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ソシエダード・アルクホリカ。このバンドの名前を耳にした事はあるだろうか? 遠く離れたここ日本ではその活躍が未だに伝わってこないのだが、本国・スペインでは既に絶大なる人気を獲得していて、スペインで最も人気のあるメタルバンドといわれているそうだ。このたび縁あって彼等が今年発売したニューアルバム『マラ・サングレ』を聴くことになったのだが、CDから伝わってくる凄まじいまでの剛力に終始圧倒されてしまった。
音楽的にはスレイヤーのような血生臭いスラッシュメタルを想起させながらも、パンテラ以降のモダンヘヴィネスの潮流をもろに受けたことを感じさせる。しかし、それだけにとどまらずハードコアやパンク、トライバルといった言葉が浮かぶほど様々な要素を混合、さらにスペインのお国柄とも言うべきラテン色がもたらす独特の香りと政治的なメッセージの詰まった詩がバンドの独自性を明確にしている。
本作『マラ・サングレ』は表面的には危険極まりない音楽といっていいだろう。頭と中盤に配置された小インストとラストに収録されているおまけのラップリミックスを除けば、強靭に武装された痛烈無比なサウンドで徹底して攻め立てて人々の五感を打ちのめす。全てを薙ぎ倒すような暴力的なギターリフが鋭敏に神経を刺激し、重厚なリズム隊は強力な地盤を築き上げる。そして、バンドの核といえるヴォーカルの獰猛な咆哮は燃え上がる炎のように熱い情熱を撒き散らす。けれどもその中には、仄かに男の哀愁ともいうべきものが感じられ、妙に心を打たれるのが不思議だ。メタルっぽい暑苦しさや汗臭さもなかなかいい味となっており、単純にメタルという言葉では片付けられず、それだけにとどまらない魅力に溢れた作品に仕上がっている。
"激しくも情熱的" そんな彼等の音楽は強く心を揺さぶる力を持っており、母国で圧倒的支持を受けているというのも頷ける。
非常に威勢のいいバンドでまだ若いんだろうなあとCDを聴いて思っていたのだが、ネットで調べてみると結成は1988年だという。既にキャリアは20年にも及び、作品は10枚近く発表しているので現在は円熟ともいうべき時期か。さらに驚くべきことは、彼等が既に3年前の2005年にここ日本の地を踏んでいること。今もその当時もまだまだ無名の存在でしかないと思うが、そんな中で彼等が一体どんなライブパフォーマンスを繰り広げたのか気になるところ。果たしてこの先に再び来日公演は実現するのであろうか。
最後に残念なことを記述しなければならないが、無名の存在であるが故、日本では彼等の作品を手に入れることは難しいようだ。なので興味を持った方はまずMySpaceで音源をチェックしてもらえたらと思う。そして、自分がこのように紹介することで少しでも多くの方々にソシエダード・アルクホリカという存在を知ってもらえたなら幸いだ。
reviewed by takuya
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