MOD MAYDAY '04 @ Club CITTA' Kawasaki (15th May '04)
「非常事態」の夜に集まれ!
「これは暴走族じゃないんだね?」
「違います(呆れながら)」
「えーと、じゃあ、なんなの? つまり、君たちのオシャレ?」
「……はあ(苦笑)」
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明らかに事態を呑み込めていない警察官が恐る恐る職務質問する様子を見て、友達とふたりでくすくす笑ったあの日を思い出す。“MAYDAY”とは「非常事態」を意味する緊急用語でもあるのだが、この年はまさにそんな感じだった。渋谷の街に突如大量のベスパ(モッズ族愛用のスクーター)の集団が現われ、あわてて警察が駆けつける一幕もあった数年前のMOD MAYDAY。この年川崎クラブ・チッタは改装中で、やむなく渋谷の小箱、オルガン・バーでイベントが開催されることになったのだ。当然人が入りきれるはずもなく、渋谷東急ハンズ周囲にはモッズ・スーツを着た粋な不良があふれかえり、ベスパに装着された過剰な数のサイドミラーはその夜の様子をきらきら反射させていた。
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そんな当時を振り返りつつ久々に今年はMOD MAYDAYに駆けつけることとなったが、何年経ってもこのイベントは変わらねえな、と会場に着いた途端に笑みがこぼれてくる。原色のタイトなワンピースを着た60’Sな女の子、びっしりと並べられたベスパの壁、そしてもちろんモッズ・スーツの野郎ども。「非常事態(メーデー)」とはひょっとしてこの非日常な世界の状態を指しているのかなとふと思う。この日のチッタは再入場を許可したおかげでさらに空間に余裕が生まれており、適度にゆるい雰囲気が続いていたのも良かった。DJが流すモータウンに人々が揺れている。
ただし自分がやっと辿り着いたのが実は深夜も0時を廻ったころ。その前のミーティングが押してやむを得ない事情だったのだが、到着後渡されたタイム・テーブルを見るとすでにほとんど半分を折り返している。さすがにちょっとため息が出た。The Hair、観たかったなあ。杉村ルイ氏(スカパラ初代ボーカル・ギムラ氏の実弟。自身も一時期スカパラに在籍していた)はとっくに抜けているとはいえ、なんせもはや伝説のバンドですよ。これで参戦を決めたようなもんだったのになあ。昔とは違い、この日はずいぶん前衛的なライブを行ったようだが……。
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しかし、その代わり、というわけではないが少なくとも自分が観た後半の全バンドはまるで外れなし。怖いくらい最高のブッキングだった。甘くベタなメロディが胸をキュンキュンいわせるThe Collectors。ツイン・ギターがヤバすぎる、もはや「MAYDAYには欠かせないバンド」THE BOSS。オルガンをフィーチャーしたLes Cappuccinoは圧倒的な演奏力を見せつけ、Spindlesのベース・ラインには度肝を抜かれた。そしてトリのThe Marqueeに至っては言葉が追いつかない。モッズの持つ暴力性を見事に体現し、ついには舞台袖のスタッフさえもマジギレさせた怒涛のパフォーマンスには予定調和などかけらもなかった。
それにしてもこれだけ長いことひとつのイベントが続くなんて驚異としかいいようがない。が、一度体験してみるとわかるが、毎年来たくなる数々の要素をこの一夜は持ち合わせているのだ。古き良き時代の英国を追体験させてくれる甘いロマンティシズムと、お洒落な不良の集まったちょっとアブない夜の香り。なぜか小雨が降ることが多いのも雰囲気にマッチしてセンチメンタルな気分にさせてくれる。そして前述のように出演バンドは異常にクオリティが高いし、とどめは鉄壁のDJ陣。年に一度のこの素晴らしすぎるステキなお祭りに、未経験者こそ来年は参加してみることを是非ともお勧めする。大丈夫、割とフツーの格好してる人も実はけっこういるからさ。
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report by joe and photo by hiroqui, maikokko
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