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ふむ、なんだかいきなり頼もしい音になっている、というのが第一印象のザ・フューチャーヘッズのニュー・アルバム、「ニュース・アンド・トリビューツ」。前作のセルフ・タイトル・アルバムでは、ロックン・ロールとモッヅのテイストが上手い具合に融合された世界観をもたらし、「おっ、おっ、おー」なるおもしろコーラスも交えながら個性的な楽曲を聴かせてくれた彼らだが、今作では、アプローチそのものに劇的な変化は無いまでも、ライブ経験で培った自信が音に反映されたのか、より確信的に、自分達の風味あるサウンドを活かした多彩な曲を揃えてきた。
例えば、2曲目の"フォールアウト"や、続く"スキップ・トゥ・ジ・エンド"に見られる、温かみある、ポップなメロディには、うん、フューチャー節だね、と思わせるものがあるし、"ニュース・アンド・トリビューツ"の展開などは、他で聴いたことの無いような、オリジナリティ溢れる脱力気味の流れが、溜めのささやかなギター・リフと共に妙に後を引く。けれども、"リターン・オヴ・ビサーカー"においては、暴走するギターと壊れたようなヴォーカルが、ほんの数分の中でまた一味違った"動"の色をも見せ、ラストの"フェイス"で、優しいアコースティック・ギターから途中で切り替わる歯切れ良いエレキ・ギターの音色、控え目ながらも健在な「おっ、おっ」コーラス、弾むベースと、とにかく曲層の豊かさが耳を引くのだ。
今回の新作が前作と決定的に異なる点は、何回、何十回と聴き込まなければアルバムにある深みが伝わってこないということ。良い意味でそう言うのだが、前作はまだ間口が広かった。言い換えれば、分かりやすさがあったのだが、この2枚目に収められた曲陣には、聴いてすぐさま耳にびびっと来るようなポップ性はあまり感じられない。その分、より、曲そのものを練り、表現力も滑らかにたおやかに伸張されているのが繰り返し聴くことで伝わってくる、晩成的魅力が前作以上に詰まっているのである。なんかちょっと見ない間に随分大人になった感のある、サンダーランドの青年達。定評あるライブ・パフォーマンスでこれら新曲がどう生きてくるか、楽しみだ。
reviewed by kaori
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