buttonバスク・レポート (9th to 21st Jan '08)

-intro-
バスクの地べたから
basque
 スペインとフランスの国境にまたがる地域で、主にピレネー山脈の西に位置する地域をバスクという。山々に守られて、攻め込む兵隊を退けながら文化を守ってきたそこは、ラテン語の国々に囲まれているにも関わらず、他のどの言語とも似ていない独自の言葉(エウスカラ)が未だに残っている。戦争は空の時代になり、ナチズムと結託したフランコ将軍率いるスペイン軍の爆撃をうけ、国にまつわる全てを取り上げられた。バスクの民は言葉では済まされないほど虐げられたが、心にはいつでも赤地に白い十字と斜めの緑が配された「国旗」を掲げていた。バスクで知らない者はいないアーティストであり、政治活動家でもあるフェルミン・ムグルザは、子供の頃にバスクの国旗が編み込まれた靴下を履き、見られないように折り返していたという。人に見られれば、どんな目に遭わされるかわからない……それは、去年の春に彼の口を通して直接聞いたことだ。

basque 現在は言葉を取り戻し、土産物にも国旗があしらわれるようになった。自治州としては認められているが「国」としてではなく、現在もバスク独立運動の政治犯などはスペインやフランスで拘留されていて、バスク領内の牢獄へと戻すように働きかけている。その旗印が、バスクの形をした黒い土地に赤い矢印が記されたトップの写真。去年のフジ・ロック・フェスティバルに出演した、フェルミン・ムグルザ・アフロ・バスク・ファイア・ブリゲイドのDJブース前に掲げられていたのも、このデザインがあしらわれた旗だった。

 ガステッツァ(gaztetxea)と呼ばれる、直訳では「不法占拠」となる場所は、その日本語の響きから連想される「近づいてはならない場所」のようなニュアンスは持っていない。むしろ、若者を中心に初老の人までもが集まる賑やかな集会所という雰囲気で、余ったスペースがあればキッチンと食堂を造り、書籍を揃えてバスクにまつわる簡素な図書館を造ろうとする。さらにあれやこれや……といろいろ書きたくなるのだが、ガステッツァを体験したことは別項で詳しく書く。この場所こそが本来のバスクであり、同時に特集の芯とすべきものだと直感的に感じたのだ。

basque そもそも今回バスクへ向かったのは、ヴィクティム・カオスという名古屋の若手ロック・バンドが、今までフェルミンやバンダ・バソッティを招聘してきたジャポニクスのサポートでバスクをツアーし、さらにカキ・アルカラゾ(ネグ・ゴリアックの中心人物)のプロデュースでアルバムを録音するというものだった。そのタイミングに合わせて、バスクの文化と音楽シーンを日本に紹介してくれないか、ということで声がかかった。実は、ラテン圏を中心にラディカル・ミュージック・ネットワークという、音楽の力を信じ、力の限りストリートの立場から訴えるネットワークを支えているのがジャポニクス。日本ではあまり知られていないバンドを呼び、ハコと共に手頃な値段でライブを企画しているプロモーターである。

 とにかく、ラディカル・ミュージック・ネットワークを支持しているのは、現場に生きる人間ばかり。世界規模の集会所として機能しているウェブ・サイト、レディオ・チャンゴに登録されているアーティストとその仲間こそがラディカル・ミュージック・ネットワークそのもの、と言い切っていいかもしれない。所属アーティストの歌詞を読み解けば、民族問題に政府批判など多岐にわたり、「ペンは剣よりも強し」ではないけれど、彼らは機関銃やミサイルの代わりに楽器と言葉を用いて真実を伝えることで大国に闘いを挑み、メディアが隠している物事を暴いていく。スピーカーを通した主張をなんの気なしに聞くうち、いつの間にか目からウロコが落ちて、そこに映る世界の色が変わっていったのだ。

 今回は、ガステッツァを中心に回ったツアーを通して、旅行代理店のパンフレットには絶対に載らないことを中心に紹介したいと思っている。
bomberenea(gaztetxea)

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