朝霧ジャム : イッツ・ア・ビューティフル・デイ @ 朝霧アリーナ (7th Oct. '07)
- キセル- 青空の下の浮遊感
前日の夜、星空が広がっていたおかげで2日目は朝からいい天気。顔を洗うのに並んでトイレに並んでテントで片づけしていたら、もうキセルの時間が迫っていた。 サウンドチェックの音を聴きながらムーンシャインヘ向かっていると、途中で曲が始まる。それでも特に急ぐ気にならないのはこの天気と雰囲気のせいだろう。
「おはようございます。気持ちいいっすね」と一曲目を終えて一言。暑いくらいな午前中の日差しに青い空と白い雲。3人が立つステージの向こうの空に浮かぶ、様々な色のパラグライダー。ステージの向かいには富士山。こんな絶好のロケーションでのライブが気持ちよくないはずがない。朝イチの出番と、静岡県側から見る "裏富士"を目の前に、「まぁ、僕ら前菜みたいなもんですけど」と謙遜してから"夢のいくら"が始まる。いや、これは朝から充分お腹いっぱいになれそうだという予感もして、ぽわぽわとした曲調に誘われるようにステージ前方へ進んだ。
新曲"枯れ木に花"のあと、細野晴臣のカバー曲が続く。「風が吹いたら僕は行くよ 東の空へ」の歌詞が、上空のパラグライダー達に重なる。さっきからこの景色にこの音楽がたまらなくハマるんだよなあ。
来年早々に出るアルバムより「これが一番暗い曲です」という前置き付きで新曲へ。君の犬が死んだ朝、といういかにも暗い歌い出しに周りからも笑いが起きる。ところが次第に笑いが固まってしまうくらい、曲が沁みてくるのだ。君に会えないように君の犬にも会えない、という遠まわりの寂しさが目の前に広がり、や りきれない悲しさが込み上げて涙腺がゆるんだ。 「全員死ぬっていう歌でした(笑)」とまた笑いを誘っていたけれど、全員死ぬような暗い歌なのにのどかで優しい。アルバムからさらに続けた"春の背中"もしかり。リリースがとても待ち遠しくなった。
最後の"ギンヤンマ"に至るまでずっとナチュラルでマイペース。キセルのライブは今回初めて見たのだが、気負いもせずかといって手を抜いているわけでもなく、ふわふわとしたちょうど良いゆるさを持ったアーティストだった。「ありがとうございましたキセルでした。ありがとう。また会いましょう」と、きっとど こへいってもこんな調子で心を掴んでいくのだろう。鮮やかな景色と心地よい余韻がいつまでも残っていた。
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report by Misa Takimoto and photos by hoya
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mag files :
Kicell
青空の下の浮遊感 (07/10/06 @ Asagiri Arena) : review by MIsa Takimoto, photos by hoya
photo report (07/10/06 @ Asagiri Arena) : photos by hoya
photo report (06/06/05 @ Shibuya O Nest) : photos by izumikuma
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