button朝霧ジャム - イッツ・ア・ビューティフル・デイ -
@ 朝霧アリーナ (7th to 8th Oct '06)

- マイケル・フランティ & スピアヘッド - 「熱」の伝播
Michael Franti & Speahead
 昼間の雲ひとつない青空と日射しの強さは、一転、夜の冷え込みを充分に予感させていた。案の定、牧草地のアリーナを吹き抜ける風が強さを増し、上空に遮るもののない夜のとばりは、地表の熱を瞬く間に奪い去っていく。ひとつ、深く息を吐き、しっかりと着込んだダウンベストのジッパーを引き上げる。富士山は、淡い群青色の背景に滲むように輝度を落とし、その対面、雨ヶ岳の稜線には、濃いオレンジ色をした西日の残滓が、ひとすじの筆跡のように鮮やかにこびり付いている。

 後にはポーグスのステージを控えるのみ。今年の朝霧ジャム、初日の「ハイライト」は、そんな自然の舞台装置とのダブル・ミーニング、朝霧の醍醐味だ。

Michael Franti & Speahead けたたましいサイレンが鳴り渡り、歓声に迎え入れられて、マイケル以外のメンバーがステージに姿を現す。

「戦争を始めた者は、決して戦場で戦うことはない、そして戦場で闘う者は、決して彼らのようにはなれない」

 戦時下のイラク、そしてパレスチナ、イスラエルへと赴き撮影されたドキュメンタリー『I KNOW I'M NOT ALONE』を受けてレコーディングされた新作『YELL FIRE!』でもオープニングを飾る"Time To Go Home"の真摯なリリックが、歌う主のいないステージから吐露される。水滴の跳ねるような印象的なエレピのリフは、あるいは血と石油が滴り落ちる音だろうか。ステージ袖からマイケルがマイク片手に駆け出してきて、食い入るように見つめる観衆にジャンプを促し、自らも渾身の力で飛び跳ねる。

「いったい何人の人が逃げ惑っていたのか…いったい何人の人の上に爆弾は落とされたんだ?」

 ディストーションでひしゃげたギターのリフが鳴り響き、アルバムと同じ流れで2曲目"Yell Fire!"。エッジとフックの効いたリズム隊が、ヘヴィで沈み込むような裏打ちのリディムを吐き出す。「ママに抱かれた子供たちに教えてやれ、F-15戦闘機が大量破壊兵器だと…企業に教えてやれ、グローバル化なんてできやしない、ピーター・トッシュが「合法化しろ!」と言ったようには」 そんな歌詞が鮮明に脳裏を捉える。

Michael Franti & Speahead 確かに、かつてレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがそうだったように、音楽性とともに自らの政治的スタンスを自覚し、それに臆することなく真摯に向き合い続けているアーティストだろう。でもレイジのように「怒り」だけではない、底知れないポジティヴさ、寛容さが、190cm以上の長身にドレッド・ヘアを振り乱し、人懐っこい笑みをたたえるこの男には、染み付いているようなのだ。

 「真実に耐えられそうにないとき、ちょっとした嘘をついてくれないかな、今日は雨は降らないって、税務署の役人が道に迷って来れないって…だれかが戦争を止めてくれるって」と優しく歌うバラード・ナンバー"Sweet Little Lies"の、アコギのアルペジオに乗せて、「上を向いて歩こう」と歌い出したマイケルの姿に、バグダッドの街角で、ガザの街角で、子供たちに囲まれて「Habibi(アラビア語で『親友』の意)〜Habibi〜」と繰り返し歌う『I KNOW I'M NOT ALONE』のなかでの1シーンが、重なって見えた。文化は衝突も断絶もしないのだ、互いが、同じ地平に歩み寄りさえすれば。

Michael Franti & Speahead
 「俺はサンフランシスコに住んでるんだけど、アフガン、そしてイラク戦争が始まったとき、毎日テレビでは戦争の『経済的なコスト』や『政治的なコスト』については報道するけれど、『人間のコスト』についてはなにも報道されなかった。だからギターとビデオカメラを手に、仲間と一緒にバグダッドに飛んだ。それからそのあとパレスチナやイスラエルにも行った…アメリカに帰ってきて、自分がまるでひとりぼっちのような気分になったんだ…それぞれが異なる立場にいて、でもどうして武力ではなく、とことん話し合うことで解決しようとしないのか…そう考える人間が、周りにまったくいないかのようだったから。

 ヨーロッパやオーストラリア、そしてニホンをツアーして、俺はひとりぼっちじゃないんだ、そう実感することができた…俺のように考えてる人間は、一人だけじゃないんだって…次の曲は、"I Know I'm Not Alone"」

Michael Franti & Speahead どこかU2を彷彿とさせる、シンプルで真っすぐなコード進行のリフに導かれ、マイケルの少し嗄れた、自らの胸の内に問い正すような歌声が、やがて、これまでにないほど力強く「たとえこんなに遠く離れた場所にいても、俺は一人じゃないことを知っているんだ」と朗々と歌い上げると、夜のとばりがめざとくかすめ取っていった熱が、胸の奥から滾々とまた湧き上がってくるのを感じた。そしてそれもたぶん、僕一人だけじゃなかったのだ、と思う。僕は静かにダウンベストのジッパーを下げた。

 個人的には、大阪で見たギグの方が、より感じ入るもののあるライヴだった。疲れのせいか、それとも予想外の冷え込みのせいか、熱気と包容力とで周囲の空気がビリビリと震えるような、彼らのベストのライヴを体験している身にとっては、なにか吹っ切るところまではいかなかったように感じた。楽しみにしていた、両隣の人に肩を組むように促す"One Step Closer To You"も、佳曲揃いの前作『EVERYONE DESERVES MUSIC』からの楽曲もなかった。でも、だからといって、悪かったわけではない。あの「熱」が伝播していくのを、これ以上にないほど美しい舞台装置のなかで、見れたのだから。そして「来年の夏、また会おうぜ」と言い残して、マイケルがステージを飛び降りると、観客の波に向かってダイヴしていったのだから。
Michael Franti & Speahead



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