|
マグのトップ・ページで触れられていた、ウルフマザーのデビュー・アルバム、『ウルフマザー』。1曲目の"ダイメンション"のイントロからしてもう、「ややっ、なんだこの図太い音は」、と耳が、というより体の中心部が反応してしまった。3ピース編成の割にサウンド全体が厚みを帯びていて、こてこてロックの勢いがけたたましく鳴り響く。そして何よりボーカル、アンドリューの苛立ちと逞しさが同居した歌声が音域も広く、ロバート・プラントを彷彿とさせ、力強く、堂々としていて実に痛快。グルーヴィーなリズム隊もずんずん、どこどこ、とにかく底辺をうごめく様に暴れ回り、奇怪なビブラートが絡んだ尖ったギターの音色が挑むように響き渡る。"ウーマン"の、早くも年季の入った親爺ロッカーのようなふてぶてしき演奏力は地面を揺らさんばかりの爆音を放ち、"アップル・トゥリー"の弾けるグルーヴ感、"ジョーカー・アンド・ザ・シーフ"のギター展開などは、ハード・ロックの様式美にしびれる人にはたまらないほどの旋律である。グルーヴを軸に、高低音の妙味をがっちりと詰め込んだ楽曲構成は、ロックン・ロールの黄金律の理想を、現代という新鮮な感性を介し、見事に自分達の音として融合させている。
レッド・ツェッペリン、AC/DCなどの時代を彩った王道ロック・サウンドを系譜しながら、これでもか、くらえ、くらえと容赦なく、切れ間なく、巧みにみっちり重たい音を掻き鳴らし、その中でも楽曲の溜め引きが執拗に練られているのが窺えるしたたかな表現力。歴史的ロック・バンドの名曲に共通して存在する、ギター・リフが確立するその曲の独自性。つまり、ギターが"ジャ、ジャーン"と鳴った時点で、それが何の曲であるか、聴き手が瞬時に分かるという、ロックを愛する者であれば、誰もが心酔するであろうこの真実が、彼らのサウンドには既に感じられる。
以前TVで見た野外ライブはこちらの予想通り、かなりの興奮と見応え、聴き応えある迫力満点の内容であったので、夏の苗場で彼らを観賞予定の人は、オージー・ビーフ・パワー炸裂な暴れっぷりを、今から期待に鼻の穴を膨らませて待っていると良いでせう。
reviewed by kaori
|
|
|