button朝霧ジャム - イッツ・ア・ビューティフル・デイ -
@ 朝霧アリーナ (7th to 8th Oct '06)

- くるり - 富士の裾野で電車は走る
Quruli
 フェスティバルはメンツが全てではない。あらゆる要素を考慮してはじめて「楽しい!」と言えるものである。例えばそれは混雑しているか否か、うまい飯を出してくれるお店が並んでいるか否か、雨が降らないか否かといったものだが、強欲な我々はそういった選択を才気溢れるアーティストたちにまで要求する。歌唱力・演奏力だけを待ち焦がれ評価するのはあくまで単独公演、フェスティバルは環境に合ったものこそ望ましい。97年のフジロックにて、嵐の中でねばっこいバラードで凍えさせたザ・イエローモンキーへの罵声を集約すれば「空気読め!」と、まあそんな話である。

 少なくとも私はくるりに、同様の疑問符を投げていた。国内でもトップクラスのポップセンス、ライブの評判も並々ならない彼ら。だが、会場は富士山を背景としたユルユルの大自然、朝霧。友人との語らいとアルコールで骨までこんにゃくみたいな我々に、果たして彼らへ応対する体力はあるのだろうか?元ちとせに劣らずの混雑となったステージ前に立っても、まだそんな考えが消えないままだった。

Quruli こうした私の失礼な考えが杞憂に終わることに、さほど時間はかからなかった。"ロックンロール"のサビを開始前のサウンドチェックで歌ったかと思えば、さらに本編は"ワンダーフォーゲル""ハイウェイ""東京"という代表曲の畳み込みでもってくるりはスタートした。卑怯な盛り上げ方どころではない、こんな満塁ホームラン三連打の猛虎打線には、グデグデに酔っ払って寝ていた体もサッと立ち上がるというものだろう。「ああ、ステージってこんなに輝いていたんだ」と、彼らの演奏を観ながらライヴを観ている自分の姿に気付く。

 そんな爆発的盛り上がりを終えた次は、イエスの"Round About"をつま弾きながらの"惑星づくり"で会場の一体化を図る。久しぶりに聴かされたこの曲だが、揺らぎの曲調が実にこの場所にマッチしている。直前までやっていたツアーでも披露されていたようだが、ここで演奏するためにあつらえたのかと思ってしまうほど気持ちよく聴ける。漆黒の富士山、無口だけど煌々と輝いた月、そしてくるり。なるほど、悪くない。

 「まだまだねばっこい曲やんで」と岸田のMC。続く"ARMY"もまた同様に、夜の闇に似合って仕方無い。冒頭三連発のような火力こそないものの、オーディエンスには困惑の色もなく、素直にその音に揺らいでいた。

 演奏力のみに耳を傾けても退屈をさせない朝霧のステージ、その源になっているのは矢野顕子の後ろでも叩いているサポートドラマー、クリフ・アーモンドなのではなかろうか。インプロヴィゼーションを楽しむような雰囲気は、手数が多く、かといって自己主張も強くしないという絶妙なバランスを保ったそのドラミングのあるがゆえであり、朝霧を場違いとさせない所以なのかも……。

Quruli いやまさかまさか、くるりの魅力はそれだけのはずが無かろう。「早くホットワイン呑んでポーグス観たい」とリラックスムードの岸田、力強く「お祭りわっしょい!」と声を張り上げるかたわらで、ギターを遊ばせつつの即興ブルースにて「野外フェスの(放送禁止的女性部位)が(侮蔑的表現)い〜」などと歌い上げるなど、バリエーションに富んだ「刺激的」パフォーマンスで楽しませた。

 終盤は"街"、"HOW TO GO"というこれまたシングル曲の連打。ダイナミックで叙情的、改めて彼らの楽曲群に珠玉たるものの多さを気付かされた次第だ。

 「朝霧なんだしもっとまったりとしたもの聴きたいにゃあ」なんつってた自分が、いつのまにやら魅せられた。それは名曲における圧倒的な説得力と、熟したプレーヤーこそがもつ適応能力が主たる原因だ。ああ、「公房筆を選ばず」というが、その筆で描く紙だって選ばずとも良作に違いない。とにもかくにも、私は彼らに対する見方を改めて変えようと強く思った。こうなったら、もっととんでもないところでもライブを見せちゃあくれないだろうか。


- setlist -

1. ワンダーフォーゲル / 2. ハイウェイ / 3. 東京 / 4. イエスのラウンドアバウト惑星づくり / 5. Army / 6. Morning Paper / 7. お祭わっしょい / 8. RIng! RIng! RIng! / 9. 街 / 10. How To Go
Quruli



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