Glastonbury Festival of Contemporary Performing Arts @ Worthy Farm, Pilton, Somerset (22nd - 24th Jun. '07)
Overall Review Vol.7 - Part 1 -
それを観たのは私がまだ中高生の頃。私の音楽人生を変えたと言っても過言ではない、2つの映像があった。1つ目はプロムス・ラスト・ナイトの映像。プロムスはイギリスで100年以上続いている世界最大のクラシック音楽祭で、およそ2ヶ月に渡って著名アーティストが出演するクラシック・コンサートを破格の値段で楽しむことができる。そのプロムスの最終公演、通称「プロムス・ラスト・ナイト」の中継映像に映し出されたのは、Tシャツにジーパンといったカジュアルな服装にフェイスペインティングを施し、ユニオン・フラッグを振り回す観客の姿。演奏中は身体を縦に揺らし、曲間では拍手に加えて足踏みをしてラッパを吹き鳴らし、エルガーの「威風堂々」では大合唱。それまで行儀よく着席して聴くクラシック・コンサートしか知らなかった私にとって、年配の方だけでなく若者までがまるでロック・コンサートのようにクラシック音楽に熱狂しているこの光景は信じがたいものだった。
そして2つ目が、同じイギリスで30年以上続いている世界最大のフェスティバル、グラストンバリー・フェスティバルの映像である。レディオヘッド、クーラ・シェイカー、ベックなど、当時私がどっぷり浸かっていたアーティスト達が何万という観衆の前でステージを繰り広げていた。窒息死するのではないかと思うほどぎゅうぎゅうにひしめき合う観客は、全ての楽曲で大合唱を繰り広げる。曲間には地鳴りのような歓声が轟く。当時の私は既にライブというものには足を運んだことがあったけれど、映像から伝わってくる圧倒的な熱気はそれまでに感じたことのないものであった。鳥肌が立ち、言葉をなくしたことを今でもはっきりと覚えている。
ここ日本においては交わることが到底想像できない2つのフェスティバル、プロムスとグラストが共存する国、イギリス。イギリスには音楽文化の、さらに言うとフェスティバル文化の根源があるに違いない、そう思った。それ以来、私はイギリスという国の魅力に取り付かれることとなった。大学生時代は、アルバイトのお金を貯めて夏期休暇ごとにイギリスへ行った。レディング・フェスティバルやVフェスティバルへ行き、ラスト・ナイトこそチケットが取れなかったが、プロムスへも行った。それでも、グラストだけは遠い世界のままだった。6月という開催時期的な壁がまずひとつ、そして何よりあの過酷な地へ一緒に乗り込む仲間が、当時の私にはいなかったのだ。さすがに一人でグラストに乗り込む勇気はなかった。ところが、つくづく人との出会いは運命を変えるものである。自分と同じテンションで音楽を語ることができ、どんな過酷な状況でも笑って過ごせそうな仲間に出会えたのだ。夢だと思っていた世界が一気に現実味を帯びだした。今しかない、そう思った。そしてとうとう、私のグラスト行きが実現したのだ。
ロンドンから車で遙々グラストンバリーを目指し、車窓からおびただしい数のテント群が見えた時の感動は未だに忘れられない。映像で何度も見ていた世界に、とうとう来てしまったのだ。会場に入って拠点を構えた後、皆で会場をゆっくり一周したのだが、眼に入ってくるもの全てにいちいち感動を覚えた。しかしこれはどうしたことだろう、あれだけ憧れだったはずのライブを観る気がまるで起きない。「大勢の観衆の中で揉みくちゃになりながら大好きな曲を大合唱するのが夢だったんじゃないの?」思わず自分自身に問いかける。結局、会期中最初から最後まで観たライブは6つしかなかった。これはグラストを何度も体験しているhanasanと張る数字である。お陰で帰国してからも友人に「高いお金かけて、長い有給までとって、何しに行ったの?」と尋ねられる始末だ。しかし、一度でもあの空間を体験したことのある人ならきっと、それも仕方ないと納得するはずだ。ライブはグラストの娯楽のほんの一部分に過ぎない。帰国してから現在公開中の映画「glastonbury」をもう一度観にいったのだが、「もっとライブを観ておけばよかった」とは思わなかった。それよりも、「こんな場所があったんだ! 行ってない!!」という後悔のほうが断然多いのだ。
グラストには全ての娯楽が詰まっているといっても過言ではない。日本でライブを行えばアリーナクラスのハコも軽く埋まってしまうほどのビッグアーティストがライブを繰り広げるのを遠く子守唄に聴きながら、テントの中でひたすら寝ているのでもいい。大空の下、お酒を飲みながら仲間とどこでもできるような他愛無い話を語り続けるのでもいい。アート作品を作ったり、観て廻るのでもいい。サーカスを観て楽しむことだってできる。もちろん、最上級のライブを最前列で楽しむことも。それぞれが思い思いの過ごし方ができる、それがグラストなのだ。
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report by philine and photos by yusuke
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