The Circus Of Horrors @ Round House in London(Feb. '01)
アリス・クーパー+マッド・マックス+ロッキーホラー・ショー!?
これが噂のThe Circus Of Horrorsだ!
 


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数年前のグラストンバリー・フェスティヴァルでのこと、10万人近くの人々を魅了するキャパシティを持つピラミッド・ステージでオアシスが演奏していたとき、同じ会場の(といっても、会場の広さは駐車場抜きで東京ドーム100個分に匹敵するんだが)サーカス・エリアでも同じような熱狂がThe Circus Of Horrorsのテントを包み込んでいた。入口から始まった無数の人の群が作った列は数マイル先にまで及び、ひっきりなしに観客を入れ替えては公演を続けていた... というより、そうせざるをえなかったほどだ。それほどまでにロック・ファンを魅了してしまったのが、巷で噂になっているマッドなサーカス、The Circus Of Horrorsだ。
では、この『恐怖のサーカス』がなにか... 簡単にいってしまえば、アリス・クーパーにグラム・ロックのニュアンスを加え、さらにはマッド・マックス風味をそこに散らした奇想天外なサーカス。一方で、ロッキーホラー・ショーのアナーキーな発想をライヴで展開し、『13日の金曜日』や『エルム街の悪夢』といったB級スプラッター・ムーヴィから『アダムズ・ファミリー』といったコメディ・ホラー映画のタッチも持ち込んでいる。そういった全てがごったにになってサーカスとマジックと漫画とロックが合体してしまった代物かしらん。
「もともとサーカスをやっていたというか、サーカスで生まれたんだよね。でも、アリス・クーパーとTレックスの熱狂的なファンで... ある日、思いついたんだよ。ひょっとしてアリス・クーパーが本当にやってみたかったことを生、ライヴでやったらどんな感じになるんだろうかなって。おそらく、こうなるんじゃないだろうか...」
と、そう話しだしたのは、このThe Circus Of Horrorsの中心人物、Hazeだ。このプロジェクトの仕掛け人で、火を食べてしまう芸も持つ主演男優。同時に、このサーカスのなかで生で演奏するバンド、X Factorのリード・ヴォーカルでもある。さらに加えれば、ここ数年、ロンドンを中心に盛り上がりを見せるトリビュート・シーンのプロデューサーでもあり、彼のこよなく愛するT Rexのトリビュート・バンド、T Rextasyのブッキング・エージェントもやっているという人物だ。
(ちなみに、右の写真はそのT Rextasyが97年の9月30日、マーク・ボランの生誕50周年記念日にケンブリッジで行われたトリビュート・コンサートに出演したときの模様。ギターを片手に歌っているのはT Rextasy率いる、リード・ヴォーカルのダニエルズ。そして、その隣でパーカッションを叩いているのはオリジナルT Rexのミッキー・フィン。これ、けっこうインパクトあると思いません?)
さて、そのヘイズが「アリス・クーパーが本当にやりたかったことをそのまま形にしたらどうなるか」というコンセプトの下にライヴをやったのが、90年代半ばのこと。当時は、ライヴが中心で、その演出として彼のサーカス技を披露していたというのだが、それが評判を呼んでいったというのだ。そして、次第に活動の場所を大きくして、UKロック・ファンにはおなじみの、伝説のマーキーでの上演も成功。カルト的な人気を持つに至る。
さらには、そんなコンセプトを気に入ったサーカス仲間が徐々に参加し始め、日本で言えば、木下大サーカスにも匹敵するイギリスの代表的なサーカス・アクト、コトル・ファミリーがここに参戦。加えて、フランスのARCHAOSも演出に加わるなど、次第にその規模を大きくしていった。
といっても、どこかでアンダーグランド的な発想を持ったオルタナティヴなサーカス。昔懐かしい保守的なサーカスや家族団らんで楽しめるものとは明らかに毛色が違う。なによりも、ここに溢れているのは強力にロックンロール的でB級な遊び心。そんな意味で言えば、完全に主流派からはずれたサーカスなのだ。が、なにを勘違いされたのか、エジンバラ演劇祭に出演。そこでシリアスな評論家から高い評価を受けたというから面白い。彼らにとって実に実験的な「芝居」だと言うわけだ。
「あれには驚かされたよ、まさかああいった展開になるなんて思ってもいなかったから... ハッハッハ」
とは、ヘイズの弁。もちろん、そんなことはお構いなしに、彼らは我が道を突き進んでいくことになる。その結果が大規模なヨーロッパ・ツアーであったり、なんとサッカー・スタジアムで上演してしまったというアルゼンチン公演。ここでは数万人のオーディエンスを集めてしまったというから驚かされる。
ちなみに、基本的にはストーリーを持ったミュージカル仕立てで展開していくのだが、奇妙な芝居もどきが始まるのは会場では入り口付近から。駐車場の案内係はドラキュラで、おどろおどろしいメイクをした出演者達がチケットをもぎり、化け物の世界に観客を案内するという仕掛け。詳しいことをここで書いてしまうと、体験したときの楽しみがなくなってしまうので、それはしないが、会場のドアを開けたところから完全なフリークの世界に引きずり込まれてしまうというわけだ。
ストーリーはというと、残虐の限りを尽くす魔界の帝王、ドクター・ヘイズがその力を誇示して遊ぶというのが第一部。まずは出演者総動員で大騒ぎだ。天井に張られたロープの上をバイクが轟音をとどろかせながら走り、そこの下につるされたブランコにのってドクター・ヘイズが登場。さらには、マッド・マックスよろしく作られた車やバギーカーがステージを走り回る。といっても、もちろん、それだけではない。その屋根の上では樽の上にのったアクトがバランスを取りながらナイフを振りかざしたり、一方では板でできたステージをも突き刺す剣の先を、口にくわえたもう1本の剣の先に立ててバランスを取っている女性も登場。このあたりは種も仕掛けもない鍛錬の賜物ともいえる芸がなだれてきて、実にスリリングなのだ。
