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現代的でクールな佇まいと、周到に練られた個性溢れるサウンドで高い人気を誇るストロークスが約2年のタームを経て3枚目のフル・アルバムを発表。うねるように鳴る主張の強いベースライン、メロディアスかつディテールに凝ったアクの強いギター、よりパワフルに、したたかに響くドラム、そして一層表現力を増したボーカル。各パート、そしてバンドとして新たなる飛躍的かつ、頼もしい成長を遂げた彼ら。
前作『ルーム・オン・ファイア』のイントロを思わせる"ユー・オンリー・リヴ・ワンス"から、骨太で急ピッチなベースに煽られ始まる"ジュース・ボックス"。先行シングルの今作はこれまでの彼らのタイトではあるが、軽く聴こえがちだったサウンドには見られなかった劇的な、ダークでヘヴィに煩悶する世界が見事に描かれ、音の凝縮感、テンションとあらゆる角度からも衝撃的な一曲である。その流れを受け継ぐ様に低音のヴォーカルがざらついた魅力を放つ"ハート・イン・ア・ケージ"、イントロでかき鳴らされるギター・リフの時点で、不動のストロークス節を予感させる"ヴィジョン・オヴ・ディヴィジョン"、折り返しの"アスク・ミー・エニシング"はバンド音を排除したジュリアンの歌と浮遊感漂うシンセサイザのみがかえって新鮮。彼のボーカリストとしての資質が活きた力みのない優しい一曲。ツイン・ギターの妙技を余す所なくちりばめた"フィア・オヴ・スリープ"、序盤は子守唄のようにゆっくりと、次第にテンポが早まるユニークな展開の"15ミニッツ"、小気味良いメロディー、ギター・ソロの美しさが光る"アイズ・オヴ・ザ・ワールド"。
比類無き己の"音"を持つバンドとしての意地と、革新への前向きな姿勢の共存とい強靭な武器ではもう恐いもの無し。年明け早々、強力な1枚の出現である。
reviewed by kaori
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