South by Southwest Music Festival + Conference @ Austin, Texas (16th - 20th Mar '05)
SXSW05 特集
Flametrick Subs w/Stan's Cheerleaders 「『R指定』暗黒テーマパーク」
かの有名な刑事ドラマ『太陽にほえろ』で、松田勇作演じるジーパンが「何じゃこりゃあ……。」と言いながら崩れ落ちていいくシーンは何とも有名。腹を打たれ、傷口を押さえた真っ赤な手を見たときに先のセリフが出てくる。この会場に入った瞬間、チラッとそれを思い出した。別に腹を撃たれたとか流血したとかじゃあないが、ジーパンの手と同じく真っ赤に染まった会場に入って「なんじゃこりゃあ……?」と内心でつぶやいてしまった。赤い照明が珍しいなんてことはないし、驚くこともないんだけど、これから出るバンドがFlametrick Subs w/Satans Cheerleadersとなんともオドロオドロしい名前で、火炎に小悪魔とくるもんだから、くどいまでの赤に「なんじゃこりゃあ……?雰囲気バッチリじゃないか!」と思ったのだ。
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そんな雰囲気で響くロカビリーとくれば、なんちゃらビリーと名がつく音楽にヤられた方達は「なんだサイコビリーか」と思われるでしょうが、いえいえ。この地獄でビリーを鳴らす連中はシンプルなネオ・ロカなんです。まあウッドベースのスラッピングは、サイコビリーやパンカビリー並にバッチンバッチンいってますが。これが火炎の正体。そして小悪魔の正体はというと、エナメルにファイヤー・パターンの超超超ミニスカート・ワンピースに身を包んだパツキン姉ちゃん達。何と言ってもチアリーダーズですから、Tバックを穿いたケツを振り乱しながら踊るわけです。
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そう、ここは現実ではなくロカビリー地獄。「どうせ地獄に堕ちるならここにして」と閻魔様にお願いしたくなるようなところなのです。何が地獄かってかなり小さいステージから長細く広がるフロア。見るからにバーに特設で作ったステージだし、本来はバーカウンターのスペースにパンパンに入ったオーディエンス。熱気とお互いの酒臭さで何がなんだかわからなくなる。おまけに身動きが取れないから酒も飲めないわ踊れもしない。ね、地獄でしょ?
メンバーが出てきてチアリーダーズがカウンターとスピーカーの上にスタンバイ。地獄の宴の始まりだ。会場の雰囲気もあってか妖しさを帯びたステージに押し寄せる人、人、人。そんなものはお構いなしと、シングルハンド(弦を押さえる左手の手首から上が無い!)・ベーシストのLefty DeMarcoは弦と指板を打ち鳴らし、白目むき出しで疾走するギターのClem Hoot。その後ろで気だるくスタンディング・ドラムを叩くMiss Fortuneは、アメリカのB級スプラッター映画に出てくる「すぐにゾンビに殺される酔っ払ってはしゃいでいる若者」役にぴったり(褒めてるんだけどね)。とまあ、こんなに濃〜いメンツのフロントマンはもっと濃い。歌う合間に見せる笑顔は悪魔のような顔になり、豹柄のジャケットが非常によく似合うダンディズム。そんなメンツが集まるバンドが観られるなんて、ロカビリー好きにはたまらない時間だ。
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彼らを聴くのも観るのも初めてなので曲名すら知らないが、バンドのイメージやそこからくるオーディエンスの期待を絶対に裏切らないバンドだ。当然見た目だけじゃなくてね。速ければ、うるさければ、叫んでればいいってもんじゃない。ロカビリーっていう音楽が実はプログレッシヴな音楽であることを彼らの演奏を聴いていると再確認させられる。どうしても派手なスラップやシャウトなんかが目立つが、ベースとギターとの音の組み合わせも綿密で、力強く抜けるスネアが絶妙のアクセントを加える。そこまで構築された上にメロディアスなボーカルが加わることによって、いい具合でトゲの抜けた完成された音になる。ロックとヒルビリーの相性はやっぱり抜群。そこにサイコやパンクが入ってきても当然オッケー・オール・ライトだ。だってロックとロックの相性なんて言うまでもなく最高だから。
そんなステージを観ながらふとチアリーダーに目を向けると、自分でスカートをめくって強烈なダンスを披露中。全員、体型が若干気にはなったが、彼女達の存在もまた強烈なインパクトを与えてくれていて、このワンステージだけで「エンターテイメント」としての要素もしっかりとしていることが分かる。バンドとチアリーダーの相性もいいもんだね。
1回観たら決して忘れることのできないインパクトをオーディエンスに与え、暗闇と赤でできたR指定の異空間は危険度を上げて、アブない薬のように確実に中毒患者を増やしていった。是非、渋谷のチェルシーホテル辺りで彼らを観たい。そう思ったのはライブ終了後すぐのことだった。
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report by taisuke and photo by sama
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2005
SXSW 編集後記 (16th - 20th Mar @ Austin TX)
本物 : Guitar Wolf (18th Mar. @ SXSW05,Beer Land Austin TX)
言葉の壁、崩壊 : The Emeralds (18th Mar. @ SXSW05,Caribbean Lights Austin TX)
『R指定』暗黒テーマパーク : Flametrick Subs w/Stan's Cheerleaders (18th Mar. @ SXSW05,The Jackalope Austin TX)
Mag Special with SXSW05 (16th - 20th Mar @ Austin TX)
伝説と出会った夜 : The Dirty Dozen Brass Band and The Benevento/Russo Duo (1st Jan @ Shibuya AX)
Disc Review : 笑顔を作り出す素 : The Dirty Dozen Brass Band
BBBBをより楽しく観る方法 : Black Bottom Brass Band (29th Jan @ Kichijoji Star Pine's Cafe)
2004
ATTENTION!!よりCAUTION!! : THE NEAT BEATS (7th Dec @ Ebisu Liquidroom)
ド派手な黒色 : インビシブルマンズデスベッド (27th Oct @ Shibuya O-WEST)
column : 偶然出会った彼女 : 浜村美智子のこと (4th Oct)
Interview : 理屈は後からついてくる - part2 - : Black Bottom Brass Band (11th July)
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楽音 : Black Bottom Brass Band (10th Apr @ Ebisu Qu'est ce la)
ロックンローラーの条件って? : THE NEATBEATS (18th Mar @ Shibuya BOXX)
ホーン≒ピストル : Black Bottom Brass Band (17th Feb @ Shibuya BYG)
DVD review : どう考えても普通の光景じゃない : Thee Michell Gun Elephant - a filmography of THEE MICHELLE GUN ELEPHANT the Complete PV collection TRIAD YEARS 1995-2002 - (5th Mar)
ジョニーすげぇよ! : The Johnny Boys (13th Feb @ Shinjuku DOM)
説明不要のロックンロール : JUDE (21st Jan @ Shibuya AX)
Disc Review : 『Single Complete』 : KEMURI (9th Jan)
2003
おもちゃ箱 : BLACK BOTTOM BRASS BAND (12th Nov @ Shibuya Quattro)
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THE DECIBELS JAPAN TOUR 2003にて: THE NEATBAETS (22nd Sep @ CHELSEA HOTEL)
ルーシーの影 : Thee Michelle Gun Elephant解散...
1999
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