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日本での知名度はまだまだながら、本国アメリカでは既に自らの人気を確かにしつつあるバンドがいる。それが今回取り上げるレッドという4人組バンド。"リンキン・パーク ミーツ エヴァネッセンス"と一部で評されることもある彼等は、ヘヴィロックを軸にしながらも、大胆にストリングスを導入したエモーショナルなサウンドで支持を集めている。いわばヘヴィロック界の新星といえる存在だ。
簡単に彼等のことを紹介すると、レッドは2004年に結成され、そこからわずか2年後の2006年にデビュー作『End Of Silence(エンド・オブ・サイレンス)』を発表。この作品で早くも人気に火が点き、全米で40万枚を越えるセールスを記録する。そして、その勢いで第49回グラミー賞にて「ベスト・ロック・ゴスペル・アルバム賞」にもノミネートされるなどの成功を収めている。しかしながら、その裏では2年間で500本こなしたという地道なライブ活動が幹としてあり、まさしく叩き上げでここまで登り詰めてきたバンドといっていいだろう。
そして、2年半の時を経て完成したこの2枚目の作品『イノセンス・アンド・インスティンクト』。これは、前作の成功がフロックではないことを証明する力強い作品に仕上がっている。ボディブローのように効く重厚なサウンド、その上を流れる哀愁漂うメロディラインと強面に似合わない艶やかな歌声で心のど真ん中を射抜く。ヘヴィな手触りを基調とし、激しく外に爆発するような危険さを持ちつつも、楽曲の中で強く押し出されているのは悲壮感やもの悲しさからくる泣きの部分。ただ、切なくて。ただ、儚くて。どうしようもないほど胸が締め付けられてしまう。その一番の担い手である表現力豊かなヴォーカルは聴き手に対して非常に訴えかけてくるものがある。
本作に至ってはほぼ全編に渡ってストリングスを導入しており、ピアノの繊細な旋律やヴァイオリンの荘厳な響きがよりドラマティックなスケール感を大きくしている。余計にお涙頂戴の演出が施されてるわけだ。これにはこっちも涙腺を緩ませざるを得ない。さらにダンテの『神曲』に大きな影響を受け、人間の持つ二面性を主題に据えた事も奥行き深さを助長しており、非常に濃密でストーリー性の高い作品となっている。慟哭のメロディと激しいサウンドが掛け合わさることで生まれる美しいハーモニーの前に自分はあっけなく魅了されてしまった。また、デュラン・デュランのカバー曲"オーディナリー・ワールド"を作品に違和感なく溶け込ませてる点にも脱帽である。
ちなみに、輸入盤は1ヶ月ほど前に発売されているが、ここ日本でも3月4日に待ち望まれていた国内盤が登場した。これほどまでに強い訴求力が感じられる本作が、はたしてどのように日本で受け入れられるのかが結構楽しみ。衰退気味のヘヴィロック界の起爆剤となれるのか?これから先も注目していきたいバンドだ。
reviewed by takuya
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