Glastonbury Festival of Contemporary Performing Arts @ Worthy Farm, Pilton, Somerset (22nd - 24th Jun. '07)
Overall Review Vol.2
広大な草原が広がる平地をひたすら西へ運転していくと、ストーン・ヘンジが見えてくる。『夏至の集いはこちらへ』と書かれた標識が出ていた。私の前には、私と同じように後部座席までぎっしりと荷物を積んだ車が走っている。もちろんこの2台はその標識のある角では曲がらず、更に西へと、もうひとつの『夏至の集い』へと向っていったわけなのだが。
フェスティバル会場に到着したのはお昼頃。フェスティバルが始まる1日前の木曜日のこと。地元ロンドンの近郊で開催されるVフェスティバルやレディング・フェスティバルなら何度も行ったことのある私だが、グラストは初めて。到着するや否や、これはVやレディングとは違うぞというものを感じた。
一般的に野外フェスはキャンプサイトと、ステージがあるフェスティバル・アリーナは別れている。アリーナは柵で囲まれていて、時間外は入れない。ところがグラストはキャンプサイトとアリーナが別施設となっていない。そういうわけでフェスティバル会場の中でキャンプするような感じなのだ。そしてそんな形になっているゆえ、フェスティバル会場に大荷物で入場するためか、ゲートにて荷物チェックが無い。ランダムに選ばれた人たちが荷物チェックをされているだけで、大半が素通りしてしまう。かといって、会場内にセキュリティー・スタッフが頻繁に迂回しているというわけでもない。至ってリベラルな姿勢であった。それでも問題が起きやすいということはぜんぜん無い様子である。他のフェスではアリーナへのゲートにて、まるで空港のセキュリティーかと思うほど厳密に持ち物チェックをされ、あれも駄目これも駄目で水の入ったペットボトルまで没収され、アリーナ内では巡回しているセキュリティー・スタッフに1日に少なくとも2回はリストバンドかチケットの半券の提示を要求される。それでも問題が起きるときは起きるのだ。なんという大違い。
そして膨大な数のライブ出演とイベントがあるわけなのだが、その数は他のフェスのほぼ10倍。とにかくものすごい数の催し物が 、広大な敷地内にて同時進行する。とにかくどうあがいても見たいものを全部見るのは不可能。現地でプログラムが無料で手に入るのだが、あまりの出演者及びイベントの多さなので、座ってじっくり読まないと自分の行動予定が立てられないくらいである。 自分的にも行く前はあれも見るぞ、これも見るぞと欲張ってはいたのだが、到着して思ったのだが、この膨大な量のライブとイベントを事細かに調べ上げて、マーカーで記しつけて時間とともに行動するなんて、ここまで来てまるで日常の生活そのもののような行動をする人がいるのだろうか、などと考えてしまった。思うにみんなざっと目を通しただけで、どうしても見たいものだけを数点チェックする程度で後はその場の成り行き、行き当たりばったりなんだろう。実際そのプログラムがいくつも泥の中に捨てられていたのを見かけた。
木曜日の時点ではまだ泥溜まりがそこかしこにある程度だった会場内も、金曜の明け方に土砂降りになったためにフェスの初日となる金曜日にはあたり一面が泥沼と化していた。自分的には野外フェスで悪天候を経験したこと無いだけあってかなりセンセーショナルだった。グラストといえば『泥』。切っても切れない関係で、泥が無ければグラストではないとも言われる。その有名な泥が拝めたわけだ...などとのんきなことを言ってる場合ではなかったのだが。泥沼の中を歩くのはかなりしんどかった。ゴム長靴は変なもので、靴下が中で脱げるのだ。そしてくるぶしが長靴の内面にあたってすりむける。ただでさえ歩き回るのには向いてない履物なのに、両足のくるぶしがすりむけて最悪の状態。踵もひりひりする。両足のくるぶしに絆創膏を貼って、なるべく靴下がずり落ちないようにもう一枚重ねて履く(ほとんど無駄な努力だったが)。でも余分な靴下は持ってきていなかったので、前日のヤツを重ねた。少々匂ったが、今更ここに来て臭いとか汚いとか言ってられないでしょ...ってことで気にしなかった。実際私は4日通して同じ服を着ていた。もちろんシャワーの施設には1度も出向かなかった。後から考えてすごいことだとは思ったが。
実際私は最終的に明け方まで飲み明かし日の出を拝む集まりがあると言われるストーン・サークルも、不思議な人々が集まるロスト・ヴェイグネスにも行かなかった。一応泥レスリングをしていた2人組みや、妙な衣装を着て意味不明なバナーを掲げて徘徊しているを見かけたりと、グラストらしい光景はみかけたが。それよりも、人との出会いが楽しかった。ステージ前の土壌の管理をしている人たちに朝5時に藁を敷きに行ったときに撮った写真を見せてもらいながら一緒にランチも食べた。歩いてるときにカメラからレンズキャップがポロっと取れて泥の中に落としてしまったときに、すかさずウェットティッシュを数枚出して拭いてくれた親切なお兄さんもいた。朝起きて歯磨きに水道のところに行くだけで数人に『おはよう』って声かけられたり。結局最終的にはこれぞグラストという経験もしてないし、そういう場所へは行かなかったのだが、こういうちょっとしたことでなんだか心が温まるってか...なんだかフェス参加者達同士の仲間意識が高いのを感じた。一緒に行った友人とは4日間ほとんど別行動になってしまい、現地で会う予定だった別の友人とも1日しか会えなかったりと、ほとんど1人で行動していたのだがぜんぜん寂しくなかった。こんな経験は他のフェスではほとんど無い。
まあ、なんとも的の外れたグラスト経験をしてきた私ではあったが、他のフェスとは違うというのは良くわかった。あれだけ毎日天気が悪く、あれだけ泥まみれになりながらも、それを良いものとして受け入れてしまう。リベラルな環境だとはいえ、それを利用して問題を起こすヤツもいない。そして参加者同士の間にあるコミュニティー意識。これって理想的なフェスの姿勢なんじゃないかな?土砂降りの中、月曜の朝3時過ぎというとんでもない時間に帰途に着いたのだが、フェスティバル会場を後にするのがすごく寂しかった。
実はセンチメンタルになってる場合ではなく、その後が大変だったのだが...その時間帯に出て行こうとした車はぼちぼちいたのだが、全部の車が泥にはまり身動きできない状態に。1台1台がトラクターで押してもらってやっと泥から脱出することになったわけなのだが、駐車場内で渋滞。そして私の車の後方には見事にトラクターに押された後の傷がつく羽目に。結局駐車場から出るだけで2時間近くかかったためにロンドンに近づく頃には通勤ラッシュの時間になってしまった。ってことで、通勤ラッシュの渋滞にもはまる...4日間の寝不足と歩き尽くめでくたくたに疲れきっている上の渋滞だったので死ぬかと思った。濃厚なカフェイン飲料を2本飲んでも、ガムをかみ続けても眠気は取れず。何とか眠気を取るためにわけのわかんないことを1人で喋り続ける。必死だった。
今思えばこれも思い出。また来年も行けたら行きたい自分である。 |
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