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キーワードは「自由」
単刀直入にいうと、フジロックに出てほしいバンドである。少し日が落ちた夕方のホワイトステージ辺りがよく似合う。野外というシチュエーションで、少しアルコールが入った体をこの音に委ねたら本当に気持ちのいいことだろう。
ナイス・ナイスはアメリカのオレゴン州を拠点とする2人組である。この『エクストラ・ワウ』はワープ・レーベルからのデビュー盤だ。このCDを聴くと多重録音やプログラミングされているんだろうな、と感じるけれども受ける印象は生身の人たちが打ち鳴らしている音のように思えてくる。グワーーーーーとしたギターノイズが覆ってきたり、ズンドコ突き上げるビートがあったり、日本古謡の"さくらさくら"のようなメロディを奏でながらドリーミーな空間を作るところもある。
このバンドには、サイケデリック、クラウト・ロック(=ジャーマンプログレ)、ミニマル、シューゲイザーという言葉が使われるけど、そこに収まりきらない、不定形な魅力がある。先も触れたけど東洋的なメロディがあったり、シタールぽい音が聴こえてきたり、ジャーマンプログレぽいところもあるし、もちろんイギリスやアメリカのインディロックの要素も感じ取れる。それが空間的な自由さで、もうひとつ、60年代のサイケデリックも、70年代初期のテクノぽいところも、80年代ポストパンクの実験性も、90年代のシューゲイザー感覚もあり、時間的にも横断している。空間も時間も飛び越えて、音楽として自由になっているのだ。
それがまとめあげられてナイス・ナイスの音になっている。よくバトルスと比較されるみたいだけど、あそこまで演奏に緻密さ、生真面目さはなく、もっとゆったりと人を包み込むような感じがあるのだ。野外フェスに出てくるところを想像すると、激しく踊る人がいる一方で、体をゆらゆら揺らしている人もいて、それぞれの楽しみ方ができるのだろうと思える。
また、攻撃性とか爆裂という言葉を使ってバンドを評する人もいて、確かにそういう面もあるんだけど、やっぱり全体としては、自分にとってやさしい感じがする。でも、これは聴く人によってかなり変わりそうではある。それだけこの音楽は用途を限定しない、つまりは、この音をどのように受け取るかということも、それぞれ自由なんだ、と。
reviewed by nob
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