朝霧ジャム : イッツ・ア・ビューティフル・デイ @ 朝霧アリーナ (6th Oct. '07)
- ヘクスタティック - 目と耳とヒフがそろってHappy Happy Joy Joy!
寒い! 辛抱たまらんくらい寒い!あまりの寒さに頭に何かのせないと脳みまで凍ってしまいそうなヒンヤリ感。そんな今年の朝霧のシベリア気候を、まるでコパカバーナに変えてくれたのがボーイズ・ノイズ、そしてニンジャ・チューンの大御所、ヘクスタティックである。スチュアート・ウォーレン・ヒルの家族に不幸があったそうで、ロビン・ブランソン一人でのDJingとなったわけだけど、そこはトップ・クリエイターのプロ魂が炸裂した、圧巻のステージを見せてくれた。
「映像の魔術師」なんて、悲しいほどダサいキャッチをつけられてしまうことも多い彼らだが、そう呼ばれてもしかたないほどに、その卓越した映像センスは観るものを惹きつける。音楽と見事にシンクロした“Timber"の映像が絶賛を持って迎えられた10年前、そんなに騒ぐほど? とタカをくくっていた自分は、その鮮やかな仕事ぶりと、垣間見えるメッセージに、まるで映像の世界の住人になったかのような錯覚さえおぼえたほどだった。
そして今でもその鮮烈さは色あせないどころか、その多彩なミックスメディアぶりはさらに進化しつづけているようで、ブレイクビーツ→エレクトロニカ→ロック、と、コロコロ変調してゆくリズムに映像が見事につむがれる。その様子はまさに職人芸であり、"When Robots Go Bad!"の近未来的な光の洪水でオーディエンスを狂わせ、“Tokyo Traffic"では背後にAKIRAの金田がスクリーンを暴れまわり、山の夜を一気にヘクスタティックの世界に染め上げる。音が耳を越え、全身のヒフで感じられる。一人だろうが、寒かろうが、山ん中だろうが、パーフェクトなオーディオとビジュアルが融合したショウは絶品。ベックとプロディジーのマッシュアップは反則って感じだったけれど、お約束、ナンシー・シナトラの“These Boots are made for Walkin"で熱気は最高潮に達し、そのまま怒涛の後半・ロック・クラシックス・ミックスのオンパレードになだれ込む。クイーンの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」のリズムにあわせて、皆がが両手を高く掲げ、アホのような笑顔で、ドンドン・パーン! ドンドン・パーン! と手拍子を繰り返す光景は、某国のマスゲームを彷彿させるけれど、もちろんアレよりは大分ピースフルで、絶対的に違うのは、楽しいということ。
ナツカシ映画TORONに、デイヴ・リー・ロス(若かりし頃)の顔がチラ見えする、ナンだこりゃ映像もsoナイス! ダサイ&悪趣味一歩手前のかっこよさはさすが。友人と爆笑しながらドンドン・パーン! をアホほど繰り返し、バカになってしまいそうだったけれど、「マ、いっか」と思えるほどの楽しさ。そんな風に感じられることはなかなか無かったりするわけで、「そう思えるだけでも価値あり。朝霧もヘックスも凄くない?」なんて納得したりするのである。ただ、これは明らかに野外だからで、空気の淀んだ、ちっちゃなハコだったら、ここまでの開放感はないだろう。そして、この時はまだ、朝霧のクライマックスは、実はここから始まることも知らなかった。ドンドン・パーン! に侵されアホ化していた脳では、他のことなんて考えられなかったからである。
3回もアンコールにこたえ、フィリップ・シーモア・ホフマン似のロビンはステージから去っていった。残念ながら♪Happy Happy Joy Joy ♪は、なかったけれど大満足のパフォーマンスで、2時間前まで凍えていたのがウソのように汗だく。すっかりTシャツ姿になっていたが、まわりの人達も白い息を吐きつつ、信じられない薄着という不思議な光景が笑えた。そして、のどはカラカラ、お腹も空いたところでキャンプサイトに戻ってビール&バーベキューという、塩分と脂肪分を炭酸で意に流し込む作業にこれまたアホのように没頭。耳にはさっきまでのドンドン・パーン!の余韻、舌には美味、上を見上げれば星空。なんというシアワセ。ここでハッ!と朝霧の醍醐味に気づくのである。音楽とキャンプのベストカップルを五感で堪能した幸せなであった。
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report by mimi and photos by saya38
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