さらに、まだあどけない表情を残した少女が剣で串刺しにされたり、首をナイフで切られたり... 拷問ルームで魔界の住人達を次々と血まみれにしていったり... もちろん、こうなると、マジックであり、種も仕掛けもあるんだけど、さすがにどきっとさせられる。
それだけではなく、このあたりから登場してくるのが数々のフリークたち。髪の毛だけで宙づりになった女性が空中でフラフープをやったり、頬から舌までを釘差しにしたり、両乳首のピアスに5キロもあるおもりを付けて、(調子のいいときには、耳にも同じおもりをふたつ付けて)歩き回る怪人も登場。あるいは、真っ暗闇のなかで蛍光灯を飲み込んで、それに電気を通して、暗闇におなかからの明かりを浮き上がらせたり... はたまたシャンペン・グラスどころか、観客の目の前でワインのボトルを割って、それをバリバリを食べてしまう血まみれガラス・イーターとか... (これ、ちなみに、種も仕掛けもありません。本当に食べてますよ、この人。今でも、信じられませんけど...)とんでもない特技を持った芸人達がこれでもかと登場してくるのだ。このあたり、テレビでおなじみの「驚異の○○人間!」のオンパレードなんですが、あんなブラウン管で見るのと、生で、しかも、目の前で見るのとでは大違い。さすがにショッキング。
といっても、おどろおどろしいものにユーモアやチープなエロ・グロ・ナンセンスがまざっているのがミソで、笑えるものも少なくない。というよりは、大笑いできるコミック・ショー的な要素を持っていることも見逃せない。たとえば、電撃ネットワーク同様、ケツの穴に花火を入れて走り回ったり、軟体動物よろしく、小さなチューブに全身を入れた女性が出てきたら、すっぽんぽんだったりとか... 牧師さん役の二人組がプレイボーイあたりの雑誌を見ながらにやけているなんてシーンもある。とにかく、ドキッとして、ハッハッハと笑えて、手に汗握れて... と、その全てがそろっているのだ。
第2部にななると、観客席から『13日の金曜日』でおなじみのジェイソンや『エルム街の悪夢』に出てくるフレディ、あるいは『スクリーム』にでてくる殺人鬼、フランケンシュタインにミイラ男が会場を練り歩き、客を楽しませてくれる。そんなスプラッター・ムーヴィから正統派ホラー映画のパロディ的な部分も随所に飛び出し、思わずにやりとすることもある。
もちろん、サーカスにはおなじみの空中ブランコも登場するし、バンジー・ジャンプ風の空中芸も見せてくれる。なにせ、基本的にはサーカスであり、サーカスという言葉から想像できるものはほとんど全てそろっている。といっても、もちろん、動物虐待を想起させる動物芸は一切登場しないのがイギリスらしいんだけど。
そして、クライマックスに近づくと、魔界の帝王が反乱にあって、絞首刑にされたり、あるいは、箱詰めにされてチェーンソーで血しぶきと共に殺されてしまったり... でも、当然のように、殺されても生き返るのが悪の帝王。途中、観客が催眠術をかけられて、足を切断されるというシーンが登場するのだが、当然ながら、これもマジックだ。ただ、なにが起こってもおかしくはない。
ラストは再びこの世によみがえった悪の帝王、ドクター・ヘイズの復活を祝福する炎のパーティ。出演者全員がステージに登場して、大騒ぎを繰り返す。火のついたスティックを使ったジャグラーから火を口に入れて食べてしまう男たち、あるいは、その火をズボンのなかに入れたり... マジで火傷しないのか、心配になるけど、そんな炎のロックンロール・パーティで幕を閉じるわけだ。
このThe Circus Of Horrorsのどこに魅力があるのか... 一言で説明するのは難しい。なによりもロック的であり、漫画的であり、B級であり、エロ・グロ・ナンセンスであり、同時にシリアスな芸も盛りたくさん。子供相手の保守的なサーカスにはない毒がふんだんに込められているところかとも思うが、一度体験してみると、やみつきになるほど楽しいのは間違いない。なにせ、全英ツアーはほとんどが満員で、彼らによると、熱狂的な日本人のファンがいて、その人はなんと、連続10日間も彼らのショーを見に通ったとか。なにはともあれ、チャンスがあれば、一度は体験しておくべき、世にもまか不思議で楽しいホラー・ショーだということは断言できる。
ちなみに、2001年には彼らが初来日して、フジ・ロック・フェスティヴァルに姿を見せる公算が大きくなっている。そうなったときに彼らがどんな出し物を持ってくるか、それは想像するしかできないが、もしそれが実現すれば、おそらく、最もフェスティヴァル的な醍醐味を与えてくれるのが彼らになるだろう。なにせ、フジ・ロックは野外コンサートではなく、「お祭り」なのだ。ちょうど村祭りや盆踊りに「お化け屋敷」が登場するように、こんなサーカスもフェスティヴァルには欠かせないもの。これが乱立するフェスティヴァルもどきの野外コンサートとは全く違ったフェスティヴァルの楽しさをフジ・ロッカーズに伝えてくれるはずだ。逆を言えば、彼らを目的にフジ・ロックに行こうという人が出てきてもいいほどの面白さ。絶対に見逃さないように!
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report and photos by hanasan on the 13th Mar.
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