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もう、のっけから単刀直入だが、ボーイ・キル・ボーイは純100%キャッチーなロック・バンドである。一聴して覚えやすく、しかもそれがその後耳にこびり付き、何度も頭の中をぐるぐる駆け巡るような中毒性を帯びた、してやったりのメロディ。時に食傷気味にさえなってしまうほど、キーボードの主張を全面に押し出した、サビとフレーズの組み立てがはっきりした、分かりやすく、入りやすくという表現が最も当てはまる曲の数々。それは、先行リリースされたシングルの"スージー"、"シヴィル・シン"、"バック・アゲイン"だけではなく、このデビュー・アルバム『シヴィリアン』に収められた全ての曲に通じる印象である。
かねてから、彼らの純粋なメロディ・メーカーとしてのセンスと、開き直った大衆向けポップ志向には注目しており、シングル曲が「むむっ」、と思わせる聴き捨てならない可能性を滲ませていたので、今回こうしてアルバムをフルで聴いてみて、結果こちらの期待通り、そのポップ・センスが色濃く出た楽曲陣に、まずは順風満帆な船出、といったところである。上記の曲も良いが、彼らの才能が、単に最大公約数的量産ポップ・ソングをもたらすにとどまっていないことが如実にわかる、乾いたメロディ・ラインと、洒脱なリズムが醒めたスタイリッシュさをもって響く"キラー"、"ショウダウン"。"オン・マイ・オウン"では、浮遊感漂うキーボードと、躍動するギターが駆け抜けるように爽快に奏でられる。このギターとキーボードが核になり、全編を彩る掴んでなんぼのメロディを先導していくのが、ボーイ・キル・ボーイの最大の特徴だ。ボーカル、クリスの色気と軽薄さが伴った声は、初期スエードのブレット・アンダーソンを思い起こさせるものがある。
バンドのヴィジュアル・イメージも、どことなくワルっぷりが感じられ、その不敵な笑みで婦女子の心もしっかりわし掴みであろう。キャッチーな曲と簡単に形容すれど、狙ってたやすく生まれるものではないし、意識した上でこれだけの曲を作る事ができるのであれば、あっぱれ、何も言う事はない。いいじゃないか、だってポップなんだから。
reviewed by kaori
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