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爽やかさと感傷が折混ざった印象的な前作『フェイデッド・シーサイド・グラマー』から約2年。ディレイズはこの上なく極上なポップセンスを更に昇華させた素晴らしいアルバムを持ってシーンに再び帰って来た。
アップテンポなイントロから始まる"ユー・アンド・ミー"は基底にアー・ハーを彷彿とさせる心地よいメロディーが漂い、前作の"オン"に通ずる音色が奏でられ、アルバムの先行シングルとなった"ヴァレンタイン"に続くまで胸の高鳴りは止まない。キャッチーな展開に、これでもかと絡む流麗な多重コーラスと、グレッグの変幻自在なファルセットとハスキーなヴォーカルのコンビネーションは、繊細さと逞しさを余す所なくたゆたえ、一切の狙いを感じさせない自発的な響きにただただ圧倒される。
痛々しいほどに美しく、切ない"ディス・タウンズ・レリジョン"、荒く扇情的な彼らの新たな音楽的一面を担った"ギブン・タイム"、彼らの最大の魅力のひとつである多重コーラスが心地良い"ハイド・アウェイ"、 エッジの効いたギターロックと、アグレッシブなシンセが混在する力強い"リリアン"。ディレイズの音楽的な万能さを物語るナンバーである。疾走感溢れる、アップビートで清々しいまでにポップな"アウト・オブ・ノーウェア"では、彼らの多面的な表現力に極上のメロディー・センスを集約させた、全ての魅力が集約されたかのような良質な一曲だ。ラストの"ウェイスト・オブ・スペイス"ではこれまでの興奮を静かに、しなやかに畳み掛けるようにうっとりとした歌と音が舞い、全体の幕は閉じられる。
今作では彼らの音楽的方向性がよりポップでキャッチーになっただけではなく、そこにロックサウンドとしての骨太な主張と自我が加味され、全体的に奥行きの深まった、広い世界を構築することに成功した感がある。4曲目から6曲目までが、似たり寄ったりに聴こえてしまうのが残念だが。
結論として、『ユー・シー・カラーズ』は昔からのファンはもとより新規のファンも惹き付けるに足る会心の一作に仕上がったといえるだろう。21世紀の珠玉のポップスの宝が未来へのステップを、また一歩軽やかに踏み出した。
reviewed by kaori
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