ライジング・サン・ロック・フェスティヴァル 2006 in EZO
(18th to 19th Aug '06)
- Hige - 髭中毒という病、その病理解剖
髭(HiGE)というこの不思議な名前のバンドは、昨年インディーズからメジャーへ活動場所を移し、ライヴを行うたびに次のライヴも見に行かずにはいられない、というライヴ中毒患者を生み出し続けて来た。今もなお罹患者は増え続け、猛威を振るうそのライヴの毒素とは一体何なのか?病理解剖をするべく、ライジングサンロックフェスティバル2日目のグリーンオアシスにて、彼らのライヴを待った。
このバンドは、かなりの晴れ男集団らしい。一時降水確率が50%を超えていたライジングサン2日目の朝は、雲が若干残っているものの、穏やかに晴れ始めていた。
ライヴの始まりが待ちきれなさそうな観客が集まる中、ドラムのフィリポ、ベースの宮川、ギターの斉藤が先に現れ、「白い薔薇が白い薔薇であるように」を演奏し始める。彼らのライヴは即興性がとても高く、その幻惑的なサウンドで会場の空気が一変する。そんな中、パーカッションのコテイスイがライジングサンのロゴ入り自転車で突然ステージに乗り付ける。人を喰ったような登場に大歓声の観客の中、後ろの荷台にまたがったボーカルの須藤は、今まさに更正施設から脱走してきたジャンキーのような青いパジャマ姿。何やら叫び、自転車を漕いで見せ、程なくして歌い始めた。
彼らのライヴは、密接した二重構造にあるように見えた。片方がパーカッションを担当するツインドラム、何故か左端に位置するボーカル、中央にべーシスト、そしてギターの不思議な佇まい。そこから繰り出される徹底的なバンド・アンサンブルの濃厚グルーヴと、ボーカル須藤(すとう)寿のシュールでどこかグロテスクで、それでいてポップな世界観、この二つが常に融合したり衝突したり、逆転しあったりしているのだ。
「アメニウタエバ」では、曲間のブレイク部分で既にお約束になっている、須藤の一言が挟まれる。
「どーも。...髭ちゃんですよ。」
自他共に「ちゃん付け」で呼ぶのがお約束になっている「髭ちゃん」の演奏で観客が楽しそうに踊っている。タイトル通り天気が雨だったとしても、これなら悪くないなと思えるくらい会場内が楽しい空気に包まれていた。
MCでは須藤が「いきなり他人の曲演っていい?凄くセクシーな人の歌。」と語り、ドアーズの「ハートに火をつけて」を演奏し始める。演奏中に最前列の柵に上がった須藤の表情が一瞬、無防備な笑顔に変わる。きっと視界に入っていたであろうテントの外には、もうすでにたくさんの観客が溢れていた。そのまま須藤は無数に伸びる観客の手にギターを委ね、自身もダイヴ。観客の人の波は大きく揺れ動き、スタッフが救出に集まって来る。バンドは対照的に厳かに音を鳴らし続け、ギターの斉藤はまるで眠るように目を瞑りギターを弾いていて印象的だった。
須藤はさらに盛り上がる観客を煽るかのようなMCをとる。
「ホントに楽しんでるのかな?ホントじゃ無いよそれは。どうせ嘘なら、始めからホントの事なんて言わないで欲しいんだよ。」
冗談なのか本気なのか、見る者に悟らせないその行動を見ていると、カート・コバーンとダブって見えてしまうその姿すら、彼なりの敬意を込めたジョークなのではないかと思えて来てしまう。
最後の曲 「ギルティーは罪な奴」では、ベースの宮川は演奏中何度もベースのネックを激しく振り下ろし、ドラムのフィリポは観客に息継ぎもさせない勢いでリズムを刻む。パーカッションのコテイスイは拡声器で観客を煽り続け、一見冷静そうなギターの斉藤は白目を剥いている。とんでもないバンドだ。そしてボーカルの須藤の叫び声はテントの外まで届き、晴れ始めた青空にまで響いていた。
ライヴの後半で演奏された「ダーティーな世界」では、須藤が自分達のダーティーな世界を垣間見せてくれると言う。ステージに彼らが揃わないと見られない世界、これが毒素に間違いないのだろう。見てしまったら最後、もう一度ライヴで見ずにはいられなくなるのだ。そして治療方法はきっと、無いのだろう。
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report by JET-GIRL and photos by hanasan
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