バスク・レポート (9th to 21st Jan '08)
ベリ・チャラック、ヴィクティム・カオス @ ガステッツァ、アンドアイン(11st Jan'08)
パンクなメタルに汗をかく
前から後ろまで、ぎっちりと人で埋め尽くされている。ベリ・チャラック側は、この日のライブを実現させるためにギリギリまでシークレット扱いにしていたという。300人ほどしか入らないこの場所では、1000人規模で人を集めてしまう彼らとのバランスがとれない。ということはかなりのプレミアチケット、高感度のアンテナを張るオーディエンス達がここにいるということか。
そんな中に飛び出していったのが、名古屋の若手バンド、ヴィクティム・カオス。普段の彼らは名前とは裏腹に笑顔を絶やさない青年なんだが、さすがに初の海外、それもライブとあって緊張と興奮の入り交じった表情をしている。遠く離れたバスクでの知名度は……なんと、あった。前々日ぐらいから本人達の知らないところで(!)メディアが取り上げていたようなのである。それでも、東洋人=中国人というイメージが定着しているのがバスク。いたるところから「チーノ?」(中国人?)と聞こえてくる。
駆け引きの存在しない、がむしゃらに突っ走ったライブ、と言ってもいいだろう。おそらく、彼らに問うてみても「覚えてないっス!」の言葉が帰って来そうだ。3ピースが叩き、弾く様は必死そのもの。バスク語のたどたどしい言葉を投げかけたら、あとはゴリ押しのパンクロックに乗せて前へとしゃしゃり出る。前列はあっさりと掴んだ。あとは奥まで染み渡らせるだけ。アウェーをホームに変えるべく、たたみかける。コール&レスポンスが成功し、彼らはひとつの結果を得た。そしてライブ終了後、いくらかのピックとドラムスティックが、ステージへと押し寄せるオーディエンスの手に渡った。
セットチェンジを挟み、この日の目玉であるベリ・チャラックがステージに姿を見せた途端、空気が一変する。サウンドチェックをしているだけなのにもかかわらず、ハコ内は冷や汗が出るような緊張感が充満しはじめている。当然と言えば当然なのかもしれない、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのビルボ(スペイン名:ビルバオ)公演に集まった大勢のオーディエンスをわやくちゃにしたバンドなのだから。
ベリ・チャラックはおかしなところだらけだった。口に合わなかったわけじゃなく、むしろその逆。あっさり惚れ込んだ。そのうえ、メタルを敬遠する人にとって、入り口になるやもしれない可能性を秘めていた。メタルといえばコテコテに武装して押しつぶすものだと、勝手ながらそんなイメージを持っていたのだが、彼らはそれをやすやすとひっくり返す。典型的なスタイルで迫るのはベースのルビオのみ。だらりと垂れ下がった長髪は期待通りに振り回され、留まることを知らない。
だが、あとの二人から放たれるのは徹底されたシンプルさ。メタルのドラムスといえば、様々なタムを並べたくり、タム回しの技もライブのいち要素として組み込まれているほどに派手なはずだ。ドラマーの上半身がまるまる見えるほどにそぎ落とされたドラムセットなんて、誰が想像するものか。しかし、その足りないはずのドラムセットからは、けたたましい咆哮が生まれている。ポロシャツを着用したヴォーカル/ギターのゴルカが持つのはテレキャスターで、シンプルの極み。なのに、容赦なくザクザクと響いて、どう転んでもメタルとしか言いようの無い音像が浮かび上がる。触るものすべてを切り刻むような危なっかしさは確かに生まれているのだ。
ひたすら轟音に揉まれ続けたが、いっこうに胃もたれする気配はなく、いつのまにかのめり込んでいる自分に気づく。これまたわっかんねぇなぁ、いいかげん疲れてもいい頃じゃないかなぁ、と思っていたところに、どこかで聞いた反復するリフ……んぁ、ニュー・オーダーの"ブルー・マンデー" か!? この一曲で、ようやく胸のつかえがとれる。やたらとシンプルな構成だったこと、細身のパンツを履いていたこと、まるで飽きがこなかったことなど、すべての線が一点で交わる。皮一枚を剥がせばパンクやニュー・ウェイヴが顔を出す、そんな絶妙なブレンド感覚が彼らの強みであり、もっとも得意とするところなのだろう。
彼らのライブで汗を流したのはなにもオーディエンスばかりではない。ライブが終わって一服、窓のないコンクリート造りの壁にもたれかると、Tシャツはぐっしょりと濡れたのだった。 |
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