button朝霧ジャム : イッツ・ア・ビューティフル・デイ
@ 朝霧アリーナ (7th Oct. '07)

- ザ・ベイズ - 未知との遭遇にハズレ無し - -
The Bays
 明るい出店とのコントラストのせいか、それとも日没を経たせいか、そこは不思議な空間のように感じられた。毎年のように、「仕事とか、やらなきゃならんことなんてどうでもいい!」と言わせるゴキゲンな会場なのに、彼らの開演を間近にしたレインボーステージあたりは、緊張感を帯びているかのような静けさに包まれていたからだ。

The Bays リリース音源は無く、リハーサルも、ステージ上の筋書きも無いバンド、ザ・ベイズ――そんな情報と、ライブを体験した人の感想を頼りに、僕はステージへ向かった。縦横無尽なプレイが魅力の人たちなのだろうか、それとも、そもそも楽器を手にすらしていないのだろうか……、想像は膨らみ、同時に、未知を前にした緊張があった。  開演時間となった頃、ピッチを変えたうさんくさい声で「演奏されるものは、今日、ここでしか存在しません。あなた達オーディエンスによって創られる、オーディエンスとベイズとの会話です」といった内容がスピーカーから放送された。それを受けて、ピリピリしていた前方の空気が一体を経て氷解する。そしてシンバルの音がフェードイン。ベイズが、始まる。

 メンバー4人は、ほぼ横一列。その陣形こそ、彼らの音を大まかに表しているといえるだろう。ベース、ドラムセット、シンセ、そしてサンプラー等のマニピュレートという4つの役割を受け持つメンバーが、それぞれの音をそれぞれがブレなく出し、1つのまとまりとしてアウトプットする。ついに知ることとなったベイズの正体、その第一印象は「整然」という言葉そのものである。あまりの正確さに、まるでレコードを聴いているかのような錯覚を覚えた。

The Bays だが、耳をじっくり傾ければ、それが誤りであることは明白。例えば、ループされたボイスサンプリングへ追随するビートが意図的にズラされるアイディアや楽器間の巧みな重なりなんかもそう、コミュニケーションあればこその展開からは、音の1つひとつがきちんと「リアルに生まれているもの」だと分かるのである。

 4つに分かれていながらも、互いの神経細胞を刺激して四肢とする生命体、なんて言うと大げさかもしれない。けれど、スピーカーから流れ出てくるのは統一感を損なうことなく、少しずつ、だが確実に表情を変えながら膨らんでいく。そんな盛り上がりは、絶対にレコードへ収められるものではないだろう。近付けば4つで遠くからは1つ、そんなマスゲームか騙し絵のような印象のバンドだったが、肌で感じた自分は面白さより興奮が先に湧き上がっていた。それはきっと、でっかい音が気持ちいいというようなシンプルな感動と似たようなものだろう。

 「なるほど、こういう自由もあるのか」というのが、このステージを経て思ったことだ。全くの未体験のままに挑んだ当初は、彼らを楽譜にも写せないようなヤンチャなのだろうと想像していた。だが実際にベイズが披露したものは、ブレの無い職人気質の、けれども広がりのあるひと筋のグルーヴだ。

 ひたすらに一塊を力強くこねあげ、徐々に大きくしていく。ベイズというバンドが90分弱を使って行ったのは、たったそれだけのこと。しかし後々考えてみると、どのアクトよりもそのシンプルさが私を揺さぶってくれたわけだ。次回はきっと、さらに緊張するのかもしれないな。
The Bays


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