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2006年夏のミステリージェッツのUKツアーでサポートを務め、彼らに負けじとその心から音楽を楽しんでいる様子がありありと伝わって来るパフォーマンスが印象的だった、米国はミシシッピ州出身の6人組、ザ・スピント・バンド。本国では既に昨年6月に発売済みの今作『ナイス・アンド・ナイスリー・ダン』。素朴な純ポップ・センスが光る、茶目っ気溢れる楽曲がユニークだ。
"ブラウン・ボックスィーズ"はその主旋律をおもちゃの笛でなぞらえた、ふざけたようでいて、知らず知らずの内に口ずさんでしまうような耳に残るメロディ。"オー・マンディ"、"トラスト・バーサス・ミストラスト"、"スパイ・バーサス・スパイ"、と立て続けに柔和で温かな響きを曲のそこかしこにちりばめ、駆け引き無しのメロディ直球勝負な曲構成に好感が持てる。目をつぶりながら、肩の力を抜いて聴くと、楽曲の良さがじわり、じわりと染み渡ってくる。懐かしさ漂う"ダイレクト・トゥ・ヘルメット"、無機質な低音ボーカルに反して躍動するギターが、"レイト"で生ぬるいばかりではないよ、とでも言いたげに曲調に変化をつけ、その流れを汲んだ"ソー・カインド・ステイシー"では、よりテンポを弾ませながら、最後はホヨヨーン、と間の抜けた効果音で聴き手の戸惑いを狙ったかに見える、邪気の無い裏切り。2分半という短い中で、こんながっしりした音も出せるのか、とその転調も含め、深い余韻を残すラストの"マウンテンズ"。
見た目の可愛さにすっかり気を許していたら、突然とんでもないいたずらを食わされ、「やられたっ」と思いながらも、どこか憎めない子供に出会った様な、そんな心持ちにさせる微笑ましき1枚。
reviewed by kaori
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