buttonバスク・レポート (9th to 21st Jan '08)

サーフィン・カオス、ヴィクティム・カオス
@ボンベレネア、トロサ
(18th Jan'08)


火の手があがる消防署
bomberenea
 起きぬけに洗濯機を回し、コーヒーを片手にカウチでくつろいでいると、「次に行くガステッツアはとんでもないよ」と言われた。「マジすか?」とは言ったが、今までがとんでもなかったこともあって、心の中では「いやいやいや、マサカ!?」といった感じ。疑っている訳ではないけれど、さらに上の凄さなど想像できなかった。

 それで行ってみたらば、手ぶらで一日中遊べるような施設ですよ。ちゃんとしたベッドルームもあって、また来るときには宿泊(もちろん、手伝いなどもやりつつ)させて欲しいくらいの充実っぷり。たくさんの遊びを提供してくれるところだった。詳しいことは別項にまとめているので、そちらを参照してください。

bomberenea ちょっとした施設案内を終え、ヴィクティム・カオスはリハへ。一方で、ジャポニクスのボスは「ここでマヌ・チャオもやったんだ」と思い出話を語りだす。それにしては、ちんまりとした器材と照明しかなく、広いわけでもない。PA卓など、宅録程度のものしかない。なのに特別視されるのは、小さくともそれだけ重要な拠点であり発信基地、つまりは開けた「アジト」として唯一無二の存在で、地べたに生きる者にとってはいつの日にも帰ってきたい場所なのだ。もとは消防署だったところが、叫びの火種をバラまいているのもなーんか、ニヤリとしてしまう。

 10年とそこそこの間に様々な伝説を残してきた場所でも、ヴィクティム・カオスは緊張知らず。むしろガステッツァという特異な環境に親しみを覚えはじめたといってもいい。整えられた設備ではない手作り感がリラックスした空気を生むのだろう。先日対バンしたロボ・エレクトリコのメンバーも普段着で訪れては飲んだくれ、フロアに漂っている。盟友となったバンドの歓迎を受けて、ここでもまた溌剌としたライブを繰り広げる彼らは、バスクのストリートそのものであるガステッツァの最上級であるボンベレネアに着火したのだ。

surfin kaos このツアーで見てきたバンドの中で最も日本人受けしそうなのが、この日出演した無骨なイボン(Dr.)、お茶目なギリト(B.)、男前なコルド(Vo.&G.)からなる3ピース・バンド、サーフィン・カオス。ファッションからも見てとれるように、適度な裏原宿感覚も好まれそうだ。そもそもはホーンなどを交えたラテン・ミクスチャー勢によって、遥かバスクへと目を向けるようになったのだけれど、現地で主流となっているのはラテンという独自色を排したシンプルなロックンロールのようだ。バスクのシーンは愚直なまでにストレート。押さえつけられた歴史に基づく辛辣な歌詞に押されまいと、自然な流れで力強いガレージやパンクでたたみかけたり、骨太なハードロックが選ばれたりするのだろう。ひとつのジャンルでもスタイルとしてでもなく、生き様にみあった重さを求めているような感じがするのだ。

surfin caos その勢いに気おされて褒めるわけではないけれど、バンドとして全くほころびがない。最近日本でやたらと青田買いされて来日→いつの間にか解散→新バンド結成を繰り返すUK産インディー周辺とは違う。出演決定ののちに解散してキャンセル、なんてことがいつだかのフジであったが、なるべくしてなったんじゃないか、と思っている。

 とにもかくにも、バラバラな個性を持ちながらベクトルはしっかり同じ方向を向いていることが「何か」を伝える力になるんじゃないだろうか。だからこそ、オーディエンスはサーフィン・カオスにかぶりつく。ギラついた目の訴えを感じとり、とにかく叩き、引っかいて強烈なレベルを叩き付ける。しなやかな動きで他のメンバーと絡み、視線が移ったところでふたたび行動を起こすという具合に、業師が小さなステージでせめぎあい、魅せ場をリレーしながら攻め込んでくる。がなって跳ねて、楽器をキリキリ泣かせて、マイクもしゃぶる。ぐしゃっと圧し固められた拳のようなロックンロールは黒く光り、オーディエンスの体を折っていく。まだまだ世界に転がっていることを教えてくれたのだった。
bomberenea

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