buttonコネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007
@ インヴァレアリー・キャッスル (31st Aug to 2nd Sep'07)

ホット・チップ : 〜無意味にこそ意味がある〜


 正真正銘のブサイクをブサイクと認めたくないこの感情を、自分のなかでどう解釈したらいいのだろうか? ブサイクはブサイクでいいじゃないか。そう、あの残念としか言いようのないブサイクという夢を全て叶えてくれるのが、ホット・チップであるのだけれど、私はそれを認めない。死ぬほどカッコいい。何となく連想できたLDCサウンド・システムとの関係だけではなく、バッドリー・ドローン・ボーイ、キング・クレオソート、ジ・エイリアンズとジャンルや年代の垣根を無視したタッグがこのホット・チップから目を離すことができなくなった決定打となっていた。待てど暮らせど来日する気配もなく、このフェスでの初体験に胸を膨らませていたら、何とな……私が渡英するのと入れ違いでバンドとして初めて日本の地に立っていたのだった。

 とうとうフェス最終日も日が落ち、じっとしていたら足下から身体の芯まで冷やされてしまうほどの寒さがインヴァレアリー城をまとう。メイン・ステージでは大トリのビョークが磁石のように人を総ざらえしてしまい、遠くから数秒遅れで大歓声がこだまし、闇には緑色のレーザー光線が放たれ、さらに照明のいくつもの色が空を染める。その光景を尻目に最後に向かったのは、再び閑散とした奥地のマニキュアード・ノイズ……何年か越しに観ることができる念願のホット・チップを観るためだった。そこにはこれまで私が3日間観てきたアーティストのオーディエンスとはひと回りくらい平均年齢の若そうなピチピチした女の子や、小洒落た男の子達でいっぱいで、隣にいた女の子はホット・チップが登場するまでにまだ1時間ほどあるのに、狂おしく踊りながらたまたま隣にいた至って冷静な私に、もうっ、本っ当にホット・チップが大好きなのっ、もうっ、どうしようっ! と今にも失神してしまいそうな勢いで、押さえられない胸の衝動を一方的に打ち明けてくるのであった。

 ステージにはシンボル・マークとなっているシンプルに組まれた5台のマシーンが横一列に並べられ、来るべき時を待つ。オーディエンスを煽ることもなく、飄々とステージに現れる5人のいけすかない奴らからは、尋常ではない重みのあるオーラさえ感じる。赤いセルの大きなメガネのようなポップさは一切なし。所定位置につき、"アウト・アット・ザ・ピクチャーズ"が沈黙を破った瞬間、えっらいモノを観てしまったという焦りに似た感覚が襲ってきた。1音に対する、1音と1音をつなぐコンマ何秒の空白に対する5人の執着心たるや……。目に飛び込むワンカット、ワンカットがハードボイルド小説のように、至ってシンプルな表現で脳に収めていくのだけで精一杯だった。"アンド・アイ・ワズ・ア・ボーイ・フローム・スクール"で眼鏡をキラリとさせ、高く構えたギターの弦を弾きながら、ようやく声を出したアレクシスは一寸の表情の変化も見せず、吟詠家とか能楽師という類いの、ある道を究めた者が見せる恍惚とした表情を浮かべていた。恐るべし子供達。5人がそれぞれのマシンを持ち、ちっちゃいつまみを1ミリ回すか回さないかの動きしか見せないし、目に見える大部分が計算し尽くされた上での無駄に見える。が、しかし……違う。それは間違いだ。目に映る無意味に見えるものはすべてカモフラージュで、すべてのことに意味があるのだ。無ではなく素……それを肌で理解した瞬間、ホット・チップに末恐ろしささえ感じた。

 ここ数年、国内外での怒濤のツアーをこなしている傍らで、コンスタントに曲作りにも取り組んでいるようで、遠くはない日にリリースされるのであろう新曲も多く聴くことができたけれど、あれは最終的にどんな形に整えられるのかが楽しみでしょうがない。でも、その完成されたCDやレコードを買うお金があるのなら、私は断然、たった1回でも、ホット・チップのライヴを観ることを選ぶに違いない。客電がつけられ、ご主人様のいなくなったステージには5台のマシンがそっと立っている。ほどなくして撤収作業が始まるもなかなか動こうとしない人でテントはいっぱいだった。ステージからこちらに向かってライトが点されると"コネクト・ミュージック・フェスティヴァルに来てくれたみなさん、本当にありがとう。来年もここで会いましょう"……テントにいた人に告げられたアナウンスに、笑顔と来年への期待とフェスが終わってしまうことの寂しさが入り交じり、再び大歓声がわき起こった。


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Connect Music Festival 2007 (intro)



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