バスク・レポート (9th to 21st Jan '08)
-outro-
無名人との交流
帰りのビルバオ空港にて。アリタリア航空の小型機に搭乗した。スカイチームに属する航空会社は、けっこう機体トラブルで遅れたり、サービスが悪かったりして日本人には避けられがちなのだが、ヨーロッパをメインに移動する者にとっては、魅力的な路線が多数ある。この日も、少しばかりの足止めをくらって、ミラノ・マルペンサでの乗り換えに間に合うか…といったところだった。ざわつく機内で、たまたま通路を挟んで隣に座った人が日本人で、ちらっと話をすることができた。
「バスクは旦那の故郷なんですよ。あなたはひとり? 観光ですか?」
「ええ、まぁ友達のミュージシャンのところに泊まってました」
「あれやこれや…」
「これやあれや…」
いつの間にか「マルペンサの乗り換え、間に合ったらいいですね」と、話は終った。時間ギリで着いて、乗り換えカウンターへ一緒に移動。旦那さんが隣に来て、しばらくの沈黙の後「ミュージシャンって誰ですか?」と訊いてきたので「カキ・アルカラゾって人なんですけど……知ってます?」と応えれば、驚いた調子で「ネグ・ゴリアック!?」と返って来た。「え?」と言う間もくれずに「コルタトゥにネグ・ゴリアックはハマってたよ」と熱く語りだす。トーキョーとオーサカ行きという隣り合わせのカウンターでの待ち時間、当時を知る地元の人とのちょっとしたやりとりが、この旅をさらに魅力あるものにしてくれた。深く掘り下げなくても、たまたま会った人がふと浮かべる表情や声が、バスクを語っていた。こんなところで、というのが嬉しい。この感覚、解ってくれます?
彼の顔を見ても、いわゆるバスクの先住民の顔ではない。先住民の顔は『白雪姫』に出てくるドワーフのような顔をしている。歳を重ねた人しか目にしていないので、そう思っただけかもしれない。あるいは、日本と同じように子供達は街へ出て、溶け込んでしまっているのかも。ひとつ違うのはウチらのように平和ボケしていないということ。裏路地にはETAという文字が書かれていたり、赤い星が掲げられていたりと、日常の中にサインが刻まれているのだ。
確かに、思いつきで行けるところではないし、あまりメジャーでもない。しかし最近になって、雑誌の『Pen』もバスクを大々的に取り上げているし、『BRUTUS』でも同様の動きがあるとかないとか。ただ、オルタネイティヴなシーンとは少し離れた、あくまでも観光を中心に扱ったものだ。僕が記したことは、ほんの少しだけ町を歩いて、落書きが氾濫している場所に足を向ければ見ることができる。しかもガステッツァの人たちは、優しく接してくれる。これを読んだことがきっかけで、気軽に訪ねるようになってくれれば嬉しい。世界の見えかたが変わるだろうから。 |
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