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@ Austin, Texas (12th-16th Mar '08)

Feature Special SXSW 2008

Billy Bragg
@ SESAC Day Stage Cafe, Austin (13th Mar. '08)

Billy BraggBilly Bragg
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「な〜んも変わってないなぁ、昔と同じじゃないか」

 このライヴが終わって、本人を目の前にしてそんな言葉を口にしてしまったのが、どこかで悔やまれる。といっても、それはけっして悪い意味ではないんだが、受け取りようによってはひどい言い方だったかもしれない。とはいっても、そんな言葉が頭に浮かんだのは、巻頭の写真を撮っていたとき。1984年に初めてビリー・ブラッグを取材して撮影していた写真と全く同じ構図で、あのときのことが頭をよぎったことがその理由だった。

 まだ音楽ジャーナリストとして活動を始めたばかりの頃、ロンドンで彼の噂を耳にして購入したのがセカンド・アルバム、"Brewing Up with Billy Bragg" (UK import / US import)のカセットだった。まだカセット・ウオークマンが主流だったあの頃、取材で出かけたロンドンで速効で音楽を聴くにはこれしかなかった... という、そんな時代の話だ。そのカセットに記されたマネージメントの電話番号に連絡を入れて、「取材したいんだが...」とコンタクトをとったのがことの始まりだ。どこの馬の骨ともしれない、アルバムも発表されてはいない日本からの無名ジャーナリストを快く受け入れてくれたのがビリーだった。あの当時、ツアー・マネージャーでローディーだったのが、今では英国で屈指のラジオDJのアンディ・カーショウ。今も当時もマネージャーはピンクフロイドを発掘して初代のマネージャーとなり、その後、ストーンズやブラインド・フェイスのハイド・パークでのライヴを実現させ、ザ・クラッシュのマネージャーもしていたピート・ジェナー... といったって、その頃、そんなことを知るよしもない。あれからすでに四半世紀が過ぎている。

 その間に、彼は日本で企画した反核のイヴェント、アトミック・カフェに出演してくれたり、赤坂界隈の反核デモに参加してしてくれたり.... と、そんなこともあったし、ツアーに同行したときには一緒に広島の原爆資料館を訪ねたこともある。自分にとって最も大切なアーティストがビリー・ブラッグだと言っても差し支えないだろう。当時から非の打ち所のない前向きな姿勢を持つビリーが、今も同じビリーであることを確認できたのが嬉しくてたまらなかったというのが、あの言葉、「な〜んも変わってないなぁ、昔と同じじゃないか」の裏にある意味なのだ。

 デビュー当時、ビリーは「歌いたい」だけではなく、「伝えたい」がために、メタル・バンドだろうが、パンクだろうが、フォークだろうが、どんなアーティストとも共演していたし、歌を聴かせるためにギターを持って雑誌の編集部に乗り込んでいたり、ストリートでも歌っていた。それはザ・クラッシュの「白い暴動」を体験して生まれた姿勢であり、彼が「ワンマン・クラッシュ」と呼ばれるようになったゆえんはそこにある。

 だからこそ、自分の思いにあくまでも正直に素直に、時には愚鈍とも思える率直さで活動を続けていったんだと思う。その姿勢が、今も全く変わっていないことを確認できたのがひどく嬉しかったといえばいい。それはこのあと、同じ日に開かれた、反戦映画「Body of War(ボディ・オヴ・ウォー)」の完成を祝うように、そして、アメリカのイラク政策に対する抗議集会のようなライヴに彼が姿を見せた時も同じだった。

「いいかい、音楽で世界なんて変えられないよ。僕はただのシンガー・ソングライター。僕ができることは、こうやって歌うこと。おそらく、みんなも同じだと思うんだけど、時にはシニカルになってしまったり、絶望したり... 自分だってそうさ。でも、思うんだ、僕らひとりひとりが前を向いて、動かなければいけない。そうすることでしか、世界を変えることはできない。それは僕らひとりひとりの問題なんだと思う。だから、僕らのこと、信じよう、僕らの力を信じよう」

 と、そうやって歌い出したのが、おそらく、ビリー・ブラッグにとって最高傑作となるアルバム、"Mr. Love and Justice(ミスター・ラヴ&ジャスティス)"の巻頭を飾る名曲、"I Keep Faith(アイ・キープ・フェイス)"だった。「僕は信じ続ける」というこの曲の大意を要約すればこんな感じだろう。

「どうしようもなく苦しくて、逃げ出したいと思ったとき、自分の心の奥底にある本当の気持ちに耳を傾けようよ。そこに僕がいる、君のそばに。僕は信じている、君のことを」

 あのとき、この曲を生で聴きながら、不覚にも涙腺が潤んでしまったんだが、それに輪をかけたのが、あまりの人の多さと感動で撮影を断念した、この日、最後に単独でステージに立ったシーダー・ストリート・コートヤードだった。たまたまここで再会したWorld/Inferno Friendship Society(ワールド・インフェルノ・フレンドシップ・ソサイエティ)のメンバー曰く、「ビリーはすでに伝説よ」というのだが、ビリーといえば、コックニー訛り(ロンドンの下町訛りで、 日本で言えば江戸っ子のような感じ)丸出しの、アメリカからすれば「イギリスの田舎者」にも見えるはず。それなのに、彼がアメリカでも我々の想像を遙かに超えた評価を獲得しているのがわかる。しかも、この日はデビュー当時の名曲「ニュー・イングランド」が飛び出してオーディエンスの大合唱が始まったり、懐かしささえ感じる「アクシデント・ウェイティング・トゥ・ハプン」が歌われたり... と、昔からのファンにはこれ以上はないほどに嬉しい選曲だ。そして、締めくくりは、前述の"I Keep Faith(アイ・キープ・フェイス)"。このとき、50も過ぎた筆者が、恥ずかしげもなく涙を流すほどの感動を受けていた。

 そして、購入したのが"Mr. Love and Justice(ミスター・ラヴ&ジャスティス)"。バンド・ヴァージョンとソロ・ヴァージョンが入っている2枚組なんだが、このアルバムは、間違いなく彼の最高傑作だ。その昔、彼にはエルヴィス・コステロに匹敵するなにかを感じていたんだが、そんな才能が見事に結晶となってここで実を結んでいるようにも思える。同時に、彼の持つ影響力が、どこかで彼のあこがれだったジョー・ストラマーにも匹敵するようになっているのではないかとさえ思ってしまった。それが今回のビリー・ブラッグ体験。四半世紀を経て、まだ自分はビリーのファンであることをひしひしと実感したように思えるのだ。


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"Shining Bright: The Songs of Lal & Mike Waterson" (iTunes)
"Where Have All the Flowers Gone: The Songs of Pete Seeger (with Eliza Carthy)" (iTunes)
"Seeds: the Songs of Pete Seeger, Vol. 3 (with Pete Seeger, Billy Bragg, Ani DiFranco & Steve Earle)" (iTunes)
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