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バッド・アストロノートは、ラグワゴンのヴォーカルであるジョーイと、元ラグワゴンのドラマーだったデリックとで2000年に立ち上げられたバンドだ。メンバーの中には、シュガーカルトのギタリスト、マルコ72がベーシストとして、アタリスのチェリスト、アンガスがチェロ/パーカッションのパートで参加している。このアルバムが3枚目で、バンド最後のアルバムとなる。2005年にドラマーのデリックが自ら命を絶ち、ジョーイの言葉を借りれば「デリックなしでバッド・アストロノートはあり得ない」理由で、バンドを終わらせることになった。アルバム製作途中で、デリックは亡くなってしまった。皮肉にもこのアルバムのタイトルは、デリックとジョーイの最後のレコーディング中に考え付いたものらしい。
ただ哀しいだけの思いでアルバムに耳を傾けるのはあまりに切なすぎる。と、こんな前置きをしておきながら何も考えずに聴いてほしいというのも勝手なものだけど、ただ素直に正直に、このアルバムはヴァラエティ豊かでありウィットに富んでいる、最高にクールなアルバムだ。
ジョーイの声は特徴があるから、このアルバムを初めて聴いた時、瞬間的に「まんまラグワゴン」と思ってしまった。よく聴けば、似て非なるもの。ジョーイの声も歌い方も、思い入れも違う。同じものを作るのであれば、ジョーイは見向きもしなかっただろう。本当に音楽に対して貪欲な人だ。我が家であるバンド、ラグワゴンは、硬派なメロコア・バンドとしての地位はすでに確立されている。その傍らでカヴァー・バンドのギミギミ(ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミ・ギミズ)でギターを弾き、そしてこのバッド・アストロノートでヴォーカルを務めていた。
ジョーイの作り出すメロディは、実に気持ち良くスルリと滑らかに耳に馴染んでくる。ここで聴ける音は、疾走するギターのノイズやエネルギッシュさに溢れたメロコアというよりは、もっとポップかつメロウで、ヴァラエティに富んでいる。マイナー調のメロディに、チェロやキーボード、プログラミングの効果を重ねていってドラマチックに仕上げている。曲ごとに色んな表情を見せ、喜怒哀楽がはっきりと現れていてそれが聴き取れる。
"グッド・モーニング・ナイト"、"オートケア" や"ゴー・ヒューマン"なんて、これぞ真骨頂ともいうべき、琴線にビリビリと痺れる美メロのポップな音が広がる。ただそれだけではカラフルさと感情に満ち溢れたアルバムには聴こえない。"マイナス"や"ヴァイオレット"のシルクのヴェールに包まれたようなふんわりと音がまとわりつく感じ、"ベスト・ウェスタン"の一歩踏み出すギリギリの崖っぷちまできてしまったヒンヤリした感じ、どれもがドラマチックに音が重なり合っている。そしてこのアルバムは、"ザ・サーティーンス・ステップ"で締めくくられている。とても悲哀に満ちた曲なのに、コメディ番組にあるような笑い声と拍手が曲の始まりと終わりに入っている。皮肉なものだ。きっとこの曲は、歌詞を読む限りデリックに捧げられたに違いなく、バンド・メンバーのすべての思いが、この2分20秒の中に込められているんだろう。コツコツと作り上げてきた12の小さなステップに、たったひとつの、あまりに大きすぎる失望だったのだ。
最後に、ラグワゴンの最近のアルバム『レゾルヴ』は、デリックに捧げられたアルバムであることも、ここに書き残しておこう。
* Derrick Plourdeメモリアル・サイト:http://www.derrickplourde.com/
reviewed by ali
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