが逆転して、消費されるだけの商品音楽が幅をきかせるようになっていた。それこそが非難されるべき商業主義だろう。

 ところが、言うまでもなく、CDのセールスは完全に下降し、データのダウンロードが幅をきかせているのはご存知の通り。すでにアメリカのタワー・レコードは2006年に倒産して、店舗はなくなっているし、ヴァージン・メガストアも全米から姿を消した。単純にLPからCDへの転換期とこれが違うのは、新しい形態の変化に旧態依然としたレコード産業が十分対応できていないことだろう。当然ながら、レコード店の減少は作品の販路を縮小させ、それに見合うデジタル・マーケットが成長しているかというと疑問が残る。結果として、それがミュージシャンの収入源にも影響を与えていると思うのだ。以前なら、フェスティヴァルに出演すると、それがプロモーションとなってレコード・セールスに反映するといった図式もあった。が、販路が少なくなったら、それも期待できないというので、このところ出演料が高騰しているという話しも耳にする。その一方で、売れていないアーティストは「プロモーション」を名目にほとんどノーギャラで出演を迫られるというのだが、はたしてそれが正しいのだろうか。

SXSW 2009 そんな危機的な状況の下、音楽という文化を盛り上げ、その音楽を通してさまざまなビジネスを模索するような形で繰り広げられるこのフェスティヴァルの意味は大きい。コンヴェンション・センターに行けば、多種多様な展示、プレゼンテーションを体験することができる。世界中のいろいろな国から、アメリカのマーケットに向けて数多くのバンドが紹介され、新しいビジネスから楽器や機材なども数多く出展されているのだ。同時に、世界中からやってきた音楽関係者がここで情報を交換することにもなる。

 もちろん、探っていけば音楽業界の魑魅魍魎が渦巻いているのだろうし、ネガティヴな側面があることは否めない。数多くの素晴らしいボランティアが活躍する一方で、ぼったくりが目立った自転車タクシーなんかはその一例だろう。開催期間中の宿泊費からシャトル・バスの料金の高さにも辟易するのだが、ミュージシャン同様、無数の人々がここに集まってくるおかげで繰り広げられるのが数々のフリー・ライヴ。公式プログラムには掲載されていなくとも、個人の家の庭から、レコード店などでそれを楽しむことができるのもまた事実だ。それが「音楽の安売りにつながる」という批判があっても、眼前で繰り広げられる生演奏の楽しさは、音楽本来の素晴らしさを雄弁に物語ってくれる。そんな意味で言えば、チケットを買わなくても、十二分に楽しむことができるのがこのフェスティヴァル。一度体験するとなかなか抜け出せなくなるのは、そんなところも理由ではないかと思う。なにはともあれ、春になったらオースティンを目指すようになった我々がその端的な例だろう。

 公式サイトをチェックすると、来年の開催期間は3月17日から21日に決定されたとある。ということは、このフェスティヴァルにやみつきになった我々のスケジュールが決まったも同然。さて、来年はどんな素晴らしい音楽と出会うんだろうかと、すでに今から妄想が始まっているのだ。


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