幸せとは一体何なのか? 手の届かないスペシャルな出来事を幸せとするか……日常の何でもない出来事を幸せとするか。幸せについて述べられる時、ざっくりこの真逆に位置づけされた2種類の幸せに分類されてはいないだろうか?
先日リリースされたジ・エイリアンズの2ndシングルはその名も『ザ・ハッピー・ソング』……その直球なタイトルや、「ワァン、ツー、スリー、フォーゥ」というカウントダウンから始まり、「ファイフ(※)から抜け出せなくても毎日ハッピーなんだよ、毎朝の1杯の紅茶がハッピーなんだよ、キミもボクみたいになりたいかい?」というまさにそれってゴードン・アンダーソン、アナタの日常じゃないの? という歌詞なんかから想像することはたやすく、ジ・エイリアンズがこの曲で定義するところの幸せは後者である。
その日常の幸せを描く音とは……1stシングル『エリアノイド・スターモニカ』から一転、意図的にサンプリングという得意技をばっさり排除して、加山雄三も真っ青な澄み渡る青空の元、真正面から潮風を受けたような爽快なギターのリフ、最大のアナログ楽器である指笛や、軽快な手拍子にコーラスが加わった単純明快なロックンロール・チューンである。この曲がゴードンの地声に一番近く、ライヴでもほぼこのままの形で曲が再現されるのだけれど、さらに目に飛び込んでくる天才的に大人気ないゴードンの図は、この"ザ・ハッピー・ソング"が曲を作るために書かれた曲ではなく、自然発生してきたものだということをうかがわせてくれる。
B面として収録されている"Kemfu"は、"ハッピー・ソング"からまたさらに一転、湿度や室温が管理されつくした密室の機械音? もしやこれがエイリアンズの生息するスペース? と聴く側の想像力を掻き立てられる無機質な4分強の物語が繰り広げられる。そう、ジ・エイリアンズの音楽について語るには音楽だけでは不十分なのである。それはこういう曲から想像させられる映像世界だけではない。ザ・ベータ・バンドの頃から何から何まで自分達でやってしまうDIY精神の持ち主で、キレイな完成形の作品を作り出す、各分野のプロのクリエイターには絶対に作り出せない映像世界をもうひとつの自己表現の場として確立している彼らは、この曲でもビデオを制作している。数年前のライヴ映像や写真なんかでも見たことがあるヨレヨレで色あせたTシャツを着て、東ロンドンの路地を闊歩したり、どこかの屋上でまさにコンマ何秒単位に計算しつくして画面にピョコピョコ湧き出てくる冴えない3人の男や、カワイイお姉ちゃんを前にしてちょっと時代遅れなダンスをするカッコ悪さ際立つこの映像は、この超アナログ集団意外に誰がこの世界を作り出せるというのだろうか。
バンドは順調に動き出しつつあって、評判も上々という時期なのだけれど、それと同時に気になることがある。ザ・ベータ・バンド初期にスコットランドへ戻らざるを得なかったという過去があるゴードンのことだ。これからUKツアーを回り、順調にいけば来年早々には1stアルバムがリリースされる。USだけではなく世界を視野に入れて活動をする予定になっているようだ。"ハッピー・ソング"の歌詞にもある「ファイフ(※)」というキーワードはゴードンにとってどれくらいの比重を占めていて、そのバランスを崩しやしないかという部分である。何よりもジ・エイリアンズ自身がこれからも、日常のなんでもない出来事をハッピーだと感じている今の状況を保ることができることを願っている。
(※)ファイフ:ジ・エイリアンズのメンバー、ゴードン・アンダーソン、ジョン・マックリーン、ロビン・ジョーンズが生まれ育ったスコットランドの首都エディンバラから少し北に位置する小さな町
reviewed by kuniko
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