|
ズボンズが凄いことになってきている。ズボンズ名義としてはおよそ2年振りのアルバムがオーストラリアから届けられた。内容的には前作「NEW SANFRANCISCO」のリテイク数曲と新録を数曲という組み合わせではあるが、これまでにないズボンズの魅力が詰まったアルバムに仕上がっている。
ライブではセットリストを決めないなど、フリーキーなインプロビゼーションなプレイをこのところ志向してきたズボンズだったが、今年の1月に届けられたドンマツオのソロ作ではきっちりとした曲を聞かせてくれたのは実は意外だった。これまでにない内省的な内容と、普段とは違うミュージシャン達とのセッションは、何か柵を取り払ってプレイしているようで、ズボンズとは違った雰囲気の自由な空気を感じた。ズボンズでは乗せる立場にいたドンだったが、ソロでは上手く乗ったり、乗せられて非常に取っ付き易い作品に仕上がっていた。今作はその辺りをしっかりと一回りして戻ってきたという感じだ。もちろんパワーアップして。
もちろん、今作でもドンマツオは全開だ。シャウトと言ってしまいたくなるような歌声に、沸騰しまくっているギターリフ。ズボンズというバンドにおいてはやはりドンが大きな推進力になっていることは間違いのない事実だ。しかしである。冒頭を飾る「Dolf」の疾走感は一体なんだ。バンド全体が右へ左へハイテンションで転げ回っている。それでも、全く一糸も乱れが聞こえてこないのには舌を巻く。もちろん、それはラストを飾る表題曲の「WAY IN/WAY OUT」まで続くことになるのだ。このメンバーの一体感は、ドンがいてズボンズがあるという印象が強かったこれまでの作品にはない感じだ。実際以上に体感のBPMが早く聞こえるのはそのせいだろう。ドンとメンバーの乗せたり、乗ったり、乗せられたりのバランスが非常にいい塩梅だ。ズボンズは確実に新しいグルーブを手に入れたのだ。
そうは言っても仲良しバンドな音にならないのがこのバンド強み。バンドの緊張感もいつになくあがっている気がする。一瞬一瞬の音の爆発を極限にまで高め、感情を爆発させているのは、このバンドの基本。そういった、本能のままにうごめく部分を大いに残しながらもバンドとしての一体感を掴み取っていくズボンズ。音と音との戦いの果ての素晴しい果実。バンドサウンドの真髄を聞かせてもらったような気がする。
これだけのテンションの高い音のぶつかり合いを現場ではどうやって表現しているのか。これはもう生で体感しなきゃと思っている。
reviewed by 坂本唯
|
|
|