|
|
もし、ゴードン・アンダーソンがあの時、ザ・ベータ・バンドから離れることがなかったら、こんなアルバムが作られていたのだろうか? "Dry The Rain"の延長線上には、"The Happy Song"のような何でもない日常をハッピーと連呼するような底抜けに能天気な世界観が描かれていたのだろうか? どちらもありえない。忘れもしない、あれは2004年の暑い夏、唐突に訪れたザ・ベータ・バンドの解散という衝撃から2年半... ジ・エイリアンズの1stアルバム『Astronomy For Dogs』がリリースされた。ザ・ベータ・バンドという響きに期待した人はきっと裏切られるだろう。そしてジ・エイリアンズのこれまでの"Robot Man"や"The Happy Song"だけに全ジ・エイリアンズ像を描いてしまった人には少々肩透かしを食らうアルバムとなるだろう。ジ・エイリアンズというバンド名からももっと果てしなく広がるゴードンにしか理解のできない宇宙スケールの戯言を自己満足的に説き伏せるのかと思っていたら、まったく逆で、ゴードン自身をとりまく何でもない実にシンプルな日常を宇宙規模のでき事かのように鼻歌まじりで歌っている。ゴードン・アンダーソンがザ・ベータ・バンドから離れ、8年の月日を経て再会するという紆余曲折を含む30余年かけて通ってきた3人分の音楽性が詰め込まれている。
いい意味では、ジャンルという垣根を自由自在に行き来するアルバムではあるけれど、逆の意味では60年代以降の音楽シーンにおける偉人の顔が走馬灯のように駆け巡りすぎる74分である。どこかモヤモヤ感があるのも確かだ。このモヤモヤの原因は一体何なのか? いくつかあるうちの一番の要因はゴードン・アンダーソンとジョン・マックリーンという異なる音楽センスがありながら、その良さをお互い殺し合ってる、あるいはお互いが遠慮し合っているように感じるからだ。"Robot Man"や"Rox"なんて曲はまさにジョンが周到してきた要素が詰まっていて、"She don't Love Me No More"や"Honest Again"は典型的なゴードンらしい曲である。じゃあ"Setting Sun"や"Happy Song"が2人のテイストが出ているかというとそうではなく... その全く違う音楽性の融合から生まれる突然変異の瞬間は"I am the Unknown"とラストを12分超えのジャム・セッションでやり逃げする"Caravan"でしか見ることができなかったということと、加えてライヴでの荒さやタイトさ、何より、この人達が潜在的に持つ大人げなさという最大の素の部分が、完全に影を潜めていることだろう。ザ・ベータ・バンド解散宣言直後から、育て上げられ満を持してのアルバムのリリースとなるだけに、ちょっと大事に大事に温めすぎたという感がある。
だからと言って、ジ・エイリアンズに対する評価が低くなったわけではなく、むしろ去年、ザ・グリーン・マン・フェスティバルや マンチェスターでライヴを観たことのある私にとっては、このお行儀のよい曲が、ライヴではどういう形で再現されるのかという期待が膨らむ一方である。どんな風にゴードンがはしゃぎ回り、どんな風にジョンが暴走するゴードンをコントロールするかが楽しみでしょうがない。本人自身も、ライヴを重ねるごとにそれぞれの曲は進化していっていると言っているだけに尚更である。
そして、ゴードン・アンダーソンはやはりタダ者ではなかった... 3月14日から始まるはずだったツアー目前の昼下がり、ジョンと木に登っていたこの男は老女のように不細工に落ち、鎖骨を骨折したのだ。おかげで、ツアー全日程が延期となってしまった。何してるんだか... と失笑するとともに、これでこそジ・エイリアンズだなぁと 目を細めている人も多いことだろう。私もその一人であることは言うまでもない。
reviewed by kuniko
|
|
|