button Flow Festival @ Gangwon-do, Korea
(31st Aug. - 2nd Sep. '07)

- photo reports & reviews -

Day2-9.1 Fri
Oh! Brothers
photos by nachi
Oh! Brothers
Oh! Brothers Oh! Brothers
「コミックバンドでも大木凡人でもないらしい」

 グレーのスーツにサングラス。衣装だけでなく、足並みの揃った演奏も印象的だったのがオー!ブラザーズだ。彼らは国内のライブのみならず、2005年にはフジロック、レッドマーキーへの出演を果たすなど精力的な活動をみせている。開演前からステージ前に集まっていた人の多さが韓国での人気の高さを物語っていた。

 前評判が良かったこともあり、オー!ブラザーズは個人的にも楽しみにしていたバンドのひとつだった。この期待感にバンドが応えてくれたのは演奏開始早々のこと。音が鳴った途端にタイムスリップをしたのかと錯覚した。ブラウン管の中で見たことがあるような世界が、突如目の前に広がったのだ。ミドルテンポのロックンロールにテナーサックスの官能的な音色が小気味良く絡み、どこか胡散臭い笑顔がステージ上に溢れる。表情を包み隠す黒のサングラスをあしらった男たちは、テレビの世界からそのまま飛び出してきたような空気を漂わせていた。その独特のムードは演奏面でも裏切らない。息の合った巧みなコーラスワークと共に、フロントに立つ大木凡人そっくりのボーカルが良い声を聞かせてくれる。軽くハネたリズムを聴かせるバンドサウンドも空気に馴染んで気持ちが良い。

 小気味良いロックンロールに巧みなコーラス、見られることを意識しているであろうおちゃめな風貌。どこを切り取っても楽しめるのがこのバンドの良いところだろう。無難な安定感の中に収まってしまっている印象を受けたのが唯一気になったところか。また見る機会があれば、さらに一皮むけた姿を見られることを期待したい。


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Cocore
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Cocore
Cocore Cocore
「韓国ロックの真髄に触れた瞬間」  夜もすっかり更け、薄いピンクのライトがステージを照らしている。光が射すことによって、より深さが際立つ闇の中にココアの姿があった。ドラム、ベース、ギターのリズム隊をバックに従え、フロントを努めるウソンが物憂げな表情で立っている。これからどんな演奏が繰り広げられるのか。この時点ではまだ何も予測できなかった。

 演奏開始と共に彼らのテンションはピークに達していた。スピーカーから爆音で鳴らされるノイジーなギター音が闇を劈いたかと思うと、荒れ狂うドラムのリズムが空気を震撼させる。危うさと悲愴感が入り交じったサウンドはニルヴァーナを連想させ、行く先を見失い混沌としたジャムセッションはサイケデリックな香りをプンプンとさせていた。ココアの演奏が始まった途端、陽気に踊っていた人も会話をしていた人も全ての行動をやめ、食い入るようにステージを見始める。彼らの叫ぶ言葉は分からない。だがなぜか体はその言葉を理解しようと反応していた。聞き流すことのできない音、そして言葉が夜の闇の中を駆けていく。目はステージに釘付けとなり、スピーカーから発せられる音以外何も耳に入っていないことを感じたとき、彼らの世界にのまれたことを実感した。

 過去にはインドの弦楽器であるシタールの奏者もいたというココア。当時の音源がまた格好良いのだが、かといってシタール奏者が抜けたことによりパワーダウンした様子は見られない。バンドとして最もスタンダードな構成に至ったことにより、また一味違う魅力を引き出したようだ。彼らにはナスティヨーナと同じく過去にインタビューを行っている。そのときの様子はこちらで見られるので、じっくりと彼らの魅力に触れたい人には合わせてチェックしてもらいたい。


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Tabloid Play
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Tabloid Play
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「日韓の架け橋は彼らなのか?」

 韓国のインディーズバンドがズラリと顔を揃える中、日本からも3組のバンドが出演していた。そのうちのひとつがこのタブロイド・プレイだ。「ウィ・アー・タブロイド・プレイ・フロム・ジャパン!」。この一言から彼らのライブが始まった。

 異国でのライブとはいえ、特に物怖じした様子は見られない。物怖じどころかこの状況を楽しんでいるようだ。バンドの音が噛み合っていくと、ボーカルのアヴェケンも徐々に激しく動き始める。が、しかし天気はあいにくの雨。その雨対策として4本足のテントが4つステージに設置されていた。ただでさえ大きいとはいえないステージがテントの足によってさらに小さく見える。ステージ上のメンバーもこのテントには随分と苦戦していたようで、シールドがテントの足に絡まないよう足もとを気にする様子が多々見られた。だがそれでもタブロイド・プレイの面々はめげることなく勢いづいていく。途中韓国語の本を片手にMCをはさんだ。彼らの話す言葉は韓国語が分からない人間でも分かるほどたどたどしく、その光景に韓国のオーディエンスは声をあげて笑い始める。この笑い声がバンドの勢いにさらに拍車をかけたようで、その後は終始笑顔を見せながら楽し気なライブをみせてくれた。

 天候にこそ恵まれなかったものの、サービス精神たっぷりのパフォーマンスで中だるみなく終始楽しむことができた。後で話を聞くと、韓国でのライブはこれで4回目になるらしい。国内でのライブがないと笑いながら嘆く彼らは、今後日韓を結ぶ音楽の架け橋になっていくのだろうか?


