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ブルックリン発、スタイリッシュかつ切れ味鋭いメロディー・センスで疾風の如きデビューを果たしたウィー・アー・サイエンティスツ。アルバムから全曲シングル・カットできるのでは、と思えるほど各曲筋の通った、聴き応えある怪しいまでに完成度の高いファースト・アルバムである。
タイトなスネアが全体の流れを煽る"ノーバディ・ムーブ・ノーバディ・ゲット・ハート"、冒頭からサビまでのメリハリに心躍る"ディス・シーン・イズ・デッド"、息次ぐ間もないほど歌い込まれる主旋律に、エッジの効いたギターが重なる"インアクション"、野太いベースと、狂ったシンバルが混沌とする"コールバックス"、キャッチーなメロディと荒いギター・リフが融け合った"キャッシュ・カウ"、伸びやかなサビの高音に躍動感溢れる"イッツ・ア・ヒット"、アルバムの軸曲ともとれる、彼らの華やかなポップ・センスが光る"ザ・グレート・エスケープ"、溜めと引きが洒脱に計算された突出した1曲である。中途にスローな"テキストブック"を挟みながらも、ラストの"ホワッツ・ザ・ワールド"まで賞味40分、フット・ワークも軽く飄々と、3ピースというシンプルな編成を活かし、各パート切れよくバランス感覚優れた主張で、中身の濃い世界を構築している。
全体的に始めから一貫して勢い主導の音作りなので、興奮を駆り立て、ぬかりなくまとまったメロディアスな節々も耳に馴染みやすいが、反面、各曲が独立して出色が濃すぎ、デビュー・アルバムにして、もはやベスト盤とでも思わせるようなスキのなさが難点。全ては科学者たるその合理性ゆえんか。凹凸ある人間らしさ滲む音とは一線を画した、乾いた激情。可能性を秘めた新たなバンドの産声は確信犯的な怪しい笑みを帯びている。
reviewed by kaori
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