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次元を切り裂く轟音と幽玄的な叙情が波のように寄せては返す。燃え滾るマグマのような熱をもたらすVo.アーロンの咆哮、ただひたすら神経を研ぎ澄ませて音の一つ一つを紡ぎ合わせていく演奏隊。その鉄壁のバンド・アンサンブルがもたらすのは天と地を引っくり返すようなとんでもない衝撃だ。根底にあるハードコア精神を拠り所にしながらも、様々なジャンルを飲み込み、昇華させたダイナミックなサウンドが展開されていく。重圧的ながらも浮遊感のある緻密な音響空間、それを構築してしまうのがこのアイシスというバンドである。
そんな彼等の2年半ぶりとなる5枚目のフルアルバム「ウェイヴァリング・レイディアント」がついに届けられた。まずは、バンドの頭脳であるアーロン・ターナーの手がけたジャケットに見惚れてしまう。この辺りの掴みも相変わらず巧みだが、緻密で濃密なアイシスのサウンドが全編に渡って展開されている中身も当然のことながら凄い。
基本的にはアイシスというバンドの音楽性を決定付けた傑作の3rdアルバム「パノプティコン」、そしてそこからさらに緻密な音響空間を築き上げた前作「イン・ジ・アブセンス・オブ・トゥルース」の延長戦上にあるものといって差し支えないだろう。ギター・キーボード・ベースの反復から美麗なメロディとしなやかで有機的なグルーヴを生み出しながらも、一方で重たいリフをひたすら塗り重ねて作り上げるヘヴィネスの渦に飲み込まれていく。この静と動をしっかりと対峙させた美しいコントラスト、驚異的なダイナミズムはやはり他のバンドとは一線を画している。また、曲から滲み出ている不思議な神秘性や峻厳な雰囲気もまた彼等の存在をより孤高のものへと押し上げているといえるだろう。
そして、何よりもこの作品から感じられるのは"強さ"である。メンバー自身も前作がいささかパワー不足と感じたのか、本作では迸るようなエネルギーに満ちている印象だ。猛る狂気が至るところで火を噴く結果となっている。特にラストの"スレッショルド・オブ・トランスフォーメイション"では轟音が四方八方に乱舞するという凄まじい激しさに戦慄を覚えてしまう。とはいえ、作品の芸術性の上に成り立った狂気や激しさであると表現でき、雄大なコントラストは維持しつつ轟音のインパクトがさらに強烈になった感じだ。激情と叙情をくっきりと浮かびあがらせて、絶妙なバランスで見事に共存させているのはさすがである。まさにバンドの真髄を発揮した非常に濃密な作品といっても過言ではないだろう。圧巻、もはや貫禄すら漂ってくる。
なお、本作は5月5日の発売に先駆けて、アナログ盤が4月21日に先行発売される予定だ。結成当初からアナログ・フォーマットにこだわってきた彼等のこういった試みも非常に興味深い。また、2曲でトゥールのギタリストであるアダム・ジョーンズが参加していることにも注目だ。
いよいよ今週末には一夜限りとなる再来日公演を東京で開催。これはサンやボリス、エンヴィにグロウイングといった国内・海外の強者達が集まって行われる超重低音祭になっている。既にヘッドライナーのアイシスに到達するまでに両耳が破壊されている気もするが、幸福にも等しい爆音を浴びることのできる、またとないチャンスなのでお見逃しなく。
"leave them all behind"
feat. ISIS / SUNN O))) / Boris / envy / GROWING
2009/04/19(日) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
詳細についてはこちらでご確認ください。
reviewed by takuya
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