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The Rock Tigers
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The Rock Tigers
The Rock Tigers The Rock Tigers
「キムチビリーって知ってるかい?」

 「俺たちがやっているのはキムチビリーなんだよ(笑)」。ビシッとキメたリーゼントを誇らしげに見せつけながら、豪快にそう言い放ったのがロック・タイガースのギタリストだ。韓国版ロカビリー=キムチビリーとは安易な方程式だが、愛嬌があり思わず笑ってしまう。

 ロック・タイガースはメインボーカルを兼ねるギタリストと、抜けの良いハスキーボイスを聞かせる紅一点、女性ボーカリストをフロントに据えたロカビリーバンドだ。連なるリーゼントの山はうんざりする程男臭いのだが、それゆえにツートーンのボーダーシャツと赤のベレー帽に身を包んだ女性ボーカルの存在が際立っていた。挑発するような仕草で悪そうに歌ったかと思うと、ときには少女のように無垢で楽しそうな表情も見せてくれる。華のあるフロントだが、彼らはそれだけのバンドではない。忘れてはいけないのが、寡黙ながらも後方で他を寄せつけない雰囲気を醸し出していたウッドベースの存在だ。そのボディにはメラメラと燃えさかる炎の柄がペイントされ、そこから発せられる野太く力強い低音は間違いなく“キムチビリー”サウンドに欠かせないものだった。

 悪そうに、軽快に、そして何より楽しそうに彼らは演奏をする。フロー・フェスティバルの小さなステージでは見られなかったが、大きな会場ではステージにアメリカンのどでかいバイクが登場することもあるのだという。いくら年をとっても大人にはなれない不良たちの音楽には、ありったけの遊び心が込められているようだ。見終わった後すぐにもう一度見たくなる。ロック・タイガースとはそんなバンドだ。


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Cabinet Singerlongs
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Cabinet Singerlongs
Cabinet Singerlongs Cabinet Singerlongs
「韓国版フォークからも昭和の香りが……」

 一体どの年代から飛び出してきたのだろう。アコーディオン、アコースティックギター、ウッドベース、ウクレレから構成されるキャビネット・シンガロングスを見た第一印象がこれだ。パンクキッズを中心に、比較的若い世代が集まったイベントの中で、彼らの存在……、いや服装は少々浮いているように思えた。日本のフォーク全盛期の頃からビジュアルだけカットしたような風貌なのだ。とはいえそんなビジュアルだからこそ期待してしまうものもある。

 3本の弦楽器が温かみのある素朴な音色を生み出し、そこにそっとかぶさるようにアコーディオンが鳴らされる。弾力を感じさせる柔らかなサウンドが辺りに響き始めた。木々に囲まれた会場には、キャビネット・シンガロングスの音がやけにはまる。彼らのバンドサウンドを色に例えると、それはセピア色だろうか。現代にはない華のあった時代を感じさせ、懐かしさや哀愁の念も入り交じっている。後半になるとウクレレのメンバーが楽器をトロンボーンに持ちかえた。太く伸びやかな音は、ますます彼らの世界観を確立させていく。見る人の表情は演奏が進むにつれ穏やかなものとなり、和やかな空気が周囲を包んでいった。

 素朴ながらも確立したバンドスタイルと実力を備えていたこのバンド。MCごとに沸き上がる歓声が彼らの人気とポテンシャルの高さを示していた。韓国にはこんな音楽もあるんだぜ、キャビネット・シンガロングスの音はそんなメッセージを感じさせる。そしてその音から漂っていたのは紛れもなく昭和の香りだった。


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Rita
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Rita
Rita Rita
「ルーツには常に太鼓がある」

 韓国の伝統的衣装というとチマチョゴリがまず一番に頭に浮かぶが、リタの3人が身につけていたのはそれとは少々異なる。伝統的衣装風なのだが、丈の部分が短くカットされ腹部をのぞかせているなど、大胆で現代的な雰囲気を醸し出していた。そんな彼女ら3人が手にしていた太鼓だが、こちらは紛れもなく韓国に伝わる伝統的な太鼓だそうだ。銅は砂時計型をしており、その両端に皮がはられている。マイクのポジションは皮部分ではなく、銅にセットされていた。

 ステージに上がり一呼吸おいたところで演奏が始まった。神妙な面持ちでリズムを整えながら叩いたかと思うと、調和よりも個を全面に押しだして力強く打ち鳴らす。きちんとセットされていた頭髪も、混沌としたリズムの中で乱れ振りほどかれていった。太鼓の音の中に時折金物のパーカッションの音色がまじる。太鼓のリズムに自然と体が揺れ、時々脳の奥に響いてくるパーカッションの高音がやけに気持ち良い。ふと周囲を見渡すと両手を振り上げて踊り狂う欧米系のオーディエンスの姿が目に入る。そんな光景を目にしてか、乱れた髪の毛の奥で微笑みを浮かべるメンバーの姿がステージ上にあった。太鼓とパーカッションによる打楽器セッションがしばらく続くと、メンバーのひとりが親指ピアノをおもむろに持ち出す。原始的ながらも美しい音色がリズムの中に音階をつくり出していった。スキャットも織り交ぜることで打楽器パーカッションとはまた違う表情を見せてくれる。さらに後半になるとキーボードとコーラスのゲストを加え、イージーリスニングのような世界観を描いていくのだった。

 トラディショナルな太鼓セッションから歌を織り交ぜた現代的な演奏まで、終わってみると前後半で全く異なる表情を見せてくれたこのバンド。バンドがステージから去った後も鳴りやまずに響いていた拍手は、その場にいたオーディエンスの満足度を示していたようだった。


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