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人は年を重ねていくうちにいろんなことを経験して、知識が積み重なっていく。経験すればするほど、また新しいことを発見し続けていくのだけれど、それとは反比例するように、気がつかないうちに見えない固定概念もムクムクと成長を遂げていく。それは仕方がないこととは言え、いつの間にかその固定概念が邪魔をして、出会えるはずだったモノ、人を事前に避けてしまっていることが多々ある。BMXバンディッツという名前はずっと前から知っていながらにして、バンドも結成20年を越える今頃になってやっと、こんな人たちがこんな音楽をやっていたのか……と恥ずかしながら気づくのも、大好きな音楽であっても、最近特にスコットランドの音楽に魅了されっぱなしであっても、自分のなかには"グラスゴー"という言葉に対する固定概念がしっかりと根づいていた証拠なのだろう。BMXバンディッツが眉間にシワをよせ、考えに考えて作られた音楽を奏でているのではなく、眉間にシワをよせ、深読みしすぎていたのは私の方だったのだ。『ビー・スティングス』を聴いていると、すべてのことが解明された。
どんな音がプレイヤーから流れてくるのか少しだけ構えていたら、"Take me to heaven(天国に連れていってよ)"と、鼻歌まじりかほろ酔い気分かのようなダグラスの歌声が聞こえ始めた。初っ端から思いっきり肩透かしを食らったというのも、計算し尽くされた洒落すぎていて、いかにも文学的なポップ・ソングの要素が見当たらなかったからである。"Elegant Lines"ではダグラスとレイチェルが交互に歌っているのだけれど、デュエットという形式で歌を歌うという感覚ではなく、ごくごく自然にある、男性と女性の日常会話のワンシーンように、時としてダグラスが歌い、小鳥のさえずりのようにレイチェルが応える。そこで歌われているのは、国や年代やその形態は異なれど普遍のテーマである愛についてのことである。日常にあるような会話のハミングには、大それた恋愛劇場は必要ない。そうであるからこそ、そこから生まれる曲には、無駄な計算や演出、本人自身の肩にも力を入れる必要がないのだろう。"Sing The Things"の"Going to sing all the things. sing the things i can't say(僕は何でも全て歌にするよ/直接はいえないようなことだって歌う)"が全てなのだろう。
これまでいつの間にか築いてしまっていたグラスゴーの壁が崩れた今、スコットランド=ファイフ、エディンバラという私のなかの音楽絵巻図が、ビュワっと一気に広がった。網の目のように絡み合うスコットランドのバンドを、やっぱりスコットランドで観たい。小さく暗いパブの一角で上機嫌で人の歌なんて聞かない地元の人が何でもない日常を報告し合うような小さなスペースでこそ、スコットランドのバンドを観たい。強く強くそう願うも、なかなか実現する日がやって来る日はまだ遠い。でも、いつの日かこの目で確かめられる日を楽しみにすることとしよう。
reviewed by kuniko
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