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クリアに提示された音楽の精霊
前作『BLEACH』から2年半ぶり、通算4作目のアルバム。前作から今作までの間に、彼女たちは、数回のアメリカツアーを始めとして、多くのライヴをおこない、新曲を試していった。その結果がこのアルバム『右も左も支配する頭は今日も肉を食いヨダレを垂らす』である。
Bleachならではの爆音な曲を中心に、ダークな感じの曲が多いカンナ、ストレートに思いを吐露するサユリ、相変わらずぶっ飛んでいるミヤという3人の違いがより明確になって、さらにそれがぶつかり合い、化学反応を起こしている。今回は、ミキシングエンジニアにノラ・ジョーンズの初期作品のミキサーでもあるダニー・ワイアット、マスタリングエンジニアにコールドプレイのクリス・エイセンズを起用して、過去作品と比べると、びっくりするくらい音が良くなっている。「音質なんかより演奏と歌にどれだけ熱がこもっているかじゃないの?」という人がいるかも知れない。おれも、音質が悪くたって愛聴しているCDはいくらでもある。
だけども、今回のアルバムはそのような音作りによって、彼女たちの声がより生々しく聞こえるようになった。特に"ピーコックの法則"や"妖しの夢"でのカンナの声は非常にセクシーでかなりそそられるものがある。正直、カンナはヴォーカリストとしてこんなに成長するとは思わなかった。これは嬉しい驚き。さらには、ミヤの自由奔放な叫び声も、サユリの素直で伸びやかな声も、より耳に入りやすくなった。そして、もうひとつは、演奏がクリアに聞こえるため、ごまかしが利かないのは当たり前として、奔放だと思われた演奏ひとつひとつが緻密なのである。これも、普段は勢いで押していくライヴを見慣れている者としては嬉しい驚きで、Bleachの新たな面を見せてくれるのだ。
それにしても――Bleachの音楽に触れていると、彼女たちの音楽から覗かせるもの、それは無意識な部分の大きさというのか、彼女たちのルーツにあるものを、どうしても感じさせるのである。手元にある資料には「音楽の精霊」とあるし、そう言ってもいいのだろうけど、彼女たちの音楽がCDの中に記録されている以上のものが確実にある。それを感じさせる日本のバンドというのは、なかなかいない。そして、その精霊は、我々を癒し、怯えさせ、優しく包み込み、突き放し、励まし、悲しませる。翻弄させながらも、惹き付けて止まないものである。それがBleachを聴き続ける理由であり、外国人の手によってミックスされ、マスタリングされクリアに提示されたこのCDは、彼女たちのそんな精霊の力をより一層感じさせるのであった。
特典で付いているDVDは、アメリカでのライヴを3曲収録。クリアなCDとは一転、ライヴでのラフな勢いを味わえる。
Tour Schedule
5月14日(日) 甲府 KAZOO HALL
5月15日(月) 郡山 #9
5月16日(火) 八王子 HAVANA
5月17日(水) 下北沢 BASEMENT BAR
5月19日(金) 新宿Live House Marble
5月21日(日) 静岡 SANUSH
5月22日(月) 名古屋 アポロシアター
5月23日(火) 滋賀 U-STONE
5月24日(水) 大阪 十三ファンダンゴ
5月25日(木) 岡山 オルガホール
6月9日(ロックの日) 沖縄宜野湾 ヒューマンステージ
reviewed by nob
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