ザ・ズート16

"完全逆様な世界"
(国内盤)
the official site
The Zoot16
http://www.zoot-ss.net/zoot16/
previous work

"ミューティニー"
(国内盤)
"Right Out!"(国内盤)
"ZOOT16"(国内盤)
co-production
"バーフライズ・ストンプ / マスカレード"(国内盤) with 勝手にしやがれ
"ブラック・マジック・ヴードゥー・カフェ (勝手にしやがれ)"(国内盤)
compilation
"Japa-Rico 〜 Rico Rodriguez Meets Japan"(国内盤)
"The Mods Tribute : So What!! Vol.2"(国内盤)
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身の回りに転がる単純な玩具の音をサンプリングするのは、一見思いつきそうでなかなかできないアイデア。現代っ子の遊び道具を思い出して感じる懐かしさなんて、当然和風でもなくそれこそ珍妙の言葉に尽きるけれど、よその家に遊びにいったときにSFチックなプラスチック製光線銃やチャリンコの前についていたドーム型の玩具をいじっていた気がする。
そして今になり、ズート16が届けてくれる効果音に持っていかれる状況がおもしろく、ずいぶんと年を重ねてから知った、肝臓を打つように重くのしかかるダブ処理よりも、遥かに新しいと感じてしまうから不思議だ。クラッシュやニューエイジ・ステッパーズでロックとダブの橋渡しがされ、最近ではデッド60ズにハードファイらがやってる。でもそれらは、リー・ペリーやキング・タビーをはじめとして裾野はさらに広がっていて誰を手本にしているのかは読みづらい。それでも驚きを与えてくれるが、出どころがなんとなくわかる音やメロディ、フレーズを恐いもの知らずでぶち込む心意気を感じてしまうとどうしても自然と顔がにやけてしまう。
前作『ミューティニー』から、驚くほどのハイペースでリリースされた今回のアルバムは『完全逆様な世界』と日本語タイトルがついている。今までウィットに富み、社会を笑い飛ばす歌詞でずいぶんと楽しませてもらったが、ここまで直球に世界を批判するタイトルをつけてくるとは思わなかった。そのアルバムの冠となった曲は、ニューウェーブに真正面から取り組み、ズート16に集った遊び人達の青春時代を思わせる。アルバム全体に広がるくすんだ大陸を放浪するジプシーの色、カリブ周辺の島国を思わせる原色の中で80'sの蛍光色は存在感を示し、じわじわと溶けては広がっていく。広がったそばから続くのは"テイク・ファイヴ"と、およそ喰いあわせの悪そうなものでもズート16のフィルターはまとめることができる。明らかにオリジナルではなくリコのヴァージョンを元にしていて、スカもジャズも完璧なリコ本人の前で、ダブから縦ノリのダンスビートへとめまぐるしく転換する遊び心たっぷりなアレンジで披露していたことにも自身のほどがうかがえる。螺旋状のルートを通る鮮やかな変わり身に吸い込まれてしまうそれは、2nd『ミューティニー』からシングルカットされた"ごめんねマイペース"のB面として7inchにきられていて、プロジェクト発足当時のイメージを完全に切り離し、2ndから続く新たな一面を継続して見せているという2つの意味を持っている。
プロレスファンにはたまらない響きの"キッドクランチ"では「アァァー!」といきなりの絶叫。タイトルとなったのは一瞬で体を入れ替え3カウントをとる固め技だが、この技を使う「いぶし銀」の異名を持つレスラー・木戸修の得意技は脇固め。最もスタンダードな、肩を極める関節技である。ぎりぎりと絞り上げれる画をイメージすれば「アァァー!」は至極当然、おかしくて苦しくてたまらない。これもまた血気盛んな男の中にある青春の記憶なのだろう。
シャンソンにラテン、クレズマーにロマ、そして外せないジャマイカの音など、ありとあらゆる音楽を吸収するリミックス感覚、DJ感覚が遺憾なく発揮された楽しめる名盤。トラックで先人を匂わす手法は「台詞ではなく映像で語っている」傑作映画にも似ていて、ちりばめられているヒントから影響を受けたアーティストを探ってみるのもおもしろい。ルーツとなった先人を探すのなら、いろいろ手を尽くす前にまずズート・サンライズ・サウンズに行けばいい。灯台下暗し。アルバムは、店に並んだマニアックな作品の縮図となっているのだ。
-- ツアースケジュール --
11/22 "レベル・ワルツ" in associated with ロック・トライブ @ ロック・バー 星空ジェット(愛媛県松山市)
11/23 ファイト・フォー・ライツ Vol.25 @ 新宿マーズ プレゼンテッド・バイ・ジャポニクス &カリビアン・ダンディ
12/15 チェリー・ボム祭り 2006 ファイナル @ リキッドルーム恵比寿
reviewed by taiki
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